March 27, 2014 / 2:32 AM / 6 years ago

〔消費増税〕小売業界で一気にシェア拡大狙う企業も、価格競争厳しい日常品カギに 

[東京 27日 ロイター] - 8%への引き上げとその先に見える10%──。2度の消費増税は、個人消費の最前線である小売業界の勢力図を塗り替えるパワーを秘めている。2極化消費を使い分ける消費者によって価格面での厳しい選別を受ける食品や日常品。コモディティ商材と言われるこの分野での収益が、優勝劣敗のカギを握りそうだ。価格を武器に消費者の取り込みに成功した企業の前には、シェア拡大によって業界再編の主導権を獲得するという大きな道が開けている。

  <価格競争トリガーに、優勝劣敗鮮明化へ>

「日本の小売り業界はオーバーストア。需給がミスマッチであることは否定できない。消費増税は再編を加速させるトリガーになる可能性がある」と、ドン・キホーテホールディングス の高橋光夫CFOは予想する。消費増税をきっかけに再編が加速すると予想されるのは、食品など日常品を扱う小売業だ。

みずほ総合研究所の試算によると、消費税率が8%に引き上げられると年間の家計負担は、年収300万未満の世帯では平均5万7529円、1000万円以上の世帯で同14万2147円増加する。

春闘では想定以上にベースアップに踏み切る企業が多かったものの、可処分所得の減少をカバーできるか、消費マインドの冷え込みに歯止めを掛けられるのかどうかは不透明だ。

同じ商材ならば、少しでも安い所で買うという消費者の行動は、デフレであろうが、インフレだろうが変わらない。「醤油は醤油、味噌は味噌」(業界関係者)と差別化が難しい中で、価格で勝負せざるを得ず「過去に繰り返してきた不毛な価格競争に突入する」(同)と、予想する声は多い。

加えてドラッグストアが食品の取り扱いを強化、コンビニが生鮮取り扱いを拡大するなど業態を超えた競争も激しくなっており、従来型の総合スーパー(GMS)や食品スーパーは、異業種の参入で激烈な競争に巻き込まれている。

  <レガシーが大きな負担>

厳しい価格競争が進む中で、それを攻めのチャンスととらえる企業もある。「消費者の価格への意識が強まり、安さを武器に、一気にシェアを拡大させようと狙っている企業はある。市場が寡占化しておらず、規模が3倍にも4倍にもなる可能性のある業界は、仕掛ける企業が出てくる」(ドイツ証券シニアアナリスト、風早隆弘氏)という。

風早氏は、フード&ドラッグ関連の業界において、出店が規模拡大、集客、コスト低減に直結する企業はシェア拡大のチャンスが増す一方で、再編の可能性も高まるとみる。

日本は欧米各国に比べて消費税率が低い。世界の小売業の売上高ランキングを見ると、上位10社のうち6社がディスカウント業態で占められている。消費者の負担増となる今回の消費増税を機に、日本でもディスカウント業態が台頭すると予見する業界関係者は多い。

米ウォルマート 傘下の西友は、構造改革を終え、攻めに転じている。「通常のスーパーは特売のために広告や人手を掛けているが、西友はその分を価格引き下げに使い、それで売り上げを伸ばし、バイイングパワーを強め、さらに価格引き下げ余力を増す」(冨永朋信執行役員)──。

世界中でウォルマートが行っている手法を日本でも本格的に導入しているほか、グローバルな調達網を武器に「EDLP(everyday low price)」を強化する。

業界関係者によると、最近の流通業界のM&Aのなかには、ウォルマートが買い手として興味を示した案件も少なくないという。店舗増も含め、日本での攻勢を強めるチャンスを虎視眈々と狙っている。

ドン・キホーテも、積極出店に打って出る。昨年12月末時点で主要3業態の店舗数は約230店舗。これを2020年までに400店舗に拡大させる計画だ。消費増税は、これ以上の出店をも可能にするチャンスととらえている。「生活必需品は価格差が注目され、ディスカウント業態に支持が集まるのは当然。価格競争力があり、ローコストオペレーションでシェアは拡大できる」(高橋CFO)と自信を示すほか、M&Aの機会があれば「積極的に参画したい」(同)と意欲的だ。

EDLP実現には、EDLC、つまりローコストオペレーション作りが最も重要となる。アジアという生産地をうまく活用するだけでなく、物流や店舗運営の効率化が重なって成り立っている。多くの店舗を抱える中で、収益が落ち、投資ができず、活性化や効率化が図れないという悪循環に陥っている企業とは、歴然とした差が出ることになる。ダイエー は、こうした悪循環を断ち切るためにイオン 傘下に入り、駅前立地の店舗の改装を進めている。

  <安さ以外の価値提供できるか>

岡田元也イオン社長は「前回の増税と違うのは、1億総中流の社会が消え、2極化になること。増税があまり関係のない消費者と、それがシビアな消費者と2通りになる」と指摘する。価格競争だけでは消耗戦になることは明白で、高付加価値化の部分をどのように広げるかが各社の課題であり、利益の源泉にもなる。

流通経済研究所研究員の松本敬介氏は「安売りをしないでいかに儲けるかを考えるところが一歩先を行く企業。だが、その手法は限られており、多くの企業はできない」と指摘する。独自性を出すひとつの方法が、プライベートブランド(PB)による高付加価値化だ。イオンもグループPB「トップバリュ」において、高付加価値の「セレクト」と低価格の「ベストプライス」の両方を強化し、2極化消費の両方を獲得する方針を打ち出している。

セブン&アイ・ホールディングス グループのPB「セブンプレミアム」は、高付加価値化を打ち出し、多くのヒット商品を生み出した。安いイメージが強かったPBを高付加価値化しても受け入れられたのは、「セブン―イレブン」の1万6000店の店舗網効果があったことは見逃せない点だ。「24時間営業」と「近くにある」というコンビニの特性が、さらなる価値として付加された。日常の買い物が中心となる小売店で高付加価値化商品が受け入れられるには、一層の独自性が求められることになる。

ただ、PBは一定規模が必要となるため、中小小売りにとって、徹底したPBを作り込むことは難しい。松本氏は「大手のPBを導入するしかない、という例も多くなるだろう」とみており、引き続きPBがグループ化・再編の要になる可能性を指摘している。

女性の社会進出、単身者の増加、時間を大事にする消費者の増加など、足元で消費構造を変えてきた消費者の動きに焦点を当てた付加価値化商品も、各社が強化に動いている。 (清水律子 編集:田巻一彦)

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