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アングル:「マスク外すと裸の気分」、米指針緩和に反応さまざま

[ワシントン 7日 ロイター] - 元教員のアニータ・グリックさん(70)は今週、首都ワシントンの国会議事堂周辺で友達の犬を散歩させるときに、ちょっとした解放感を味わった。米疾病対策センター(CDC)が新型コロナウイルスワクチンの接種完了者を対象に、屋外でのマスク着用を原則不要とする新たな行動指針を発表したおかげで、マスクを手首に掛けただけだったからだ。

 5月7日、元教員のアニータ・グリックさんは今週、首都ワシントンの国会議事堂周辺で友達の犬を散歩させるときに、ちょっとした解放感を味わった。写真は4日、マスクなしでニューヨークのタイムズスクエアを歩く女性(2021年 ロイター/Carlo Allegri)

それでもグリックさんは、他の人々と一緒にいる時にはエチケットとしてマスクを着け続けるつもりだ。「見ず知らずの人から『通りの反対側に避けるべきか。彼女はワクチンを打ったのだろうか。感染しているんじゃないか』などと思われたくない」と言う。

グリックさんは2月に接種を完了した。「マスクを着けるのは不快で、眼鏡は曇るし、何か食べただけで一日中その臭いがする」が、季節性アレルギー対策として将来もマスクの着用を続けるかもしれない。

ワクチン接種を完了した米国民の多くは今週、恐る恐るマスクを外し始めた。新型コロナのパンデミックを抑えるために1年余り続いた行動制限は大きな転換点を迎えた形だ。

米国ではマスク着用は感染防止の手段にとどまらず、政治的な見解や倫理観を表す象徴的な存在になっている。そのため科学的な行動の指針が変わってもマスク着用をやめることに抵抗を感じている人もいる。

首都ワシントンやその近隣に暮らす市民20人余りへの取材で、一部の人々がマスクを外すのをためらうさまざまな理由が明らかになった。そもそも外出時にマスクの着用義務を感じたことがない人々の言い分も見えてきた。

大学生のエマニュエル・ロングさん(19)とAJ・バーバーさん(19)は2人とも2回のワクチン接種を終えているが、今週リンカーン記念堂を訪れた際にマスクを着用していた。ロングさんは、人混みでなければ屋外でマスクは不要としたCDCの判断は早過ぎではないかと不安を感じている。新型コロナはまだ現実味のあるリスクで、特に免疫力の低い人にとっては危険性が高いからだ。

バーバーさんは「マスクを着けずに屋外に出ると裸でいるみたいに感じる」と言う。

CDCの指針見直しは、新型コロナワクチンに対する国民の信頼度を測る試金石となっている。米国ではこれまで1億4800万人以上がワクチン接種を受けたが、接種を完了した人々の間からは、数は少ないながらも接種後に感染するケースがあるためマスクなしでは不安だという声も上がっている。

バージニア州グレートフォールズで、マスクをそばに置いてコーヒーを飲んでいたアンドルー・ナスバウムさん(57)は「自分をスーパーマンだとは思っていない」と語る。ワクチン接種済みだが、最近友人の家を訪れた際に未接種の人々が集まりに参加しているのを知って不安になったという。「感染するのではないかと今でも心配だ。自分がまれなケースの1人になるかもしれない」と話した。

<根強い不信感>

首都ワシントンに住む弁護士のビビ・スミスさん(60)は、CDCが新型コロナの流行初期にマスクについての方針を180度転換したことで、CDCに対する信頼感がいくらか薄れてしまったという。CDCなど保健当局は当初、一般市民はマスクの着用は不要としていたが、その後方針を撤回。方針転換の背景に、医療従事者用マスクの不足があったとしたからだ。

スミスさんは先週、仲間たちと地域の共有庭に苗植えを行う際にマスクを着用した。全員がワクチン接種済みだったが、この地域に未接種の人が多くいることを知っているスミスさんは、危険を冒したくなかった。

「CDCの手引き変更に従って屋外でマスクをしない権利は尊重する。でもそんな人が来るのを見たら、私は通りの反対側に渡るわよ」

屋外でのマスク着用が一般的ではない郊外や地方の一部では、CDCの指針変更はうつろに響く。マスク着用の習慣がまったく広がらなかった保守的な州や郡も同じだ。

こうした地域の市民の多くは、マスク着用の義務化を個人の自由の侵害と見なし、トランプ前大統領がこうした考えを煽った。トランプ氏は、マスクの着用は自主判断に任されると述べ、保健機関の提言を無視した。

グレートフォールズに住むエリン・ラバトさん(55)はCDCが指針を変更しても生活は変わらなかった。ワクチンは接種していないが、屋外でマスクをすることはほとんどない。もっとリベラルな大都市ではマスク着用を迫る「同調圧力」があると聞いているが、自分たちの地域では感じたことはないという。

「CDCが(自分たちの考え方に)追いつくのを見てうれしい。みんなが元の生活に戻れることを願っている」と話した。

一方、都市部に住むエコノミストのトビアス・カランケさん(35)は別の意味でほっとしている。これまでは保守派の反マスク運動を支持していると見られないよう気を使っていたが、今週は堂々とマスクを着けずに公園でテニスをした。「トランプ支持者と思われたくない。でも今は『CDCの手引きを守っているだけ』と言えるからね」と話した。

(Gabriella Borter記者)

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