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アングル:香港から高級ブランド店流出、中国人客狙い本土にシフト

[香港 7日 ロイター] - 世界有数の高級品ショッピング拠点である香港からブランド店が引き揚げ、中国本土に新店舗を開く動きが強まっている。コロナ禍前の2019年には5600万人が訪れ、高級ブランド店がひしめき合っていた香港だが、今ではその約半分が空室だ。

 世界有数の高級品ショッピング拠点である香港からブランド店が引き揚げ、中国本土に新店舗を開く動きが強まっている。香港で2月撮影(2023年 ロイター/Lam Yik)

不動産会社カシュマン・アンド・ウェークフィールドによると、ショッピング街の尖沙咀(チムサーチョイ)では賃料がコロナ禍前から41%下落。昨年は、世界で最も賃料の高いショッピング街の地位をニューヨークの5番街に奪われた。

世界的不動産会社サビルズによると、尖沙咀で最も有名なショッピングストリート、広東道の空室率は53%に達している。

「ほとんどの高級店は、香港がピーク時の2014年のような目もくらむ活況を取り戻すとは考えていない」とサビルズ(香港)の調査・コンサルタンシー担当シニアディレクターのサイモン・スミス氏は語る。

「主だったショッピング街を歩いても、高級ブティックの外に行列は見られず、あったとしても非常に短い」という。

ここ3年間で、ティファニーやヴァレンティノ、バーバリーといった高級ブランド店が引き揚げた尖沙咀や中環(セントラル)、銅鑼湾(コーズウェイベイ)の物件には、医薬品店やアディダスなどのスポーツ用品店が入居した。

店舗の閉鎖が始まったのは、民主化運動とその弾圧によって売り上げが急減した後だった。その後、新型コロナウイルスの感染拡大によって、状況はさらに悪化した。

この間、香港全体の小売売上高は2018年水準から30%減少。香港の高級ブランド市場をけん引してきた中国本土からの来訪者が、渡航制限により急減したことが主因だった。

中国が「ゼロコロナ」政策を解除して旅行が再開されたため、今年1月には本土からの旅行客が前月比で3倍に増えたとはいえ、なお2019年水準の10%程度に過ぎない。

モルガン・スタンレーは、今年の香港への来訪者が18年水準の70%にとどまると予想。小売売上高は前年比で15%増えるが、コロナ禍前の80%程度だと推計している。

<増える選択肢>

コロナ禍の中で、多くの高級ブランド店は中国本土で事業を広げ、旅行ができない消費者でも訪れられるよう遠隔地にも店舗を開いた。中国当局が免税地域を増やしたため、リゾート地の海南島やマカオなども香港に代わる旅行先として人気が高まった。

今年1月のマカオ来訪者数は前月比で3倍以上に増え、2019年1月水準の40%に達した。政府によると、コロナ禍中でも旅行者が増えていた海南島は、1月8日―2月15日の来訪者数が前年同期比11%増加した。

フランスの化粧品ブランド、ロレアルのニコラス・ヒエロニムス最高経営責任者(CEO)は、ロイターの取材に対し「(香港が)かつての水準を取り戻すことはないだろう。中国人が行く唯一の免税地が香港だった10年前には戻らない」と断言。「今ではずっと選択肢が増えた」と語った。

コンサルタント会社、ベイン・アンド・カンパニーの最新データを見ると、海南島の免税店モールでは2021年に売上高が84%も増えている。本土の高級品売上高の平均伸び率36%を大きく上回るペースだ。

こうした動きを受け、中国本土の高級品売上高は21年に4710億元(688億ドル)と、19年水準から倍増。香港の小売売上高(統計局データ)がピークを付けた2013年の630億ドルを上回った。

香港と本土の対照的な動きを踏まえ、エルメス、グッチ、サンローランといった大手高級ブランドが過去数年間で本土各地に店舗を開いた。

ただ、世界経済と旅行が回復すれば、香港の長期的な見通しは明るいとみる人々もいる。

投資顧問会社サンフォード・C・バーンスタインの高級品担当マネジングディレクター、ルカ・ソルカ氏は「マカオも海南島も免税地だ。だが、単一ブランドの商品だけを売る海南島の店舗では、香港のような幅や深みは味わえない」と指摘。「香港は中国の消費者にとって、非常に魅力的な場所であり続けている」と話した。

(Farah Master記者、 Sophie Yu記者、 Mimosa Spencer記者)

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