October 24, 2014 / 6:02 AM / 4 years ago

〔焦点〕政府内で弱気な景気認識、回復二極化で再増税に悲観論

[東京 24日 ロイター] - 政府内で景気に対する弱気な見方が急速に広がりを見せている。秋が深まってきても生産を中心に回復の足取りが重いためだ。国内総生産(GDP)の6割超を占める個人消費には、富裕層とそれ以外の二極化が鮮明になって力強さに欠け、景気の回復メカニズムは弱々しいままだ。政策当局者の間では、消費再増税の実施に悲観的な声も出始めた。

  <在庫積み上がり、秋回復の期待吹き飛ぶ>

「夏場の天候要因がなくなったのに秋も停滞、悪くすると下向きになってしまうかもしれない」──。政策当局者の一部から、こんな弱気な声が出てきた。

消費税を10%に引き上げる判断は今年12月に行われるが、政府は今月21日に月例経済報告における景気判断を2カ月連続で下方修正した。この対応は、消費再増税をめぐる厳しい国内の経済環境に対する危機感の表れと見て取れる。

安倍晋三首相や主要経済閣僚は、7─9月期GDP成長率を見て増税への決断をするとしているが、政府部内では事前の期待値から、かなり下振れしているとの見通しが出ている。

当初、政府部内の政策担当者の中には、仮に7─9月期GDPが下振れしても、10月以降に景気回復を裏付ける多方面のデータが出てくれば、消費再増税への環境は整うとし、事実上、増税へのハードルを下げる方針を固めていた。

だが、下げたハードルすらクリアできないのではないかとの認識が、複数の政策担当者から漏れてきている。

中でも重視されたのが生産動向だ。在庫が耐久財を中心に積み上がっているため「生産の戻る時期が、かなり遅れることになった」(政策当局幹部)と指摘する。

その結果、期待していた雇用や賃金にも悪影響が出始めた。例えば、時間外労働時間は伸び率が鈍化しつつあり、新規求人倍率も高水準ながら頭打ち感が出てきている。

最新の9月小売関連データから得られる情報として、政策当局幹部は「良くなっているのは富裕層だけ」との見方を強めている。

百貨店やスーパー、自動車販売、白物家電などのデータが、高額品を中心に前月比で実質的に増加に転じる動きが出てきている。だが、「低所得層や30代世代において、所得の先行きの不透明感などから支出を抑制する動きが生じている可能性がある」(内閣府)との分析結果も公表している。

  <観測交錯する安倍首相の胸の内>

再増税を実施するかどうか、最終的に決断する安倍首相の胸の内が、果たしてどちらに傾いているのか、霞が関周辺では多様な観測が交錯している。

20日の英フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、安倍首相は「消費税を引き上げることで、経済が軌道から外れたり、鈍化したりすれば、税収は増えない。そうなれば意味がない」と述べた。菅義偉官房長官は、これまでの発言内容と同様のことを言っていると説明したが、市場の一部では「増税延期に傾いている」(外資系証券の関係者)との受け止めが浮上した。

ある政府関係者は、消費増税を決めた民主、自民、公明の3党合意に安倍首相が関与していなかったことを挙げ、「消費税の決断したのは自分ではないという感じを持っているのではないか」との受け止め方を漏らしている。

また、別の政府関係者は、衆院の解散・総選挙の時期とも絡み、今回は延期してフリーハンドを確保したいとの考えもあるのではないかと推理している。    <延期でも金利上昇回避の目算、問題は株価>

東京大学大学院の福田慎一教授は「景気情勢からみれば、消費再増税はなかなか厳しい状況」とみている。

一方で「財政を考えれば増税の決断をしなければ厳しい」とも指摘する。延期を決断すれば、財政再建に向けて内外に広く認知されている基礎的財政収支(プライマリーバランス)の2015年赤字半減目標でさえ、より危うくなりそうだ。   

ただ、延期を決断しても、懸念される金利上昇は短期的には回避できる、との雰囲気も、首相周辺にはあるようだ。「増税延期したら金利が暴騰するのは本当かな」といった政府関係者の声の裏には、日銀が大規模に国債を購入していることへの安心感が漂う。 福田教授も「日銀が国債を大規模に購入している間は、短期的に金利上昇の大きな心配はない」としている。

懸念されるのは、むしろ株価動向だ。福田教授によると、外国人投資家がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式保有比率の引き上げ期待から日本株を買い越しているが、ある時点で売り圧力は相当強くなるという。

また、財務省の中からも、世界経済の停滞観測と増税環境に関して、楽観できないとの声も出ている。アベノミクスの登場以来、個人消費が堅調だったのは、株価が上昇を続け、その資産効果が働いていた面が大きい。ところが、世界経済への懸念が広がり、株価の変動が大きくなれば、最終的に個人消費にも打撃を与えかねないリスクがあるとの見立てだ。

 <注目度高める11月公表の景気ウォッチャー調査>

政府内では、12月上旬の最終的な増税の決断までに、新車販売や小売データ、鉱工業生産などのデータを詳細にチェックし、景気回復の芽が出てきたのかどうか、慎重に判断したいとの声が多い。

ただ、仮に回復感を示すデータが一部で出てきたとしても、景気の底流にある二極化が払しょくできない限り、再度の増税で景気が腰折れになる懸念も払しょくしきれないとの悲観的な声があるのも事実だ。

このように直近の政府部内では、景気に対する楽観的な見方は急速に後退している。現実に景気は拡大しているのか、それとも潮目を迎え、後退し始めているのか、見極めるには街角景気の声を全国から具体的に拾い上げている「景気ウォッチャー調査」が最適だと、ある政策当局幹部はみている。

10月最後の1週間弱の調査が、11月11日に公表される。その結果が、増税決断前の最後の重要データになりそうだ。 (中川泉 編集:田巻一彦)

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