September 30, 2014 / 6:07 AM / 4 years ago

〔焦点〕予想裏切る生産悪化、「景気後退入り」の可能性で増税シナリオに影

[東京 30日 ロイター] - 8月鉱工業生産は予想を裏切る悪化となり、テクニカルに「景気後退入り」となる可能性が高まった。政府が10%への消費増税を判断するために注視する7─9月期国内総生産(GDP)にも大きな下押し圧力となりそうだ。政府内には雇用改善を柱として9月以降の景気持ち直しに期待する声もあるが、雇用や賃金に頭打ちの動きも出ており、今年末に向けて景気が持ち直しに転じるかどうか、予断を許さない状況となってきた。

<生産悪化、7─9月期設備投資下押しか>

「8月の生産統計の弱い数字にはかなりショックを受けている」──。30日発表された鉱工業生産は、市場関係者にとって想定外の結果となった。需要の弱さが出荷を落ち込ませ、生産抑制が追い付かないために在庫が急増している姿を示した。輸出型産業だけでなく、内需向け産業でも弱い動きとなっている。

  SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト、岩下真理氏は「これでは、7─9月期は消費だけでなく、設備投資も持ち直さないだろう。結果として今年1月が景気の山となる可能性が高まった」とみている。

4月の消費増税後の景気けん引役とみられていた設備投資だが、「7─9月に増加に転じる可能性は高いが、鉱工業生産指数の出荷動向から判断すると、力強い回復は当面期待できない」(ニッセイ基礎研究所の経済調査室長、斉藤太郎氏)との声が相次ぐ。   先行きも生産調整は続きそうだ。在庫水準はリーマン・ショック直後以来の高水準となっているため、出荷が多少増えても、在庫削減のため企業は当面生産を抑制せざるを得ないからだ。経済産業省では7─9月期も2四半期連続の減産となる可能性が高いとみている。

この結果、10月7日に内閣府が公表する8月景気動向指数は、景気後退入りを示唆するデータになる可能性が高まっている。同指数は生産関連指数の悪化を反映しやすいためだ。第一生命経済研究所の主席エコノミスト、新家義貴氏は「基調判断は下方への局面変化に修正されそうだ。今年1月をピークに景気後退局面入りしている公算が大きい」とみている。

景気は4月増税をきっかけに、事後的に景気後退局面と認定されることになりそうだ。

さらに7─9月期GDPについて、経済産業省は企業が9月に生産を抑制して在庫削減に動けば、GDPを押し下げかねないとみている。

 

<政府内に秋からの回復期待する声>

        一方、10%への消費増税を判断する時期が近付いている政府内には、夏場の悪いデータだけでなく秋のデータもみて判断すべきとの声が増えている。

ある政策当局幹部は「7─9月期が悪くても、増税判断時期までには10、11月のデータも出てくる。10月以降の新車発売の動きにも期待している」と語る。

甘利明経済再生相は30日、足元の景気について「(消費増税の)反動減の収束に若干手間取っている」と、政府の想定より回復が遅れていることを認めながらも、「まだら模様で、良いデータも上がっている」と指摘。今後、回復基調に入っていくとの期待感をにじませた。

麻生太郎財務相も夏場の停滞の背景として天候要因を挙げ、「9月、10月とだんだん盛り返してくる」との期待を捨てていない。

  政府内のこうした期待の背景には、雇用改善への期待がある。確かに有効求人倍率と失業率は、過去の景気のピーク時に匹敵するほどの水準まで改善してきた。

「特に注目しているのは雇用の変化。パート比率が低下している。正社員化の動きは報道でも伝えられているように、ずいぶん広がりが出てきた」とみている政府高官もいる。

エコノミストの中にも、消費再増税の判断に関して「9─10月のデータの戻りを確認すべき」(岩下氏)との声があるのも確かだ。

<9月以降の持ち直しに不安材料も>   

  ただ、このところの景気停滞が、遅行指標となる雇用・賃金統計に影を落としており、消費の停滞が長期化しかねない懸念も浮上している。

雇用の先行指標としてより重要な新規求人数は、8月に2カ月連続で減少。クレディスイス証券のチーフエコノミスト、白川浩道氏は「4月のピーク比で2.6%の減少となっている。大きく崩れた状態にあるとは言えないが、生産活動が一段と下振れてきているため、9月以降も減少傾向が続く可能性が高い。求人市場も景気後退的な局面に入ったと判断される」とみている。

  賃金もボーナスは増加したが、所定内給与や時間外手当は伸びが続いている一方で上昇幅はかなり限られている。

さらに物価上昇率を差し引いた実質賃金は、マイナス幅が拡大している。4月から6まで前年比で3%台のマイナスを続けた実質賃金は、7月にはマイナス1.7%にやや改善したが、8月には再びマイナス幅が拡大した。

ニッセイ基礎研の斉藤氏は「消費増税後の景気減速に伴い、所定外給与も伸びが鈍化している。実質所得の低下が引き続き個人消費の下押し要因となりそうだ」とみている。

2年連続の消費税増税に景気が耐えられるのか──。財政再建とデフレ脱却の両立を図りたい政府にとって、1回目の増税と天候要因で個人消費が低迷したことはある程度予想がついたことだろう。

だが、生産の悪化で企業部門が景気の足を大きく引っ張る姿は想定外だったに違いない。10%への増税判断は、政府が予想していた以上に難しいものとなってきた。 (中川泉 編集:田巻一彦)

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