April 24, 2014 / 7:52 AM / 5 years ago

再送-〔アングル〕「オタク経営」が影落とすビットコインの拡大と凋落 

(東京地裁によるMt.Gox社の破産手続き開始の決定を挿入して再送します)

[24日 ロイター] - 一時は世界最大級の規模となった仮想通貨ビットコイン取引所「Mt.Gox(マウント・ゴックス)」(東京・渋谷)は、経営破たんからの再建が難しくなり、24日、東京地裁が同社の破産手続きに入るとの決定を下した。同社の拡大と凋落の主役となった経営者マルク・カルプレス代表とは、どのような人物だったのか。同氏自身の発言や周囲の証言から、「オタク」文化を愛好するベンチャー経営者の実像を探ってみた。

2011年6月、ハッキング攻撃を受けたとする同取引所の事業が継続できるのかどうか、顧客からその証拠を求められたカルプレス代表(当時26歳)は、チャットの最中に、現在の市場価値で1億7000万ドルに相当する42万4242ビットコインを動かしてみせた。

「42」という数字を繰り返したのには理由がある。同氏の愛読書で世界的なベストセラーであるコメディSF小説「銀河へのヒッチハイク・ガイド(The Hitchhikers Guide to the Galaxy)」の中で、スーパー・コンピューターが途方もない期間をかけ、すべての問いに対する究極の答えとしてはじき出した結果が「42」だったからだ。

当時の5万人ものビットコイン利用者の多くと「オタク」文化を共有している、と信じていた同氏ならではの回答だ。「コインが残っていないと文句を言わないで。答えは42だ」。同氏は殺到する問い合わせをそうはぐらかし、実際に利用者を納得させることに成功したという。

その後ビットコインの価格は数ドルから1000ドル以上に急上昇。同社の見積もりによれば、2013年には30億ドル相当のフローを手掛けるようになり、世界最大級のビットコイン取引所となった。

<漫画・コスプレ天国の日本にぞっこん>

同氏と親しい人々によると、カルプレス氏は身の危険を心配して公の場を避ける一方、ストレス発散のため、夜になると社用車として購入したホンダ・シビックを東京周辺で乗り回している。1人暮らしの同氏には、ペットの猫がいる。名前は祖母がつけたという「Tibane(ティバン)」。彼が2009年10月に日本で起こした企業(Tibanne)の名前の由来ともなった。

フランスのシュノーブ出身で、10歳の時に最初のコンピュータープログラムを書いた。「フランスでは自分の国にいると心から感じたことが一度もなかった」と自身のブログで語っている。5年前に日本に来てからはフランスに一度も帰っていない。  

内気な性格で、対立を嫌う自称「オタク」のカルプレス氏は、大好きな漫画やゲーム、コスプレにのめりこめる日本に居心地の良さを感じた。同氏はまた、オンラインのコミュニティーに安らぎを求めた。コミュニティーで同氏は基本ソフト(OS)Linux(リナックス)の公式マスコット「タックス」にちなんで、「マジカル・タックス」として知られていた。

一方、 元同僚の一部によると、同氏は法や規制の違反が事業や自身の評判に与える影響について無関心だった。それを物語るかのように、同氏の経歴には法的トラブルを引き起こした過去が何度かある。

カルプレス氏が2006年に書いたブログ投稿によると、同氏は21歳になる前にフランスで、コンピューター詐欺関連の罪で2度逮捕されている。 日本では、同氏に1万5000ユーロ支払ってウェブサイト作成を依頼したとする顧客が、約束の不履行で2012年に同氏を起訴している。米国土安全保障省はまた、2013年に、同取引所の送金業者としての登録が遅かったとして、マウントゴックスの口座にある550万ドルを差し押さえた。

マウント・ゴックスの破たん後は、債権者への対応などに追われる日々が続き、ここ数日は東京で弁護士らとのミーティングに忙殺されているという。

同氏の弁護士は先週、米連邦裁判所判事に提出した文書で、米破産手続きに関して同氏が代理人を立てる準備をしており、訪米することはないと明らかにした。関係者によると、カルプレス氏は米当局に逮捕される可能性を恐れているため、米国に行くことを拒んでいる。

米国で債権者が提起した集団訴訟の原告側代理人、スティーブン・ウッドロウ弁護士は、「これが大規模詐欺であろうとなかろうと、あるいはひどい過失であるかないかに関わらず、彼に責任がある」と怒りを隠さない。

マウント・ゴックスは日本で民事再生法の適用を申請していたが、東京地裁は今月16日にこれを棄却。保全管理人は会社を清算する破産手続きに入る見込みだと明らかにした。カルプレス氏は自分を窃盗の首謀者として非難する声に心を痛めており、およそ12万7000人にのぼる債権者にビットコインと現金を返却したい、と周囲に語ったという。

<エクササイズ・ボールやロボット購入>

経営者としてのカルプレス氏を示唆するひとつの逸話がある。2011年に起きたトラブルをめぐる対応だ。同社はデータベースがハッカー攻撃を受け、ビットコインの価格がゼロまで引き下げられたと発表した。同氏はこの問題に困惑し、取引所をオフラインにしたままで、より安全な取引プラットフォームの構築に着手。一方、当惑した利用者からの何千もの電子メールには未返信のままだった。

支援を買って出たビットコイン支持者の1人、ロジャー・ベール氏は、カルプレス氏が問題の解決に向け週末返上で働くのではなく、月曜日まで作業を中断する提案をしたことに驚いた。「彼はマウント・ゴックスに集中すべきだったのに、決してそうしなかった」と同氏は指摘する。

3人の元社員は、同氏が周囲から好かれることを気にしていた人物だった、と振り返る。社員全員にランチをふるまったり、オフィスを賑やかにするためにエクササイズ・ボールやロボットを購入した。昨年末、問題が山積みになっていた状況でも、同氏はレクリエーション部屋にハンモックを吊るすのに半日を費やした。

しかし、社員の不満は募っていたようだ。同氏が賃上げを拒否しながらこういった品物を買うこと、そして、単純な業務についてまで、同氏の意思決定を待たなくてはいけないわずらわしさには反発が強かった。

カルプレス氏は銀行口座や保有するビットコインを一人で管理するなどすべてを自分に集中させていたため、それが円滑な業務運営を妨げているという懸念も社内にあった。同氏が重病にかかったり、データにアクセスできない事態が生じた場合、権限が集中したままではビジネスが立ち行かなくなる。しかし、ある元社員によると、同氏はビットコイン・ウォレットのパスワード共有をはっきりと拒否したという。

競合する取引所がより高度な取引システムを開発するようになると、カルプレス氏の関心は取引所ビジネスから離れ始めた。複数の記録と元社員の話によると、同氏はビットコイン事業と無関係なShade 3Dというソフトウエア会社の買収に移り、オフィスがあるビルの1階に「ビットコイン・カフェ」を設立する準備も始めた。

元社員によると、このカフェで、同氏は自分が作ったキッシュとアップルパイを提供する計画だった。しかし、マウント・ゴックスの破たんで、カフェが開店の日の目を見ることはなかった。 (Sophie Knight 編集:石黒理絵、北松克朗)

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