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再送-〔焦点〕「2年で2%」の修正提言相次ぐ、財政状況が物価に追い付かず
2014年7月14日 / 05:58 / 3年後

再送-〔焦点〕「2年で2%」の修正提言相次ぐ、財政状況が物価に追い付かず

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[東京 14日 ロイター] - 供給力低下で物価上昇ペースが予想より早まる気配が出てきた中で、2年で2%の物価上昇を目標にする日銀の量的質的金融緩和(QQE)に対し、金融政策に詳しい民間識者の一部から、より長期間での達成へと切り替えるべきだとの声が相次いでいる。1000兆円を超える債務残高を抱える日本にとって、速過ぎる物価上昇は長期金利の上昇を招き、歳出増につながるとの懸念があるからだ。政府・日銀にとって、物価・金利と、成長・税収のバランスが取れるよう、いかにソフトランディングさせるかが、この先の最大の課題となりそうだ。    <2%接近で高まる金利上昇への懸念>

7月上旬に都内で開かれた野村総研の金融市場パネル。そこでみずほ総合研究所・常務執行役員の高田創氏は「物価が2%目標に近づくタイミングでは、市場との対話により金利上昇に猶予期間を用意すべきだ」と表明。同氏は「財政と銀行が金利上昇に耐えうるように、体質改善することがポイントになる」と説明した。

東短リサーチ社長の加藤出氏も、出口戦略で先行する米国、英国でもいきなり国債を売却して長期金利の上昇を受け入れるという事態を回避する方向に議論が進んでいると指摘。「国民のためには、2年で2%の達成にこだわらなくていいのではないか」と提言した。

物価目標達成期限を来年に控え、日銀が約束通り2%に到達させたとしても、財政や経済には金利への耐性が備わっていないため「QQEの出口を先延ばしすべきだ」との議論だ。

消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)の上昇率が、まだ1%強の段階でこうした議論が活発化している背景には、人手不足による供給力低下が鮮明となり、この先も景気にかかわらず、物価上昇につながりかねない構造変化が起きているためだ。

一方で、財政再建は遅々として進んでいないという現実がある。物価が成長力強化に先んじて上昇すれば、歳出増加や金利上昇に伴う利払い費増など財政再建とのバランスが崩れかねない。

実は物価上昇自体が財政再建を遅らせる面もあり、QQEが始まる前から政府内でも議論されてきた。

2年前に内閣府に設置された「経済成長と財政健全化に関する研究」(岩田一政座長)でも、物価上昇によって基礎的財政収支は改善するとは限らず、国の一般会計はむしろ悪化する可能性が高く、実質成長こそが基礎的財政収支改善への寄与が大きいとの内容を含む報告を行っている。

今年度のように民間予測で1%にも満たない低成長下で物価だけが上昇すれば、基礎的財政収支の黒字化目標は一段と遠のきかねない。

2014年に内閣府が試算した中長期の財政試算では、実質成長率を2%としたケースでさえ、物価が2%程度、金利が2%へと上昇すると、国債費も含めた財政収支は赤字幅縮小どころか拡大が止まらなくなる、との結果になった。

こうした物価上昇が現実味を帯びてきた状況下で、政府内からもこれまでと違ったメッセージが出ている。内閣官房参与の本田悦朗静岡県立大学教授は、9日のロイターとのインタビューで、2%目標の看板は降ろさない方が望ましいが、「(物価上昇が)1.5%でも不都合はない」と述べ、追加緩和については「今のところやる理由はない」と明言した。

  <物価上昇は財政再建目標も阻害> 

それでも今のころ、長期金利が落ち着いているのは、いくつかの理由がありそうだ。1つは、当面2%という日銀の物価目標を安定的に達成するのは難しいとみている市場参加者が多いことだ。

もう1つは、財政再建がままらない中で物価目標の達成だけを理由に、QQEからの出口に移行し始めることは想像できないとみている向きが多いという事情もある。

日銀は現時点でQQEを変更することは考えておらず、中曽宏副総裁も今月8日の講演で「今後も2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、量的質的金融緩和を継続していくことが重要」と述べている。

ただ、日銀内でも来年のどこかで消費者物価が1%台後半に届き、2%をうかがう展開となるとの声がある。物価が2%で安定した段階では、いつまでも異次元緩和を継続することの難しさから、どのような政策の選択肢があるのか、水面下での「頭の体操」も展開されているもようだ。

  一方、日銀が国債を購入し続けること自体、財政規律を緩めることになるとの見方が根強くある。

キヤノングローバル研究所の特別顧問・須田美矢子氏(元日銀審議委員)は、先の金融市場パネルで「物価目標達成のがい然性高まったときにイグジットできなければ、財政ファイナンスとの評価になる。信頼に足る財政再建計画が必須だが、日銀が節度を緩めている自覚が必要だ」と語っている。   

このように、民間識者からは物価上昇や金利上昇に耐えうる経済成長と財政改善の両輪が伴っていることの必要性に注目する見解が広がっている。

黒田東彦総裁をはじめ日銀幹部が口をそろえて、労働投入、資本ストック、生産性の引き上げと供給力の強化を強調し、潜在成長率引き上げの重要性を説くのも、ある意味で民間識者と共通の問題意識があるためとみることがきでる。

物価が2%に近づいていく局面で最大の課題は、物価・金利と、成長・税収のバランスが取れるよう、いかにソフトランディングさせるか──という点だ。バランスのとれた経済成長に向け、直面すべき課題も次第に鮮明になってきそうだ。 (中川泉 編集:田巻一彦)

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