[東京 18日 ロイター] - 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の会長を務める尾身茂・独立行政法人地域医療機能推進機構理事長ら専門家は18日、東京五輪・パラリンピックでの感染拡大を予防するため取りまとめた提言について都内で会見した。提言の理由について尾身氏は、感染が再拡大するリスクがあると強調し、五輪開催中に中断するようなことがないよう、必要ならば強い対策を躊躇(ちゅうちょ)なく打って欲しいためだと説明した。
<東京五輪開催、国際公約となったため中止は提言せず>
尾身氏は五輪開催の中止を提言しない理由について、菅義偉首相が主要7カ国首脳会議(G7サミット)で開催を約束し、国際公約となっているためだとし、一時は中止を選択肢とするよう提言する案もあったが、結局盛り込まなかったと説明した。
尾身氏は、国際公約は守るのが当然との見解も示した。
尾身氏は、五輪開催期間中であっても、医療がひっ迫する可能性があれば躊躇なく強い対策を当該地域で取ってほしいと訴えた。医療の逼迫の可能性を判断する具体的なタイミングとして、病床が満杯になる2週間前との見解を示した。
提言では、感染再拡大のリスクが複数ある中で「無観客が最もリスクが低く、望ましい」との見解を示し、観客を入れる場合でも「感染拡大・医療逼迫の予兆が察知された場合は無観客とすること」なども盛り込んでいる。
尾身氏は、五輪と野球やサッカーとでは規模や注目度が異なるとして、会場の観客数制限について、上限1万人など、政府が示した大規模イベントの基準を「当てはめるのはやめて欲しい」と訴えた。
尾身氏は国民のコロナ疲れに言及し、国や自治体が外出自粛(ステイホーム)や飲食店の営業時間短縮を要請しても「国民の心に響かない」と指摘。ワクチン接種が広く普及するまでの感染防止策として、情報技術(IT)などを活用した新機軸を打ち出すよう求めた。
一例として、保健所の感染情報連絡が手書きのため、首都圏など都市部での感染履歴の追跡が難しく、感染者数の下げ止まりの要因になっているとの見解を示した。
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」