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コラム

コラム:中国、中央政府の財政出動急務 「出し惜しみ」は危険

[香港 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 何かあっても必ず「出し惜しみ」をするのは、非常に代償の大きな習慣と言える。中国経済が悪化を続けているというのに、政府はそれに歯止めをかけるために幾つかの政策的なブレーキを解除するのをためらっている。15日には、特に企業借り入れや若者の失業率など一連の指標が失望を誘う内容だったことを受け、人民銀行(中央銀行)が2つの政策金利引き下げに動いた。これは効果がないだろうが、政府はなお財政出動に消極的だ。

 8月15日、何かあっても必ず「出し惜しみ」をするのは、非常に代償の大きな習慣と言える。写真は7月、北京の集合住宅建設現場で撮影(2022年 ロイター/Thomas Peter)

習近平政権を悩ませている経済危機は主として低調な需要に起因している。新型コロナウイルスの集団感染に対応して各地でロックダウン(都市封鎖)を実施した結果、消費者と消費者にモノやサービスを売る企業の活動が萎縮。小売売上高や民間投資が圧迫される事態になった。不動産価格の下落も、家計の含み資産を損ないつつある。

中国では家計、企業の双方が多額の債務を背負っており、多くは消費や投資よりも恐らく今は借金返済に奔走している。だから利下げの効果は弱まるだろう。名目上の流動性は潤沢であっても、7月の企業向け人民元建て新規融資は前月比87%も減ってわずか2880億元(420億ドル)にとどまった。誰もが明日はもっと状況が悪くなると予想している中で、もはやどれだけ多く借りられるか、あるいは借金のコストに意味はない。

人民銀は依然として、「洪水のような刺激策」を発動するのを渋っている。政策担当者に言わせればそれは資産バブルと不良債権問題の元凶であり、一部の見積もりでは国内不良債権額は1兆5000億ドル超に達する。その点では実に公正な判断なのだが、現時点で政府が積極的に需要を下支えしないと、ほかにそれができる経済主体は存在しない。

中国では通常、中央政府が景気刺激策を打ち出しても、実際の政策措置の大部分は地方政府と政策銀行、国有企業が実行するので、中央政府のバランスシートはきれいなままだ。中央政府の債務の対国内総生産(GDP)比が約20%で推移している半面、非金融セクター向け与信の対GDP比は300%近くまで切り上がっている。しかし今や多くの地方政府や国有企業は既に借金まみれであるばかりか、収入も減ってきているため、中央政府の景気刺激策代行者としては信頼が置けなくなった。

中央政府が景気刺激策の実行を「外注」すべきと考えている理由は幾つかある。シーフェアラーのニコラス・ボースト氏は、頻繁に必要となる国有企業救済という事態に備えてバランスシートをできるだけ健全に保っているのだと指摘する。

とはいえ現時点で、中国共産党は新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年よりも深刻な信認の危機に直面しながら、それでも中央政府の財政赤字をより小幅にすることを目指し続けている。これでは1990年代の日本の失敗を繰り返しかねない。当時、日本経済が奈落の底に転落したにもかかわらず、政府は保守的な財政運営に固執した挙げ句、数十年にわたる停滞を招いてしまった。万が一のために財政資金を温存するのは素晴らしいが、その万が一の時は既にやってきたのだ。

●背景となるニュース

*中国人民銀行(中央銀行)が発表した7月の人民元建て新規融資は6790億元(1010億ドル)と、6月の4分の1弱に急減した。

*人民銀は15日、1年物中期貸出制度(MLF)の金利と7日物リバースレポ金利を引き下げた。これを受け人民元は対ドルで下落した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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