[東京 21日 ロイター] - 福井県の住民らが関西電力 を相手取り、大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働の差し止めを求めていた訴訟で、福井地裁(樋口英明裁判長)は21日、「運転をしてはならない」との判決を言い渡した。判決では「具体的な危険性が万があれば、差し止めが認められるのは当然」と断じた。
<判決、再稼働批判を後押しか>
関電は判決に対して「当社のこれまでの主張が理解されなかったことは誠に遺憾。すみやかに控訴の手続きを行う」とのコメントを発表した。
2011年3月に発生した東京電力 福島第1原発事故後、原発の運転差し止めを認める判決は初めて。現在、全国48基の原子炉は全て停止中だが、原子力規制委員会が昨年7月に始めた新規制基準適合性審査のもとで、九州電力 川内原発の審査が最終局面を迎えている。
政府は審査に合格した原子炉は再稼働させる方針だが、再稼働に対する世論の反対は根強い。福井地裁の判決は、原発の安全性の不確かさに踏み込むなど、原発復権を狙う政府や電力業界への批判をにじませており、再稼働に批判的な世論を後押しする可能性もありそうだ。
<経済活動の自由、人格権に劣位>
判決では「原発の稼動は電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由に属するが、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位する」と指摘。原発について「存在自体が憲法上容認できないというのは極論だが、具体的危険性があれば、差し止めが認められるのは当然」との判断を示した。
関電が、大飯3、4号の原子炉格納容器の耐震性を1260ガル(揺れの加速度)と設定していることについても、「大飯原発には1260ガルを超える地震は来ないと確実な科学的根拠に基づく想定は本来的に不可能」とした上で、同原発の安全性について「確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立つ脆弱なもの」と結論づけた。
また、原発停止の長期化が貿易赤字の拡大や国富流出となっているとの推進側の主張に対しても、「豊かな国土と国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことが出来なくなることが国富の喪失と考える」とした。
<政府、再稼働方針維持>
菅義偉官房長官は同日の会見で、福井地裁の判決に関して「原子力規制委員会で、世界で最も厳しいと言われている安全基準(新規制基準)で審査して、その結果を待つ」と述べ、再稼働を進める方針に変わりはないとの認識を示した。
<原発、住民勝訴は3例目>
NPO法人「原子力資料情報室」によると、原発差し止め訴訟で住民側が勝訴したのは、高速増殖炉「もんじゅ」の設置変更許可を無効とした03年の名古屋高裁金沢支部と、06年に北陸電力 志賀原発2号の運転差し止めを命じた金沢地裁に次ぐ3例目。ただ、もんじゅ、志賀原発とも最終的には住民側が敗訴している。
同情報室の山口幸夫・共同代表は福井地裁の判決について「人格権に触れたことは重要」と評した。
浜田健太郎