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COLUMN-米消費に陰り FRB発言に変化 注視すべき利上げ延期リスク
2015年6月4日 / 02:44 / 2年後

COLUMN-米消費に陰り FRB発言に変化 注視すべき利上げ延期リスク

田巻 一彦

[東京 4日 ロイター] - 年内の米利上げを前提にドル/円 はいったん125円台まで上がったが、どうも直近の米経済の様子がおかしい。個人消費が弱く、4─6月期国内総生産(GDP)も1%前半にとどまる可能性がある。2%台の潜在成長率を下回る状況が続けば、物価下押し圧力が働き、利上げ実施に逆風が吹く。米連邦準備理事会(FRB)幹部の発言もにわかに慎重さが増してきた。利上げ延期とドル安のリスクシナリオにも目配せが必要だ。

<注目されるアトランタ連銀のGDPナウ>

このところ、にわかにFEDウオッチャーの注目を集めているデータがある。米アトランタ地区連銀が出している「GDPNow(ナウ)」だ。米商務省経済分析局が使っている予測モデルと同種のモデルを使って、GDPを試算している。

1─3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比・年率プラス0.2%と市場予想の同1.0%を大幅に下回ったが、GDPNowは同0.1%と予想。その的中率に「プロ」を自認するFEDウオッチャーの多くが驚いた。

直近で4─6月期GDPを同1.1%と試算している。米経済の減速は一時的で、米経済は巡航速度に回復すると見てきた人々にとって、この通りのGDPに収まってしまっては、大変な見込み違いとなる。

<揺らぎが見え出したFRB幹部発言>

FRB幹部の発言も、揺れ動き出した。米セントルイス地区連銀のブラード総裁は3日、「経済への短期的な懸念がある」と発言。これまでのタカ派的な発言からトーンを変化させた。また、懸念されるトレンドとして、小売売上高などの消費関連データが予想を下回っていることなどに言及した。

ハト派的な発言をしてきた米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は3日、さらに慎重な見方を示し、現時点で利上げに踏み切るハードルは極めて高く、来年まで利上げの用意が整わないとの見解を示した。

ブレイナードFRB理事は2日、米景気の低迷は、一時的なものにとどまらないおそれがあるとの認識を示した。その根拠として、消費支出の弱含み、低調な投資、ドル高などを挙げ、中国経済の減速に伴うリスクなどにも触れ、米景気への逆風は、当面続く可能性があるとの見通しを示した。

FRB幹部が一致して懸念しているのは、消費の弱さだ。米商務省が1日に発表した4月の個人所得・消費支出統計によると、消費支出は前月比横ばいで市場予想の同プラス0.2%を下回った。インフレ調整後の消費支出も、3月のプラス0.4%から横ばいに落ち込んだ。

米GDPの7割を占める個人消費の弱さは、米経済の回復力の弱さを端的に示すデータとみることができる。アトランタ地区連銀のGDPNowが試算した4─6月期のプラス1.1%は、この面から見れば、かなり実態に近い可能性がある。

<弱いGDP、物価押し下げ圧力に>

潜在成長率が2%前半から半ばとみられている米経済にとって、1.1%成長というのは、需給ギャップが短期的にはっきりとしたマイナスになっていることを示す。需給ギャップがマイナスなら、物価に下押し圧力が働くことになる。

FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数が、3月のプラス0.2%から4月に横ばいとなり、食品とエネルギーを除いたPCEコア物価指数の前年比が、3月のプラス1.3%から4月に同1.2%と勢いがなくなっているのも、GDPの動きと整合的と見ることができるだろう。

<懸念されるドル高転換の落とし穴>

このように今年9月に利上げすることが「確実」とは、とても言いにくい状況になっているのは明らかだ。足元でのドル高/円安は、米利上げが前提として完全に織り込まれている。この前提に「ひびが入っている」ことが、市場関係者の多くにわかるようになれば、ドル/円の基調が、ある日突然に逆方向に向かうことも、荒唐無稽と笑うことはできないだろう。

世界の金融・資本市場は米欧日を中心にした量的緩和政策に慣らされ、一方向に市場が動くことを「当然視」する風潮が知らぬ間に強くなってきた。

ところが、足元の欧州市場を見れば、ドイツの長期金利 が急上昇し、ボラティリティが急速に上がり出した。市場変動の波は、まず、欧州債券市場から発生し、その余波は4日の東京市場で長期金利 の0.5%への上昇として波及してきた。

大きな価格変動が、外為市場で発生しても何ら不思議ではない地合いが、いつの間にか整えられているように見える。

ドルの流れを変える大きな材料が、いつ表面化するのか──。それは「神のみぞ知る」ところだろうが、16、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のイエレンFRB議長の会見が、一段と注目されることになるのは間違いないだろう。

●背景となるニュース ・米景気低迷、一時的でない恐れ=ブレイナードFRB理事

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