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FOMC利上げ転換:識者はこうみる

[16日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は15─16日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ、0.25─0.50%とした。利上げは2018年12月以来3年3カ月ぶり。

市場関係者の見方は以下の通り。

●株高・債券高につながり、円債にもポジティブ

<野村証券 チーフ金利ストラテジスト 中島武信氏>

タカ派的なスタンスが目立つ一方で景気への配慮も同時に見られた。ドットチャートは2022・23年に関しては市場予想と比べても高め、23・24年は長期的な政策金利水準よりも高い値が示され、断固としてインフレを抑制するという強い姿勢を示した一方で、長期的な水準は前回から下方修正されたサプライズがあり、インフレが落ち着いた後は景気に配慮する姿勢を示したと言える。

これを受けて米金利は名目で4bpほど上昇したが、中身を見ると期待インフレ率が5bp低下、引き締め部分を反映して実質金利は9bp上昇だが、このうち期待インフレ率が低下したことが非常にポジティブ。FRB(米連邦準備理事会)の引き締めがインフレの沈静化につながる、FRBがビハインド・ザ・カーブになっていないことを反映しての期待インフレ率低下と考えられるからだ。長期的政策金利水準が引き下げられた中、恐らく米10年金利の上昇余地も限られるとみる。

年初からの株安・債券安は、市場の不確実性が高まって株式・債券ともにボラティリティーが大幅上昇したのを受けて投資家のリスク許容度が低下し、株・債券ともにポジションを大きく落としたことが背景要因となった。今回FOMCという大イベントを通過したことも不確実性の低下に寄与するほか、期待インフレ率の低下もFRBが今後さらにタカ派化するとの懸念を一部後退させ、市場の不確実性の低下につながる。このため、グローバルに見て株高・債券高になりやすいと考える。

今回のFOMCの結果は、JGB(日本国債)市場にとってもポジティブに働く。日本についてはインフレ率も今後上がる可能性が高いとはいえ海外と比べれば非常にマイルドで、ウクライナ情勢の緊迫も日銀の緩和長期化につながるとみられる。その意味で日本の債券は米国や欧州など利上げを行う国の債券よりも買いやすい。特に海外勢にとっては、日米金利差の拡大とベーシスを加味したドルベースでの利回り水準から「JGBは買い」との判断になるだろう。

●米経済に対して強気 ドル円は上方向に

<三菱UFJ銀行 チーフアナリスト、井野鉄兵氏>

今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は若干タカ派的だった。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は会見で、ウクライナ情勢は短期的なインフレリスクと指摘したことを踏まえた上で、米国が景気後退になる可能性は少ないと述べるなど、米経済に対して強気な見方を示し、金融引き締めを行うことを明確にした。

FF金利見通しの2023年末は2.8%と前回よりも上振れており、インフレが2%に向けて収束する見通しが立ちづらくなっている。一方で、長期ロンガーラン予想2.4%と前回から下振れた。先々の政策変更が振れ幅をもっていることを示唆している。

ドル高の材料は出尽くしとなった一方で、円売りが意識されている。足元の原油先物価格は下落しており、経常収支や貿易収支の赤字に対しての懸念は強まってはいないものの、円安要因が解消された訳ではない。

ウクライナ情勢は日本の景気悪化リスクとみられており、日銀の金融政策が欧米に追随し、引き締め方向に自発的に転じるのは難しい。このため、日米の金融政策の差が意識されやすく、ドル円は上方向を目指す環境が続く。黒田日銀総裁の円安容認の姿勢が変わらなければ、短期的に120円が視野に入ってくる。

●不透明感の緩和で株高、議事要旨に向け金利動向注意

<大和証券 チーフグローバルストラテジスト 壁谷洋和氏>

3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を通過し、ひとまず視界が広がった。株価は、米金融引き締めを材料にしてもう一度、下値を試すといった展開は想定しにくい。ウクライナ情勢も停戦交渉の妥協点が見えつつあり、目先の日本株は、外部環境の好転を背景に堅調な展開が見込まれる。

米連邦準備理事会(FRB)は15─16日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ、0.25─0.50%とした(2022年 ロイター/Joshua Roberts)

FOMCの内容自体はタカ派的といえる。0.25%の利上げ開始を決めたほか、年内は7回の利上げをドットチャート上で示し、毎会合での利上げが示唆された。ここまでは市場でも織り込みが進んでいたが、来年に3―4回の利上げが示唆されたのは市場の想定より強めとなった。

本来、株価にポジティブな材料ではないものの、利上げの道筋ははっきりしてきた。不透明感の緩和は、株式市場にとってプラスの意義が大きい。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長はインフレ抑制に積極的な姿勢を示しながらも、景気の強さへの自信も示した。この辺りも市場で評価され、大幅な株高に寄与した面もありそうだ。

ただ、資産縮小(QT)に関しては、5月に始めるかも知れないということ以外、対象資産やペースなど明らかでない部分も残る。今後公表されるFOMCの議事要旨の中にヒントを探すことになる。議事要旨の公表にかけては、金利の動向に注意が必要だ。金利が動揺するようなら、株式市場でも警戒感が強まる可能性がある。

●想定よりタカ派、ドル/円は一段高も

<T&Dアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャー 浪岡宏氏>

米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果は非常にタカ派的な内容で、サプライズだった。声明文がかなり書き換えられており、前回まではパンデミックに焦点が充てられた内容だったが、今回はウクライナ情勢に関する言及もあり、インフレが今後も加速する可能性をにじませている。

FOMCメンバーによる金利見通し(ドットチャート)についても上方シフトするとみていたが、予想よりもタカ派的で、インフレ見通しがかなり引き締まっている印象を受けた。

FOMC後、外為市場ではドル下落に反応したが、これは50ベーシスポイント(bp)の利上げを意識していた投機筋が、材料出尽くし感からドルを売った可能性があるとみている。

今後のドル/円の方向感としては、日米の金融政策の格差が広まっていくとの見通しが強まり、さらにドル高が進んでもおかしくはないだろう。明日は日銀の金融政策決定会合を控えているが、決定会合後の記者会見で黒田東彦総裁が足元の円安に対してけん制するような発言をしなければ、円安傾向が強まる可能性もある。

ただ、テクニカル的には119円半ばから後半でいったん利益確定売りが優勢になるとみている。

●サプライズなタカ派、逆イールド化も

<みずほ証券 シニア債券ストラテジスト 上家 秀裕氏>

サプライズと言えるほどのタカ派だった。今年は5─6回の利上げとみていた市場関係者が多かったようだが、ドットチャートで示されたのは年7回。さらに1回に0.25%よりも大きい利上げ幅を想定しているFOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーの予想もあった。

FF金利見通しの長期ロンガーラン予想2.4%に対して、2023年末は2.8%、24年末も2.8%と上回っている。均衡金利を上回る金利予想は、FRB(米連邦準備理事会)が景気よりもインフレ対応を重視するとのメッセージとみることができる。

今回のFOMCを受けて米金利曲線はベアフラット化した。今後、逆イールドカーブ化する可能性もある。ただ、すでにほぼ全年限でフラット化しており、余地はそう大きくない。また逆イールド化すればリセッション(景気後退)のサインだとされ、世の中のムードが変わることも考えられる。今年後半に物価動向の変化があれば、利上げペースも変わってくるだろう。

●非常に管理された利上げ

<キルター・インベスターズのポートフォリオ・マネジャー、ヒネシュ・パテル氏>

米連邦準備理事会(FRB)の利上げ計画はまだ初期段階だが、ようやく始まった。イングランド銀行(英中央銀行)の後塵を拝しているにもかかわらず、新型コロナウイルスのオミクロン変異株の脅威、中国の規制強化、ウクライナ紛争の影響などがある中で、非常にうまく伝達し管理された利上げだった。

しかし、これらの脅威はいずれも金融政策によって解消されるものではない。インフレショックがシステム全体に響き渡る中、将来再び緩和が必要になった時のためにFRBは金融政策を正常化しておく必要がある。

●積極利上げで失業アップ、景気後退の恐れ

<ナティクシス(ニューヨーク)の米州担当チーフエコノミスト、ジョゼフ・ラボーニャ氏>

米連邦準備理事会(FRB)は市場のインフレ懸念に反応しており、今年7回の利上げ予想は妥当であると確認された。FRBは積極的な利上げを行おうとしているが、そうなれば多くの人々が失業せざるを得ず、いわばFRBは景気後退(リセッション)を想定しているのも同然だ。

経済が弱体化しているのに、FRBは金利を中立とみられる水準よりもかなり高くするつもりだ。中立水準はFRBが考えるより低い。インフレ高進による需要破壊が起きている今、FRBがこのような引き締めを行えるとは思えない。

●FRB見通しタカ派的

<キャピタル・エコノミクス(トロント)のチーフ米国エコノミスト、ポール・アシュワース氏>

連邦準備理事会(FRB)は今日、25ベーシスポイント(bp)の利上げで引き締めサイクルを開始した。ロシアとウクライナの紛争のほか、中国の新型コロナウイルス感染再拡大に起因する不確実性が高いにもかかわらず、年内に予定されるあと6回の連邦公開市場委員会(FOMC)で毎回25bpの利上げを実施していくとみられる。

これにより、フェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標は1.75─2.00%に引き上げられる。

FRBはFOMC声明で、FF金利誘導目標を「継続的に引き上げることが適切」と表明した。

ただ来年の利上げペースの中央予測は、一回おきのFOMCで25bpの利上げが決定されるというもので、引き締めペースの鈍化が予想されている。

これに基づくと、23年末時点のFF金利誘導目標は2.75─3.00%。2.4%にやや引き下げられた中立金利を若干上回ることになる。このところ金利見通しは引き上げられているが、それでもFRBの見通しはタカ派的であると言える。

*内容を追加しました

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