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コラム

コラム:オミクロン株がノックするスタグフレーションの扉

[東京 3日 ロイター] - 新型コロナウイルスのオミクロン株が急速な広がりをみせ、回復基調だった世界経済の新たな脅威になりつつある。デルタ株と比較すれば、強い感染力と弱い毒性が特徴だ。感染によって供給サイドが打撃を受け、物価が上がりやすくなる一方、需要への下押し圧力はデルタ株より小さくなる可能性もある。

12月3日、 新型コロナウイルスのオミクロン株が急速な広がりをみせ、回復基調だった世界経済の新たな脅威になりつつある。都内で1日撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

その結果、発生するのは世界的なインフレ傾向の長期化であり、それに対応して米連邦準備理事会(FRB)が始める資産購入の削減(テーパリング)などの金融引き締めだろう。物価が上がって景気が悪くなるスタグフレーションのドアが、2022年前半に開き始めるのではないか。日本にもその波が押し寄るかもしれない。

<33カ国・地域に広がったオミクロン株>

松野博一官房長官の3日午前の会見によると、日本政府が把握している限り、オミクロン株は世界33カ国・地域で感染が確認されている。感染症の専門家は、現在の世界で支配的な変異株であるデルタ株を押しのけ、オミクロン株がそこに位置する可能性が高いとみている。

最初にオミクロン株が確認された南アフリカでの研究では、デルタ株と比較すると感染速度が速く、免疫をすり抜ける能力が高い一方、重症者が少ない特徴があるという傾向が分かってきた。細胞から出ているスパイクと呼ばれる突起の数が少ないとも言われ、それが毒性に関係しているとの見方もあるようだ。

<懸念される供給制約の再来>

ここから導き出される近い将来の姿は、感染力の強さによる感染者数の急増だ。たとえ症状が軽くても、感染が分かれば日本だけでなく、各国政府は自宅や施設などでの隔離を患者に求め、一定期間は工場などの生産現場、オフィスへの出勤はできなくなる。経済活動に参加できる人が減少すれば、経済の供給サイドに大きな影響が出るだろう。

足元で生産量が回復しつつある半導体の生産に再び下押し圧力がかかるだけなく、その他の幅広い業種で生産が低下しかねない。

イエレン米財務長官は2日、オミクロン株の感染拡大による需要減退のシナリオに触れつつも、供給網(サプライチェーン)の制約問題を悪化させ、インフレを加速させる可能性に言及し「不確実性は高いが、重大な問題を引き起こす可能性がある」との見方を示した。

また、重症者が少ないという展開になれば、旅行や外食などの対面型サービスは大きな打撃を受けるものの、モノの購入はオンラインの利用急増で盛り上がることも考えられる。その先にあるのは、供給不足による値上がり商品の急増と、自宅で隔離される人々の増加による労働力不足と賃上げ圧力の高まりだろう。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は 米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューに対し、オミクロン株の出現で現在不足しているモノやサービスに対する需要が継続すると指摘。高い需要が見られている部門では、インフレ圧力が増大する恐れがあるとした。

<FRBの引き締めと景気下押しリスク>

そこで問題になるのが、FRBのスタンスだ。パウエル議長は11月30日の米上院銀行委員会における証言で、経済が堅調でインフレ高進が来年半ばまで持続すると予想される中、次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で大規模な債券買い入れプログラムの縮小加速を検討すべきと述べた。

米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は2日、2022年第1・四半期に量的緩和の縮小(テーパリング)を終了することが適切になるという認識を表明。来年もインフレ上昇が続き、4%近辺で推移するようであれば、利上げ時期を前倒しし、来年末までに少なくとも2回の利上げを実施することが正当化される可能性があるとも指摘した。

もし、この路線をFRBが正式に採用すれば、米経済だけでなく世界の景気は強い下押し圧力を受け、成長率は鈍化し、株価は大幅な下方修正を余儀なくされるだろう。

実際、2日のNY市場で30年米国債利回りは1.7499%と1.75%を割り込み、米金利カーブのフラットが鮮明になった。これはマーケットが米経済の先行きに「スタグフレーションの臭い」をかぎ取った重要なシグナルであると指摘したい。

<日本でも物価高と不景気か>

この影響は、日本にも押し寄せるだろう。原材料価格の上昇を経営努力という名の賃金抑え込みで乗り切ってきた日本企業も、原油高・円安・政府の3%賃上げ要請という3つの力に押し切られ、年明け以降、値上げに踏み切るケースが続出すると予想する。

来年4月から携帯電話引き下げの前年比効果がはく落するので、消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)の前年比がいきなり、1%台に乗せて2%方向にシフトする可能性も出てくる。

春闘で企業が政府の要請を受け入れ、賃上げに応じればよいが、オミクロン株による打撃を理由に賃上げしない企業が続出する可能性もあるだろう。その時は日本でも「物価高での不景気」というスタグフレーションの色彩が濃い風景になっていると予想する。

この時に選択できる政府・日銀の政策メニューはかなり限定されているだろう。

●背景となるニュース

・〔ロイターネクスト〕オミクロン株、世界経済に重大な脅威もたらす可能性=米財務長官

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