November 27, 2014 / 11:58 AM / 5 years ago

〔アングル〕論議呼ぶ「独立社外取締役」強化策 数と質の確保など課題

[東京 27日 ロイター] - 金融庁・東証が25日に公表したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の原案は、上場企業に対し、少なくとも2名以上の独立社外取締役を選任すべきとの条項を盛り込んだ。しかし、社外取締役を複数採用している上場企業はまだ少数で、人材の数・質ともに要請を満たすには企業側の大きな負担を伴う。法令とは異なる新コードの強制力もわかりづらく、周知徹底の必要性も含め、解決すべき課題はなお多い。

<人材獲得競争が激化も>

「来年の6月の株主総会までに、(複数の独立社外取締役を選任していない)これらの企業すべてがcomply(従うことが)できる状況になるとは考えにくい」。25日に開かれたコーポレートガバナンス・コードの策定に向けた有識者会議で、東レ の内田章・常務取締役はこう述べ、上場企業による複数の独立社外取締役選任をただちに実施するのは難しいと指摘した。

コーポレートガバナンス・コードの策定は政府が6月に改定した成長戦略の柱の一つ。金融庁と東証を事務局として、有識者会議で実施案の基本的な考え方をまとめ、来年6月の株主総会シーズンに間に合うように新たなコードを策定するというのが政府の青写真だ。

事務局がまとめた原案では、「資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」と明記した。独立社外取締役が社内で十分に役割を果たせるようにするには複数の選任が必要という考えだ。

東証の現在の上場規則では、すでに1名以上の独立社外取締役の選任が努力義務とされているが、事務局原案はより踏み込んだ。大企業や海外での事業規模が大きい企業については、自主的な判断で少なくとも取締役会メンバーの3分の1以上を独立社外取締役とすることが必要と考える場合には、対応方針を開示するという要請も盛り込んだ。

しかし、複数の独立社外取締役の選任をただちに求めるべきか、有識者会議では賛否が大きく対立した。内田氏とともに反対論を展開した日本監査役協会の太田順司会長は、東証のデータをもとに、企業が早期に社外取締役の数と質をともにそろえるのは難しいと指摘。経過期間と人材養成システムの構築を求めた。

東証1部上場企業で独立社外取締役を2名以上採用している企業は、7月時点で21.5%にとどまる。独立社外取締役を全く採用していない企業は700社、1名だけ採用しているのは724社で、これらの企業がすべて来年6月までに2名の独立社外取締役をそろえるとすれば、延べ2100名超の独立社外取締役が必要な計算になる。

コードの原案には「取締役・監査役が他の上場会社の役員を兼任する場合には、その数は合理的な範囲にとどめるべきであり、上場会社は、その兼任状況を毎年開示すべき」との文言もある。つまり、兼任を一定程度に制限しなければならず、上場企業にとって、専任の独立社外取締役を確保するための人材争奪戦が激化するリスクをはらむ。

金融庁では、成長戦略で来年の株主総会に間に合うようにと明記された点を踏まえ、経過措置を設けるのは非常に難しいとしている。今後、実際の対応策をめぐって有識者会議でさらに厳しい意見が出る可能性がある。

<強制か自主対応か>

2月に導入された機関投資家の活動指針である「スチュワードシップ・コード」に続き、コーポレートガバナンス・コードでも英国流の「comply or explain(ルールに従うべし、さもなくば説明せよ)」と呼ばれる考えが採用されるが、日本ではなじみが薄い。

これが意味するところは、実施できない場合にはしかるべき情報公開を行い、できない理由を説明すべきだ、という点。しかし、指針については、法令同様に生真面目に従う企業が続出する可能性がある。一方、採用しない、あるいは諸般の事情で現状では採用できない企業にとっては、その理由をきちんと説明しても、それが正当に評価されず、市場などでネガティブな反応を受ける懸念が残る。

東レの内田氏は有識者会議で、企業がそうしたマイナス評価を受けることがないよう、コードの適用対象や精神を書き込む「序文」の内容に注文を付けた。具体的には、1)新コードが採用する「プリンシプル・ベース」(原則主義)とは何か説明する、2)耳慣れない「comply or explain」という考え方を説明する、3)コードの記載事項に従わない場合でも、きちんとした説明がされていれば、マイナス評価を受けない旨を書き込む、といった点だ。

「北風政策としてやっているだけではなく、太陽政策としてやっている」。7回目となる25日の有識者会議では、これまで座長として司会に徹してきた慶応義塾大学の池尾和人教授が自身の見解を述べる一幕があった。

池尾教授はこう表現し、新コードの意義は、経営者を厳しく律して緊張感のある経営を求めることだけではなく、結果責任を恐れず、思い切り経営をしてもらうための体制づくりだと説いている。 (和田崇彦 編集:北松克朗)

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