March 7, 2014 / 5:02 AM / 6 years ago

COLUMN-ビットコインは「モノ」なのか、仮想通貨膨張は当局への警鐘

田巻 一彦

[東京 7日] - インターネット上の仮想通貨・ビットコインを法的にどう取り扱うのか、日本政府がようやく重い腰を上げた。「通貨」としてではなく、金などの貴金属と同じ「モノ」として規制の対象にする。保有者が限定されている現時点では、政府の方針で対応可能だろうが、もし、保有者が急増した場合には、「モノ」と認識した規制では、対応が難しくなる可能性も出てくる。政府・日銀は今から仮想通貨に対する研究を本格化させる必要があるだろう。政府が野放図な財政運営を展開し、債務の膨張を止められないと思われた場合、仮想通貨の保有者が急増する展開もありうる。仮想通貨の膨張は、当局への警鐘でもある。

  <銀行・証券に仲介させず>

政府は7日、民主党の大久保勉参院議員の質問主意書に対する回答を閣議決定した。その中で、ビットコインの取り扱いを銀行には認めず、証券会社も売買の仲介ができないとの見解を表明。「モノ」として取り扱う方針を明確にした。

これまでは、政府としての方針が示されてこなかったため、どの行為が合法で、何が違法行為か全く不明だった。その意味で政府の対応は一歩前進したが、これでビットコイン問題に関する不透明性が晴れたかと言えば、大きな疑問符が付くだろう。

  <取引所の破たん、オーソライゼーションにマイナス>

ビットコインの大手取引所、マウント・ゴックスが2月28日に民事再生手続きを申請してから1週間、ビットコインの将来性や問題点に関し、様々な意見が飛び交った。

カナダでも取引所のフレックスコインが今月4日、ハッキングによって約60万ドル相当のビットコインが消失したとして、サービス停止を発表。日本国内では、ビットコインの将来性は失われたとの意見が多く表明されている。

そのような意見では、ビットコインは相場の乱高下が大き過ぎ、通貨の3つの機能の1つである価値の貯蔵機能を十分に果たせないという指摘が目立つ。

また、多くの人がドルや円のように通貨として認める「オーソライゼーション」の点で、圧倒的に劣っているという見方が広がった。

  <低い送金コストにメリット、ビットコイン自体は打撃受けず>

一方、通貨機能の1つである決済手段としての機能に関しては、送金手数料がゼロに近いほど安い点を挙げ、いずれグローバルに広がる可能性を主張する意見も少なくない。この点に関しては、単価の安い商品やサービスの支払いに関し、既存のカードによる支払いでは、手数料が高くペイしないビジネスでも、ビットコインを支払い手段に使えば、ビジネスとして成り立つという構図も成立する。

また、今回の取引所の破たんや閉鎖は、取引所のシステムがぜい弱だったということを浮き彫りにしたが、ビットコインのシステムそのものが打撃を受けていないことも明らかになった。

自民党のIT戦略特命委員会の平井卓也委員長は5日、記者団に対して「ビットコインのアルゴリズムが破られたわけではなく、取引所のぜい弱性に問題があった」と述べ、同様の見解を示している。

実際、2つの取引所の閉鎖にもかかわらず、ビットコインの価格は大きな振れは伴いつつも、1ビットコイン=650ドル台の価格を維持しており、一定の信認は維持されているようにみえる。

   <三木谷氏、拙速な規制に懸念>

今は、一部の「愛好家」だけに保有されているビットコインが、送金手数料の安さに着目して、受け入れる人々がグローバルに増大した場合、「モノ」を前提にした規制では、対応が難しくなる可能性が出てくるだろう。

IT企業などが多く加盟する経済団体「新経済連盟」の三木谷浩史代表幹事(楽天 社長)は5日の会見で、国境を越えてインターネット上を移動するビットコインの特徴を指摘し「日本国内だけでどこまで規制できるのか、実効性の問題がある」と指摘。一部の新興国などでは決済手段としてかなり注目されていることにも言及し、「拙速に動かない方がいい」「(規制は)深い議論をしてからにすべきだ」と述べた。

   <キプロス危機で注目されたビットコイン>

また、長期的には国家の横暴とも思える「行為」があった場合に、予想外のスピードで普及する可能性があることにも注目すべきだ。

ビットコインの価格が急上昇した時期の1つに、2013年3月のキプロスにおける銀行預金への課税問題の発表がある。同法案は議会で否決されたが、逃避先の1つとしてビットコインが注目されたようだ。

これまで富裕層などの逃避先としてよく知られてきたゴールドなどと並んで、ビットコインが選好される可能性は、今回の取引所閉鎖によっても決して低下していないようにみえる。

   <放漫財政なら、ビットコインへ雪崩のリスクも>

日本国内に限ってみれば、ビットコインの信認は、日銀券(円)と比べ物にならないほど低いと言える。通貨として認め、受け入れる人は一握りだ。

しかし、政府が放漫財政を続け、債務残高が2000兆円へと一直線に増大するような展開になった場合、黙って日本国民が円資産にしがみついているのかどうかは、議論の余地がありそうだ。

仮に今後、10年が経過し、世界的にビットコインの保有者が急増していた場合、ビットコインに資産の一部をシフトさせる富裕層が多くなると、今の法体系とビットコインのシステムを前提にすれば、ビットコインへのシフトを止めることは難しくなると予想する。

この先、ビットコインへの信認が高まることになれば、それは政府の政策に対する「静かなノー」の意思表示と受け止めるべきだ。

そのような事態に陥らないためにも、政府は財政健全化に向け、地道な努力を継続していくべきであり、その必要性があらためて認識される機会になったと考える。

●背景となるニュース ・ビットコインは通貨でない、円や外貨との交換や勧誘の法令違反は個別事情で判断=政府答弁書

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