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再送-〔クロスマーケットアイ〕「成長戦略」の失望リスクに警戒高まる、市場不安定化の一因に
2013年5月28日 / 07:57 / 4年後

再送-〔クロスマーケットアイ〕「成長戦略」の失望リスクに警戒高まる、市場不安定化の一因に

(エコノミストの名前の表記を修正して再送しました。)

[東京 28日 ロイター] - 市場が不安定化したのは、アベノミクス「第3の矢」である成長戦略に対する失望リスクが浮上したことも一因だ。これまでに明らかになっている議論や内容から、労働市場改革や税制改革、社会保障改革など潜在成長率を高めるような迫力ある政策は先送りされる可能性が高いとの見方が広がっている。参院選で自民党が大勝すれば、その時こそ既得権益に切り込む大胆な政策が導入されるとの期待も残っているが、不透明感は強く、海外長期投資家はその点を見極めるまでは動かないとの指摘も出ている。

<海外勢期待の政策は軒並み先送り>

安倍政権は6月14日に「成長戦略」を閣議決定する方針を固めた。6月5日には、成長戦略の第3弾として、民間活力の活用を通じたインフラ整備(PFI)や特区制度、ベンチャー企業振興策等を打ち出す方針だ。しかし、これまでの発表内容や、産業競争力会議などでの議論を見る限り、少なくとも今回の「成長戦略」では、「日本経済の体質を転換し、潜在成長率を高めるような迫力ある政策は先送りされそうだ」(シティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏)との受け止めが市場では多い。

たとえば、労働市場改革だ。市場では、解雇ルールの法制化によって、人件費調整を、現在の賃金の抑制や非正規雇用の活用を中心としたものから、正規労働者の削減を含む調整も可能にすることで、企業が労働生産性を高める選択肢を増やすことができるとの期待が出ていた。その是非や効果については異論もあるものの、国民的議論が盛り上がる前に、今回の「成長戦略」からは除外される見通しだ。

また「法人税の引き下げ」や「移民政策の検討」、「混合診療の解禁」など外国人投資家が期待している政策についても先送りされるとの観測が強まっている。昨年11月半ば以降、日本株を10兆円近く購入し「安倍相場」をけん引してきたのは海外勢だったが、「成長戦略への不安が、利益確定売りを出す背景になったようだ」(外資系証券)という。

7月に参院選を控え、今回の成長戦略は「小粒」にとどまりそうだとの見方も海外勢には織り込まれつつあるため、今回の「失望リスク」はそれほど大きくならない可能性もある。ただ、選挙で自民党が圧勝し、最低3年間の安定政権を手に入れた後にこそ、既得権益に切り込むような大胆な政策が出て来るとの期待にシフトしているだけであり、今回を乗り切ったからといって「失望リスク」が払しょくされるわけではない。

HSBCの香港在住の日本担当エコノミスト、デバリエいづみ氏は「今回の日本株急落の直接的な要因は、決算を迎えるヘッジファンドなどによる利益確定売りだ。海外勢がアベノミクスに失望したわけではない。ただ、参院選を経ても中途半端な成長戦略や構造改革にとどまり、改憲だけに注力するようでは、海外勢、国内勢ともに失望するだろう。内外の長期投資家が本格的に日本株を買い始めるには実体経済が本当に回復するとの見通しが強まる必要がある」と述べる。

<将来不安取り除く政策必要>

長年の円高局面で鍛えられてきた日本の輸出企業は実力がついてきている。内閣府経済社会総合研究所の「企業行動に関するアンケート」によると、製造業の採算為替レートは2001年度の115.3円から2012年度は84.1円まで低下している。今期の想定為替レートも90─95円で、足元の1ドル102円レベルの為替水準が続けば、上方修正要因となる。

ただ、輸出は日本の国内総生産(GDP)の10%強にすぎず、日本経済全体の力強さを取り戻すには、成長戦略が不可欠だ。外需産業に比べ生産性が低いといわれる日本の非製造業の「構造改革」促進や、消費を阻害している将来不安を解消させるなどの必要がある。

ニッセイ基礎研究所・金融研究部門主任研究員の井出真吾氏は、足元の企業業績は好調であり、第1・四半期決算が確認できる7月後半には市場センチメントが回復するとみているが、長期的な成長にはやはり成長戦略が欠かせないと話す。「成長戦略だけでなく、社会保障改革も議論が進んでいるように見受けられない。金融緩和や財政支出はあくまで『痛み』を一時的に和らげるカンフル剤で、時間稼ぎにすぎない。構造改革を進めるのは今しかないのに、先送りの懸念が強まっている。年金などの問題を解決しなければ、若年層が抱えるような不安は払しょくされない」という。

 <25日線の攻防、4月3日の再現ならず>

日経平均 は反発。振れ幅は上下200円程度と前日までと比べれば徐々に小さくなってきたが、プラス圏とマイナス圏を行ったり来たりする不安定な展開が続いている。海外勢は前日の米英市場が休場であり、売り買いともにそれほど出ていないが、「自律反発狙いの買いが入り、売り方の買い戻しも入った一方で、追証が発生している個人投資家やいったん外そうという国内機関投資家などからの売りが出て、上下に振れている。安定感には程遠い」(国内証券)という。

前日、日経平均は4月2日以来の25日移動平均線(1万4376円78銭=28日)割れとなったが、4月3日のように1日で再び同線を回復することはできなかった。「25日移動平均線を下回ってくれば、CTA(商品投資顧問業者)などがヘッジ売りを出してくる可能性があり、警戒される」(岩井コスモ証券・投資調査部副部長の清水三津雄氏)との声もあり、下振れ懸念はまだ残っている。

アストマックス投信投資顧問・証券運用部シニアファンドマネージャーの山田拓也氏は「アベノミクスに対する市場の期待をもう一度取り戻すには、成長戦略などで日本が本当に変わるということを示すことが必要だ。成長戦略の結果が判明するのはかなり先だが、『良い種』がまかれたかどうかはわかる。失望されれば、日本株はもう一段下落する可能性もある」との見方を示している。

 <東京市場 28日> ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

日経平均  国債先物6月限 国債328回債   ドル/円(15:00) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 14311.98円 141.84円 0.905% 102.01/03円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

+169.33円 -0.59円 +0.070% 101.00/01円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 注:日経平均、国債先物、現物の価格は大引けの値。

下段は前営業日終値比。為替はNY午後5時。

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