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アングル:来たるべき第3波、「最悪のシナリオ」に備えるインド

[ニューデリー 7日 ロイター] - 今年4―5月、インドで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による患者・死者が急増する中で、首都ニューデリーの複数の病院では吸入用酸素が払底し、市内の多くの患者が呼吸困難に苦しんだ。有力病院であるサー・ガンガ・ラム記念病院も例外ではない。

今年4―5月、インドで新型コロナによる患者・死者が急増する中で、首都ニューデリーの複数の病院では吸入用酸素が払底し、市内の多くの患者が呼吸困難に苦しんだ。有力病院であるサー・ガンガ・ラム記念病院も例外ではない。写真は同病院で3日撮影(2021年 ロイター/Anushree Fadnavis)

3日、同病院をロイターが取材に訪れたとき、COVID-19患者の最後の1人が回復して退院するところだった。医療専門家によれば、この劇的な状況改善は、自然感染とワクチン接種によって免疫水準が向上したことが原因であるという。

とはいえ各病院は、第2波が続く間、火葬の煙が絶えることなく、聖なるガンジス川のほとりに多くの遺体が放置された苦い経験を教訓として活かそうとしている。祭事の続く9―11月を軸に、インドでは再び感染が拡大する可能性が懸念されているからだ。

国内の医療施設では病床が追加され、病院は十分な吸入用酸素の供給を確保しようと努めている。

ガンガ・ラム病院も吸入用酸素の備蓄能力を50%拡大し、酸素を新型コロナ患者用の集中治療室(ICU)に直接供給する長さ1キロに及ぶパイプラインを敷設した。酸素の流量を高く維持する装置も導入している。

さらに、病院敷地内で酸素を生成するプラントも発注した。ただし主な製造拠点は欧州で、世界的に需要が高まっていることから、納品まで数カ月を要する可能性がある。

ガンガ・ラム病院のサテンドラ・カトック医長は、病院施設の内部監査を進める同僚を指揮する合間に、「感染力が強く免疫を回避する変異株が出現する可能性を考え、病院としては最悪の状況への備えを続けている」と話してくれた。

しかし、私立病院として多くの患者を抱えるガンガ・ラム病院には、病床をさらに追加する余裕はないという。インドにおける第2波の最中、ガンガ・ラム病院では収容能力を50%近く拡大し約600床とした。だが、この危機の中で陣頭指揮に当たったバルン・プラカシュ医師によれば、それでも1日約500人の患者を入院待ちのリストに追加しなければならなかったという。

全国レベルでは、インドではここ数カ月でさらに病床数が拡大しており、酸素輸送車も100台以上輸入して、合計約1250台に増やしている。リンデなどの企業は、国内の酸素生産量を50%引き上げ、日量1万5000トンとする計画を進めている。

リンデはロイターの取材に対し、冷却した酸素を貯蔵する極低温コンテナを自社の海外事業部門から約80台国内に移動させたが、そのうち60台は、再度の需要増大に備えて確保してあるとした。

リンデの南アジア事業部を率いるモロイ・バネルジー氏は「第2波の間は、流通インフラとロジスティクスがパンクしてしまった」と述べた。

一方、連邦政府は病院内での酸素生成プラント建設を1600件近く承認している。ただし輸入に時間を要するため、先月初めの段階で設置が完了しているのは300件に満たない。

<高い抗体価>

一部の専門家から、ワクチン未接種の子どもたちが新たな変異株に対して脆弱(ぜいじゃく)になりかねないとの警告が上がる中、ほぼすべての州が新型コロナ専用の小児科病棟を準備しつつある。マディヤ・プラデシュ州などではレムデシビルなどの抗ウイルス薬の備蓄も増やしている。

もっとも、政府の調査ではインド国民の実に3分の2はすでに自然感染を通じてCOVID-19に対する抗体を獲得していると推定され、成人の57%は少なくとも1回のワクチン接種を受けている。そのため多くの医療専門家は、新たな感染拡大が生じるとしても、その被害は第2波に比べて大幅に軽減されるだろうと考えている。

「多くの人がすでに感染したか、ワクチン接種を受けているので、感染する可能性の高い人は減っているだろう」と語るのは、インド公衆衛生財団会長を務める疫学者・心臓専門医のK・スリナス・レディ氏。

「再感染やブレークスルー感染が生じるとしても、症状は軽く、自宅療養で対応できる可能性が高い。第2波のときに顕著になった医療サービス提供における深刻なギャップが再現される可能性は低い」

ケララ州ではすでにそうした兆候が見られる。インド南部に位置する同州は、現在国内で最も多くの感染者を出しており、その中には、ワクチン接種が完了した、あるいは少なくとも1回は接種を受けた住民も多い。だが、同州の死亡率は国内平均よりもかなり低くなっている。

インドのCOVID-19感染者数は3310万人で、米国に次いで世界で2番目に多く、死者は44万1042人となっている。ワクチン接種回数は6億9840万回で、成人人口9億4400万人のうち、57%が少なくとも1回の接種を受け、17%が2回の接種を完了している。

インド保健省は、今年中には国内の成人人口全体で免疫を獲得したいとしている。想定される第3波への対応に関して同省にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

疫学者で公衆衛生の専門家であるチャンドラカント・ラハリヤ氏は、データとトレンドに勇気づけられていると語った。

「過去に感染歴があれば、ワクチン接種が1回だけでも、感染歴のない人や2回の接種を受けた人に比べてはるかに抗体価が高くなる場合があるというエビデンスが得られつつある。これはインドにとっては心強い」

(Krishna N. Das記者、翻訳:エァクレーレン)

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