[東京 2日 ロイター] - 三菱電機の杉山武史社長は2日午後、鉄道車両用空調装置などで不正検査が判明したことを受けて会見し、辞任を表明した。不正検査が30年以上続いていたことから「組織的な不正行為だったと認めざるを得ない」と述べた。調査結果と再発防止策を9月に公表する。
杉山社長は「信頼を大きく毀損し、責任を痛感している。私が社長を辞し、新たな体制で信頼回復に取り組むことが必要と判断した」と語った。速やかに後任選びに入るとした。辞任の時期については「取締役会で後任を決める。いつかは言えない状況」としたが、次の社長は今月中をめどに選びたいとも述べた。
杉山社長は過去の品質問題で点検を指揮してきた。今回、35年に渡って品質不正が続いていたことを「ものすごく大事なことが欠落していた」と認識、昨晩辞任を決意したという。
三菱電機を巡っては、鉄道車両用の空調装置やブレーキ、ドアの開閉に使う空気圧縮機ユニットの一部で不正検査が行われていたことが明らかになっている。安全性や性能には問題がないほか、事故は確認されていないとしている。
検査の不正は35年にわたり続いていた。同社によると、不適切検査が行われていた1985年から2020年までに空調装置は8万4600台が約80社へ、空気圧縮機は1500台が約20社に出荷されている。
検査の不正には、数値を偽装する専用プログラムが使われていた。このプログラムは、1990年から使用されていたことが分かっているという。このプログラムについて、杉山社長は「偽装ととらえざるを得ない」と述べた。一方で、福嶋秀樹常務は、今回の事案は契約に関する問題であり、「法令違反になるものはない」との認識を示した。
不正については、課長クラスまでは認識していた人がいたが、経営トップマネージメントまでは伝わっていなかったという。
空調装置の不正が分かったのが6月14日だったにもかかわらず、29日に開いた株主総会では一切説明がなかった。総会前日の28日に空気圧縮機にも不正検査が発覚したこともあり、杉山社長は「(事実調査が)不十分な状態で株主総会で話すことはふさわしくないと判断した」と説明。しかしながら、経済産業省などには説明を行っており、「株主総会で情報を出さなかったのは反省すべき点があった。株主総会で話すべきだった」と反省を口にした。
三菱電機は9月に検査不正に関する調査結果と再発防止策を公表する。社長を室長とする緊急対策室を同日付で設置する。次期社長が選任されるまでは、杉山社長が緊急対策室を動かすことになる。また、社外弁護士を委員長とする調査委員会を設け、監査委員会と連結しながら、社外の視点を取り入れた実態解明を実施するとしている。
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」