for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:ISとアルカイダ、高まる「核の脅威」

[8日 ロイター] - 気が滅入るようなニュースばかりだと愚痴をこぼす人がいるのはもっともだ。しかも事態が急激に悪化する可能性がある。

 4月8日、気が滅入るようなニュースばかりだと愚痴をこぼす人がいるのはもっともだ。しかも事態が急激に悪化する可能性がある。写真は、放射性物質の入ったコンテナ。独ザールブリュッケン付近で2011年11月撮影(2016年 ロイター/Alex Domanski)

中国、ロシア、エジプト、トルコがさらに一段と権威主義的になっている一方、欧州連合(EU)は、EU擁護派の一人である米著名投資家ジョージ・ソロス氏によれば、「崩壊寸前」である。

地球温暖化も悪化の一途をたどっている。また、世界成長の原動力となるはずだったBRICS(ブラジル、ロシア、インド、 中国、南アフリカ) 諸国は総じて、経済低迷と政治的窮地に苦しんでいる(インドはかろうじて例外と言えなくもないが)。インドのモディ首相と中国の習近平国家主席(親族ではないが)を除くどの場合も、指導者は汚職で追及されている。

米国では、雇用と国内総生産(GDP)の両方が伸びているものの、政治的分断による憎しみに満ち、一部の有権者が政治原則として偏見を支持したいと思うこと自体が危機だといえるし、次期大統領にとってもそうなるだろう。

また、「パナマ文書」の流出により、金持ちが金持ちであり続け、さらに裕福でありたいという決意が白日の下にさらされた。

だが、さらに沈鬱な気分にさせるようなニュースもある。

今月の核安全保障サミットで、オバマ米大統領は、世界各国の指導者が、「テログループが核兵器を入手し、使用する危険」に対処する必要性を喚起した。世界中の大半の国々が、核物質の防護あるいは除去に努めてきた米国の後に続いたと、スピーチのなかで成果を大いに強調した。

しかし、その後に続いた発言が重要だ。オバマ大統領は、国際武装組織アルカイダと過激派組織「イスラム国」(IS)が核兵器を積極的に手に入れようとしているとし、「このような狂人たちが核爆弾や核物質を手にしたら、罪のない人たちの大量殺人に走ることは間違いない」と語った。

これは現実に起こり得ることのように思える。アルカイダもISもその意思を示しているし、すでに化学兵器を使用しているISのメンバーは、ベルギーの核施設の管理者を映した監視カメラ映像を入手しており、放射性物質をまき散らすいわゆる「汚い爆弾(ダーティーボム)」を開発している可能性があると当局者はみている。

クラッパー米国家情報長官は先月、上院の委員会で「大量破壊兵器の脅威は本物だ。生物・化学の物質や技術は、ほとんどの場合、民間・軍事の両方に利用可能で、それらの科学的専門知識をもった人同様、グローバル経済のなかを容易に移動する」と発言した。

一方、テロリズムを研究するジョージタウン大学のブルース・ホフマン教授も、ISは(預言者ムハンマドの代理人を頂点とする)カリフ国家が他の世界を最終的に征服する決定的勝利の最終段階に向かっていると、先月に記している。そのためには、核兵器が必要だろう。

ホフマン教授はまた、ISとアルカイダの2グループが世界支配に最も貪欲であり、それぞれの指導者が敵対しているにもかかわらず、統合する可能性があるとみている。そのような可能性は「(米国と)同盟国にとって前代未聞の大惨事になる」と、ある匿名の米高官が語った話として同教授は挙げている。

では、もう少しだけ明るい話題を。ロシアは先の核サミットに参加しなかった。ロシア政府は昨年11月、米国が「この分野において主要かつ『特権的』な役割」を担おうとしているとして不参加を表明した。

オバマ大統領は記者団に対し、ロシアのプーチン大統領が「軍事力重視」のビジョンを追求しているせいで、たとえロシアが核サミットに参加したとしても、同サミットが掲げる目標においてほとんど進展を示せなかったと語った。

米国とロシアの2国で、世界の核弾頭約1万5000発の95%を保有しているとされる。米国はその保有量をわずかながら減らしているが、ロシアはそうではない。オバマ氏は7年前、大統領就任後まもなくして行ったプラハ演説で、核のない世界を訴えたが、レーガン元大統領も核廃絶を呼びかけていた。

対照的に、プーチン大統領は、ISやトルコ、あるいはロシアのクリミア併合に対する西側の抗議への対応として、核兵器使用をちらつかせた。2014年夏には、青年団に対し、「ロシアは世界有数の核保有国であることを改めて強調したい。口先だけではない。これが現実だ。さらに言えば、われわれは核抑止力を強化し、軍事力を開発している」と、事実上の脅迫ともとれる発言を大統領は行っている。

一方の米国も、ロシア同様、自国の核戦力を絶えず近代化し、向上させている。だがどうにかして、両国の間に広がる溝を埋めなければ、われわれは史上最大の問題に直面することになる。つまりそれは、世界の大半を消滅させることが可能な能力の拡散だ。

単に「気が滅入る」だけのニュースではない。むしろその複雑さを理解し、より深く関与するための刺激剤であるべきだ。理解が深まれば、妥協や解決策を求める政治家や当局者などを支援する必要性も生まれる。

20世紀が米国の世紀であったなら、21世紀は世界の世紀である。そうした世界においては、複数の脅威が存在するという事実が、相互の対応を促す。それなしでは、悪いニュースから身を隠すための保護シェルターは、年内にさらに崩壊することになるだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up