November 26, 2013 / 5:17 AM / 7 years ago

〔焦点〕イラン核協議の歴史的合意、中東のパワーバランス再編も

[ドバイ 24日 ロイター] - 核開発問題をめぐりイランが欧米など6カ国と歴史的な合意に達したことで、中東における力のバランスは、相次ぐ反政府デモで弱体化したアラブ諸国から、イランへと大きく傾く可能性がある。

今回の協議は、長く対立してきた米国とイランの雪解けへ道を開くものとなった。一方で、イスラエルやアラブ諸国などは、自国の利益と深く対立するイランの覇権国化を強く警戒している。

これまで西側諸国がイランの核兵器開発につながるとしてきたウラン濃縮活動は制限されるが、この合意は中東における武器の拡散という問題をはるかに超える影響を持っている。

イランを地域のトラブルメーカーとみなすアラブ諸国、そして自国の存在を脅かす存在とみなすイスラエルにとっては、米国への説得が失敗に終わったことを意味する。

合意に批判的な見方をする関係者は、経済制裁が緩和されるイランが経済的にも政治的にも勢いを取り戻し、アラブ諸国のシーア派支援を一層強化するだろうと指摘する。

一方、合意に好意的な見方をする関係者は、長年敵対関係にあった米国とイランの関係修復は地域の安定化につながり、シーア派とスンニ派の宗派対立も緩和すると話す。

<歴史的な過ち>

エジプトやシリア、イラクといった歴史的覇権国がいずれも反政府デモや宗派対立により弱体化した中、外交面で成果を残したいオバマ政権にとって、イランとの関係改善は魅力的な政策課題として浮上した。

ベイルート・アメリカン大学のラミ・コーリー氏は今回の合意について、最終的にはイランの聖職者指導部と、米国の同盟国であるアラブ諸国の関係回復につながるものとして評価する。

コーリー氏は、イランに対する制裁が緩和され、経済が回復していけば、同国で自由化運動がふたたび息を吹き返し、徐々に社会や政治における発展がみられるのではないかと分析する。

またコーリー氏は、短期的には米国とイランが協力してシリアの内戦停止に向けた動きを加速させていくとも指摘。「シリアで勢力を伸ばしているスンニ派の武装勢力は、イランだけでなく米国も標的にしている。米国とイランにとって共通の敵だ」と述べた。

専門家らは、アラブ諸国の中で反イランの立場をとる国々が外交や安全保障分野の政策をつなぎ合わせて、イランへの対抗措置を取っていくものとみている。

イスラエルのネタニヤフ首相は今回の合意について「歴史的な過ち」だと一蹴。「世界で最も危険な政治体制が、最も危険な兵器の獲得に向けて極めて重要な一歩を踏み出した」と述べた上で、イランに対する軍事行動の可能性を再び口にした。

湾岸諸国の懸念の核心にあるものは、イランの穏健派が核交渉を担う一方で、スンニ派のアラブ諸国に対し様々な工作を行う強硬派が別にいるということだ。強硬派は依然としてイラン革命防衛隊や諜報機関といった機関を支配している。

湾岸諸国はイランによる影響力の最たる例としてシリアを挙げる。シリアのアサド大統領はシーア派の分派であるアラウィ派に属し、湾岸諸国が支援するスンニ派の反体制勢力と2年半もの激しい内戦を繰り広げている。

サウジアラビア政府に近い高官筋はロイターの取材に対し、シリアやイエメン、バーレーンへの介入を続けるイランに対するサウジ王家の態度は「疑念」そのものだと語った。

<スンニ派諸国への介入>

米国とイランの政府高官の間で交わされた協議の内容は現在のところ明らかになっていない。しかしそれが今後明らかとなれば、米国の「裏切り」を懸念する湾岸諸国指導者の警戒心を一層高めるかもしれない。

湾岸諸国の多くは、米国の対イラン関係改善に向けた原動力はビジネスにあるとにらんでいる。サウジ海軍の退役軍人で、現在は新聞で解説者を務めるアブドラティフ・アルムルヒム氏は、イランには英米の石油企業に巨額の利益をもたらす可能性があるインフラ再建需要があると指摘。「米国にとって魅力的な市場だ」と語る。

また、国内のシェールガス開発が進んでいるため、米国は海上輸送される原油の40%が通過するホルムズ海峡の安全に、以前ほど積極的に関与しないのではないかとする見方もある。

湾岸諸国会議(GCC)の安全保障顧問を務めるサミ・アルファラジュ氏は、イランの野心再燃に対して適切な防衛措置が講じられるよう、外交面と安全保障面で取り組んでいると語った。

<アサド大統領にもメリット>

米国とイランの関係改善は、シリアのアサド大統領にとってもメリットになるかもしれない。オバマ政権の数少ない外交成果を守るべく、米国がなりふり構わずイランとの関係改善に向かうとみる専門家もいる。

ブルッキングス・ドーハ・センターのシャーディ・ハーミッド氏は、イランがアサド政権を支援しても、核交渉が続く間は米国も強硬な態度には出ないだろうと指摘。「そしてアサド大統領もまた、世間の注目がイランに向いていることを隠れ蓑に、やりたいようにやれるだろう」と語る。

英国際戦略研究所のエミール・ハケーム氏は、イスラエルと湾岸諸国がイランという共通の敵を抱えていても、協調行動に出る可能性は低いとみる。

ハケーム氏は、イスラエルや湾岸諸国が個別に米議会に向けた発信を強化するかもしれないが、直接的な協力関係が高まりを見せるということはないだろうと指摘した。

(Erika Solomon記者、Rania El Gamal記者、Dan Williams記者、Maayan Lubel記者 翻訳:新倉由久 編集:宮井伸明)

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