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〔アングル〕ビール・飲料業界「値上げなき消耗戦」強まる価格志向が壁に

[東京 21日 ロイター] - ビール・清涼飲料業界が「値上げなき体力競争」に陥りつつある。原材料高や包装材などのコスト高、円安といった食品各社に共通する逆風に加え、同業界では消費者の価格志向の高まりや製品差別化の難しさなどが特に目立っており、価格転嫁に動きにくいためだ。構造的な低利益率が続く中、業界の疲労度は極限に達しつつあるとの見方も少なくない。

<価格で競えば業界は疲弊>

装置産業のビール業界は、売上高の確保・工場の稼働率向上が収益を左右する大きな要因となる。徐々に縮小している市場にあっては、販促費を膨らませてでもシェア獲得に動かざるを得ない面があり、利益なき競争に陥りやすい。

1―6月期に6年ぶりにシェアアップを果たしたキリンビールは、販売費の増加により、2015年12月期は営業減益を予想している。キリンホールディングス の磯崎功典社長は「シェアが落ちたものを上げるのは、かなり大きなエネルギーが必要になる」と述べ、販売費増加はやむを得ない状況と話す。一方、アサヒビールの小路明善社長は「価値による競争でシェアを取るべきで、条件で競うと業界が疲弊していく」と、警鐘を鳴らす。

ビール4社の本音は値上げ実施だ、と業界関係者は話す。ただ、「値上げしたい」と話すキリンHDの磯崎社長も「消費者のデフレマインドはまだ続いており、価格志向は強い。クラフトビールなど高付加価値商品も出しているが、主力商品の値上げはできない」とも述べている。同社は、2008年を最後にビールの値上げを実施できていない。

業界が価格是正のきっかけにしたいと目論むのは、近く実施が想定される酒税改正だ。ビール・発泡酒・新ジャンルの酒税を一本化する方向で検討がなされており、ビールは酒税引き下げが有力視されている。「ビールの減税幅よりも値下げ幅を小さくして、実質値上げという方法があり得る」(野村証券・藤原悟史ヴァイス・プレジデント)という。

<同製品でも海外より低い利益率>

多くのメーカーがひしめく清涼飲料業界は、ビール以上に価格下落圧力が強い。消費者物価指数(CPI)の個別項目でみると、2000年から下落が続いてきたのは清涼飲料。消費増税に伴って昨年4月以降ようやくプラスとなったが、プラス幅は消費増税の3%を下回っており、本体価格は実質値下がりしていることになる。

飲料総研(東京都新宿区)の宮下和浩取締役は「飲料はコモディティになっていて差別化が困難になっている。消費者がどの商品を買うか、価格がその大きな選択要因になっている」と指摘する。

飲料の中でも値下がりが大きいのは、ミネラルウオーターや茶飲料など、差別化が難しい商品。小売店では、2リットルのミネラルウオーターが100円割れで売られていることもある。

昨年4月の消費増税後、自動販売機に割高感が出て売り上げが落ち込み、自販機でも価格下落が起きている。野村証券の藤原氏は「飲料メーカーの収益性は限界にきている」と話す。

構造的な利益率の低さも、飲料業界を疲弊させている。水も果汁も炭酸も、同じ容量ならば同じ価格で売られる傾向にあり、原材料にコストのかかる商品は利益率が悪く、十分な利益を確保できない。

サントリーの人気商品「オランジーナ」は、日本での利益率は欧州より低いという。サントリーホールディングス の肥塚真一郎専務はその原因について「飲料も食品も、日本は全般的に安く売り過ぎている。同質的な競争が多いし、商品の設計もオーバースペックだ」と複数の要因を指摘する。

清涼飲料2位のサントリー食品インターナショナル の鳥井信宏社長は「商品構成も含めて、できるだけデフレ是正の方向で動きたい」と話す。単純な値上げは難しいなか、利益率の高い小型の容器にシフトしたり、フレーバー水のような、付加価値を付けた商品の比率を上げていくなどの工夫を行っている。

<下位メーカーの脱落、さらに続く可能性>

伊藤園 は2016年4月期、創業51年目にして初めて販売数量減(単体)の計画を打ち出した。広報担当者は「収益改善の方向性を明確に打ち出した。社内向けにも、無理に量を追うのではないというメッセージを込め、意識を徹底させる意味があった」と話す。

各社が打開策を模索する中、生き残るには一定の規模が必要として、業界10位だったJT は撤退を決めた。値上げがままならない市場で、販促費の多寡が優劣を決めるとなれば、下位メーカーから脱落する企業が出てくることは、今後も起こり得ると予想される。磯崎キリンHD社長は「中期的にみれば、再編せざるを得ない」とみており、様々な方法で時間稼ぎする中、業界内でも「抜本策としての再編」に期待は高まっている。 (清水律子 編集:北松克朗)

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