Reuters logo
〔特集・TPP効果〕インフラ輸出の追い風に、資金面でAIIBが強敵
July 28, 2015 / 1:08 AM / 2 years ago

〔特集・TPP効果〕インフラ輸出の追い風に、資金面でAIIBが強敵

[東京 28日 ロイター] - 漂流しかけた環太平洋連携協定(TPP)交渉は、ようやくゴールのテープが見える最終局面に差し掛かった。日本国内では、コメや牛肉・豚肉の関税交渉に注目が集まるが、合意文書は31章にも及び、広範囲に最終合意の効力が及ぶ。果たしてどのような変化が起きるのか、その実態を探る。

<経済界は関税よりインフラ輸出に関心>

今月4日、東京・元赤坂の迎賓館で行われた日本とタイの首脳会談。安倍晋三首相とプラユット首相はがっちりと握手した。

この会談では、バンコク市内を走る都市鉄道・レッドラインに関する日立製作所 、三菱重工業 、住友商事 の3社連合と、タイ当局との価格交渉妥結を歓迎した。総額は324億バーツ(約1200億円)と、日本勢が手掛けてきたアジアの都市鉄道案件の中では最大級。

最近の日本企業は、携帯電話やパソコンなどを単発で輸出するのではなく、ソフト面やシステム全体の運用方法などのノウハウを含めたトータルな「ソリューションビジネス」を一括して売り込むスタイルが目立っている。その典型的な例が、鉄道インフラの輸出だ。

このインフラ輸出にとって、TPP合意は「大きなプラス材料」と経済団体関係者の1人は話す。

日本人の多くは、TPPというと関税の引き下げを連想するが、実は「モノの関税は既に相当程度下がっており、関心はそれほど高くないというのが本音」と、その関係者は打ち明ける。

それよりも取引ルールが統一され、さまざまな手続きが簡素化されることでモノや人の移動がスムーズになる効果の方が「はるかに期待が高い」という。

政府によると、インフラ輸出は2010年の10兆円から13年には16兆円へと増加。20年には30兆円に達することを目標に掲げている。

かつては大量に家電製品を輸出していた電機メーカー。ここでも輸出品は様変わりしている。パナソニック は、シンガポールの地下鉄向けに監視カメラ、ベルギー鉄道の運転手が携帯するためのタブレットを輸出した実績がある。

同社のモノづくりイノベーション推進室・企画課長の一力知一氏は「線路メンテナンス用にタブレット端末を作業員が所持し、画像やデータによってメンテナンス状況を送受信するシステムや、駅の大型情報スクリーンと連結したシステムの販売拡大を狙っている」と話す。

TPP合意が実現すれば「通信システムの企画の違い、申請手続きや窓口となる監督官庁の違いといった障壁の引き下げにつながる」と期待している。

重電が基幹ビジネスだった日立は、英国内で2014年─19年に合計1273両の車両を納入する。欧州での王者・シーメンス を追い抜き、英国でのシェアトップに躍り出た。

この上昇気流の中でのTPP合意は「さらに追い風になる」と日立関係者は語る。

<最後の決め手は低利融資>

ただ、残された問題も少なくない。最大の市場と期待される米国では「インフラ案件にバイアメリカン規定があり、TPP後も維持される公算が大きい。日本企業にとって、そちらの障壁の方が大きい」とあるメーカー関係者は話す。

また、新興国に鉄道インフラを輸出する場合、付随する多様なソフト、ハード面での協力が欠かせない。

メーカー関係者によると、相手国からは、鉄道の運行事業者の確保や、需要を予測した上でのダイヤ編成、採算が合う運賃の設定、沿線の開発計画といった日本における私鉄経営のノウハウ全部を含む総合プロデューサーの役割を要求される。

資金面も重要だ。大規模プロジェクトでは、相手国から建設資金の低利融資を求められる。その際、日本政府の協力が欠かせない。

国際協力銀行からの低利融資が引き出せれば、交渉を有利に運ぶ可能性が高まる。 あるメーカー関係者は「いかに円借款をつけるかが重要」と語る。だが、全ての案件に政府の協力を求めるのは難しい。

一方、中国政府が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は低利融資を活発に提供し、アジアにおけるインフラ整備を劇的に拡大させようとしている。

中国主導のプロジェクトにAIIBの低利融資が増え、新興国で中国企業連合が入札で勝利し続ける可能性もある──という懸念が、日米の企業関係者から漏れてくる。

TPP合意によって域内の非関税障壁が低くなり、サプライチェーンの構築が活発化し、財・サービスの成長が加速するのか。

それとも、AIIBによる低利融資にアジアを中心とした新興国が魅力を感じ、TPP加盟国の一角に中国がくさびを打つことになるのか。

インフラ輸出の今後は、TPP対AIIBの勢力図を予測する上でも、極めて重要な要素の1つになりそうだ。

中川泉 編集:田巻一彦

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below