[シドニー/ニューヨーク 13日 ロイター] - 米規制当局は破綻したシリコンバレー銀行(SVB)の預金を全額保証することで金融危機を食い止めたかもしれないが、一部の専門家はモラルハザードを助長すると警告している。
著名投資家ビル・アックマン氏は、当局が介入していなければ1930年代のような銀行取り付け騒ぎが13日朝から発生し、数百万人に莫大な経済的損害と苦難をもたらしていたとツイッターに投稿した。
「当局による介入にもかかわらず、これからも銀行破綻は起きるだろう。しかし政府がどのように対応するかについて、明確な道筋が得られた」と評価した。
しかし預金者が損失を被らないよう保証したことで再びモラルハザードの問題が浮上した。
ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、ニコラス・ベロン氏は「これは救済であり、制度の設計と動機付けの大幅な変更だ。銀行サービスを使う全ての人にコストが転嫁されることになる」と指摘した。
その上で「もし銀行預金が全額保証されるなら、なぜ銀行が必要なのか」と疑問を呈した。
12日にはニューヨーク州金融サービス局がニューヨークを拠点とするシグネチャー・バンクを閉鎖した。米財務省と銀行規制当局は共同声明を発表し、同行の全ての預金者が保護され「いかなる損失も納税者が負担することはない」とした。
ラボバンクの銀行ストラテジストは「米連邦準備理事会(FRB)が資産や金利の痛みに直面している人を支援するのなら、事実上金融環境の大幅な緩和とモラルハザードを許していることになる」と顧客向けメモに記した。
<淘汰を許さず>
連邦預金保険公社(FDIC)は銀行の預金を25万ドルまでしか保証しないため、SVBが先週破綻した際には顧客の中小企業が従業員に給与を支払うことができなくなるとの懸念が出ていた。
規制当局は今回そうした懸念を払拭したが、それにより「自由な市場による解決には消極的という姿勢を示すための新たな一歩」を踏み出した(独立系金融トレーダー、ケビン・ミューア氏)。
一方インターアクティブ・ブローカーズ(コネチカット州)のチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は当局の対応について「短期的にはストレス解消になるのは確かで、モラルハザードや規制の甘さについては後で心配すればいい」と語った。
(Scott Murdoch記者、Carolina Mandl記者)
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」