[ロンドン 29日 ロイター] - 医療情報サービス大手、米IMSヘルスは29日に発表した報告書で、バイオシミラー(生物学的製剤後続品)と呼ばれる、バイオ新薬の複製品の販売による米国と欧州5大市場での経費削減は、2020年までに額にして、最大980億ユーロ(1100億ドル)に上る可能性があるとした分析を公表した。
同社は一方で、こうした削減の実現には、効果的な医師教育と、医療提供者らの巧妙な市場アクセス戦略の採用が必要とも指摘した。
後発医薬品がオリジナル医薬品から市場を奪うのではないかとの懸念が投資家の間で高まっており、その多くは、ロシュ や米バイオ大手アッヴィ などの収益に影響が出ることを恐れている。
バイオシミラー専門家グループである韓国のセルトリオン などの新興バイオ企業や、ノバルティスグループ のジェネリック医薬品事業部門のサンドなど、ノウハウを有する大手ジェネリックメーカーにとっては、新たなビジネスチャンスでもある。
IMSによる最大980億ユーロの経費削減予想は、アッヴイ社のリウマチ治療薬ヒュミラと、ロシュ社の抗がん剤ハーセプチンを含む、大手メーカーが販売する8つのバイオ新薬の今後5年以内における特許保護の失効を念頭に置いたもの。
また、同予想ではバイオシミラーの平均値引き率を40%に設定しており、値引き率が30%、あるいは20%の場合、予想される経費削減額はそれぞれ740億ユーロと490億ユーロまで低下する。
今回、IMSの調査対象となった市場は、ドイツ、フランス、イタリア、英国、スペインと米国。
ここ2年間でバイオシミラーに対する関心が著しく高まったのは、世界最大の売上を誇る処方薬を含む、抗体医薬品の複製品が登場したためだ。
欧州は10年前にバイオシミラーを最初に認可した市場だが、その利用はまだ国や地域市場の状況によって大きく異なる。
IMSによると、ドイツはバイオシミラー処方の奨励で特に成功してきたが、オーストリアでは、特定のバイオシミラーに対し、当局が強制的な値引きを要請したため、市場から撤退するメーカーもあったという。
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