for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

アングル:コロナ最前線の医師が見た「五輪バブル」の内と外

[東京 5日 ロイター] - 新型コロナウイルス禍の最前線に立ってきた横堀将司医師は今、救急医として東京五輪の会場に派遣され、不思議なほど穏やかな日々を送っている。今週は重量挙げの会場を担当、最終日の4日までに大けがした人はなく、コロナの陽性者も出なかった。

東京五輪はほぼすべての競技が無観客となり、選手を始めとした大会関係者には行動ルールが定められている。47歳の横堀さんが勤務する日本医科大学付属病院の高度救命救急センターの状況とは別世界だ。そこは今、医療崩壊を招きつつあるコロナの感染第5波と戦っている。

「今、2つの異なる世界にいる」と、横堀さんは言う。「病院のような現実の世界に戻れば、たくさんのコロナ患者の対応に当たる」。横堀さんが派遣された重量挙げの会場、東京国際フォーラムは人が少なく静かだ。「天国と地獄のよう」と、横堀さんは話す。

横堀さんが行き来する東京五輪の「バブル」の内と外は対照的だ。選手村のアスリートや関係者はワクチンの接種率が8割を超える。PCR検査が義務付けられ、行動も制限されている。一方、東京都など首都圏の接種率は低いまま。検査数は十分ではなく、行動制限も厳格とは言えない。

日本医科大学付属病院は救急医療に定評があり、五輪の支援機関に選ばれた。女子テニスの大坂なおみ選手のファンだという横堀さんは、ボランティアとして参加することを引き受けた。

横堀さんは会場の医療ステーションを巡回し、看護師に指示してドーピング検査の採血をすることもある。観客がいない分、会場の業務は軽減されていると、ここで働くボランティアは話す。

五輪の仕事をしている最中も、横堀さんのもとには病院から電話がかかってくることがある。コロナの重症患者に人工呼吸器を使うべきかどうかなど、横堀さんの助言を仰ぐためだ。

スライドショー ( 4枚の画像 )

五輪の仕事が休みの8月1日、横堀さんは病院の救急救命センターに戻った。重症病床はあと1つしか空きがないとロイターの記者に話した直後、新たに患者が発生し、10のベッドすべてが埋まった。

横堀さんが懸念するのは、若い世代の感染者が増加していることだ。治るまでに時間がかかり、ベッドがなかなか空かないという。

「感染拡大がいつピークアウトするのかまだ分からない。それだけに心配だ」と横堀さんは語り、救急救命センター内にある60床を監視するモニター映像に目を落とした。

8月8日に五輪が閉幕しても、横堀さんはパラリンピックが終わるまで大会の支援を続けようと考えている。しかし、病院の状況が悪化すればすぐ救急救命センターに戻るつもりだ。

「大会期間中に感染のピークを迎えたくはない」と、横堀さんは言う。「だが、そうなったら勤務のシフトを変えるしかない。こっちにもっと多くの労力を割かざるをえない」

(Reporting by Ju-min Park; Editing by David Dolan and Jane Wardell、日本語記事作成:久保信博 編集:山口香子)

*一部字句を修正しました。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up