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〔クロスマーケット〕「異次元」の米起業増、コロナ後見据え 日米市場の差に

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[東京 30日 ロイター] - 米国の起業件数が「異次元」のペースで増加している。環境面の整備や政策効果もあるが、新型コロナで大きく変化する経済や社会を見据えた新会社の設立が増えている。日本の起業も足元で増えているものの、停滞した昨年の反動にすぎない可能性も大きく、株価などの日米格差がますます拡大するとの懸念も出ている。

<米起業は政策も後押し>

米国勢調査局が新規会社登録を基に算出した米起業件数は、今年1─5月の累計で前年同期比72.2%増の236万件。同期間の過去10年間平均の約123万件を100万件以上、上回るペースとなっている。

コロナで落ち込んだ反動ではない。2020年は年間で434万件と19年比で24%増加し過去最高を記録。今年はその昨年をさらに大きく上回るペースで伸び続けており、このままなら年間で566万社が米国で生まれる。

業種別でみると、宿泊・外食や、輸送・倉庫などが目立つ。観光・外食の回復や、在宅スタイルが定着し、通信販売が増加していることが背景だ。医療ベンチャーや航空会社なども多い。「コロナ後の世界」を見据えた起業が増えている。

米国ではコロナ禍で約2000万人が失業し、現時点で約1300万人が再び職を得ている。米国勢調査局の統計には、失業後にフードデリバリー業などに転じた個人事業者もカウントされるが、環境面や政策の後押しも大きいとみられている。

「Fiverrなどフリーランスの起業を助けるアプリが普及し始めたほか、低金利や銀行の融資条件の緩和、政府の支援策なども起業促進の要因だ」と、双日総合研究所の安田佐和子上級主任/研究員は指摘する。

米国では、コロナ禍対策として成立した景気刺激策でも、給与保証プログラム(PPP)などスタートアップ企業が利用できる制度があるが、PPPは今年5月に受付が終了。FRB(米連邦準備理事会)も金融正常化方向に姿勢を変化させ始めている。6月以降も5月までの急増ペースが続くか注目される。

<反動にとどまる日本>

日本の起業件数も伸びている。帝国データバンクによると、日本の新設法人数は1─5月では前年同期比13.5%増の6万1017件。特に4月が同39.2%増、5月が同20.8%増と、足元での伸びが目立つ。

ただ、日本の場合は、昨年の反動の面が大きい可能性がある。東京商工リサーチの調査では、2020年に新しく設立された法人数は前年0.1%減の13万1238社。情報通信業や運輸業などが増えたが、宿泊業や飲食業が落ち込んだ。

一方、2020年度の休廃業・解散(東京商工リサーチの調査)は、前年比14.6%増の4万9698社、倒産は同7.2%減の7773社で、コロナの影響で事業を止めた企業が多かった。

「日本のコロナ対策は現金給付など止血策がほとんどで、起業促進の対策は乏しい。日本の起業も増えているが米国とは比べものにならず、このままでは日米の競争力の差になって将来表れる」と、りそなアセットマネジメントのチーフ・エコノミスト、黒瀬浩一氏は懸念する。

<求められるイノベーション>

長期的にみると、日本は起業率も低いが、廃業率も少ない傾向がある。中小企業白書によると、2019年度で開業率が4.2%、廃業率が3.4%。各国でデータのとり方は異なるが、米国は9.1%と8.5%、英国は13.5%と11.3%だ。

第2次安倍政権発足当初に策定された「日本再興戦略2013」では、企業の開業率・廃業率を米英並みの10%へ引き上げると公約されていた。産業や企業の「新陳代謝」によって成長力を高めるのが目的だったが、目標には依然遠い。

科学技術・学術政策研究所の「科学技術指標2020」は、米国のCB Insightsの調査を基に世界のユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の未上場企業、2020年6月16日現在)のデータを出している。米国の225社と中国の121社が抜きんでており、日本は3社にすぎない。

日経平均は年初来高値に届いていないが、米国のナスダックやS&P500は最高値水準だ。起業率と株価との相関は、期間によって異なるものの、日米株の差は企業の競争力の差が一因との見方は多い。

体力に乏しい零細企業が増えれば、不況期に倒産が増加しやすくなるため、開廃業率を高めればいいと一概にはいえない。学校や制度など再就職を容易にするインフラの整備も必要だ。しかし、経済におけるイノベーションを伴う起業の重要性に異論はないだろう。

(伊賀大記 グラフ作成:照井裕子 編集 橋本浩)

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