July 25, 2014 / 4:33 AM / 5 years ago

COLUMN-上半期2つの数字、貿易赤字と訪日外国人数が語る未来図

田巻 一彦

[東京 25日 ロイター] - 2014年上半期の貿易赤字が過去最高の7兆5984億円になった。一方、同じ時期の訪日外国人数が過去最高の626万人にのぼった。この2つの数字から浮かび上がることは、国内製造業の空洞化とそれを埋めるヒントが外国人観光客にあるということだ。国内観光を振興するだけでなく、購買傾向から「ヒット商品」を生み出すことが可能になり、それが新しい産業を生み出す力になると予想する。

  <輸出不振に自動車の陰>

貿易赤字の急増には、原子力発電所の休止によるエネルギー輸入の増加だけでなく、輸出の低迷が大きな要因として存在する。

政府・日銀はいずれ輸出は回復するとの見通しを維持しているが、6月は前年比マイナス2.0%と落ち込んだ。東南アジア諸国(ASEAN)経済の減速などが影響しているようだが、詳細にみると別の姿も浮かんでくる。

例えば、対米自動車輸出は米自動車市場が活況にもかかわらず、減少傾向が続き、6月も前年比7.5%減となった。

この背景にあるのは、ホンダ 、マツダ などのメキシコ工場が今年初めから本格稼働し、輸出拠点になっていることだ。野球に例えれば「四番打者」の自動車の国内生産能力の低下は、世界景気が回復しても、輸出が増えない可能性を強く示唆している。

かつての主軸・電機は、すでに輸出産業の座から滑り落ちており、輸出のエンジンは、外側からの見た目に比べ、かなり出力ダウンしているのが実態だ。

ここで市場の一部には、自動車メーカーなどは連結ベースで利益を出しているのであるから、貿易赤字を悲観することはない、との声も出ている。確かに株価から見れば、そういう結論になっても不思議ではないが、国内の雇用という面からみれば、生産設備の海外移転は、決して楽観できない点を含んでいる。

  <訪日外国人からのプレゼント>

それでは、打つ手はないのか──。そこで注目すべきは、もう1つの今年上半期のデータである訪日外国人の増加ぶりだ。政府は2020年の東京オリンピックを1つの目標として、年間の訪日外国人数を昨年の1000万人から2倍の2000万人に引き上げようとしている。

外国人観光客の増加は、国内観光産業に関連する雇用を増加させ、関連する生産の引き上げに大きな影響を与える。

特に高齢化を背景にした人口減少に悩む地方経済にとって、美しい環境は貴重な観光資源になり、再活性化への大きなきっかけをつかむことになるだろう。

外国人観光客増加の効果は、実はそれだけにとどまらない。米国のビッグデータ活用などに詳しいエコノミストの斎藤満氏は、訪日外国人が国内で購入した物品の傾向を分析することで、新しいヒット商品を見つけ出すことができ、それをきっかけに新たなビジネスが生まれる可能性が高まると指摘する。

訪日外国人の購買データを集積できれば、個々の企業がわざわざ、NYやパリ、ロンドンなどにアンテナショップを作って、試験的なビジネスをする手間を省くことができる。

また、斎藤氏は「米国に比べて遅れているビッグデータ集積と解析システムの構築、そのデータをビジネスに活用するノウハウの大きな習得チャンスになる」と指摘する。

 外国人への販売が伸びることは、見方によっては「輸出の増加」と捉えることもできる。また、日本で購入した高級な果物の人気が海外で広がれば、それを捉えて輸出増加の計画を展開することもできる。

訪日外国人の増加は、「一石何鳥」にもなり得る「宝の山」と言っても言い過ぎではないだろう。

経済のグローバル化と企業の多国籍化が急速に進んできたこの10年、国家や政府という概念とのズレが、かつてないほどに顕在化してきた。貿易赤字の増大と好業績の輸出企業の共存は、そのことを浮き彫りにした。

だが、国家の枠組みから簡単に離脱できない国民のベースでは、雇用の減少は大きな脅威だ。その穴を訪日外国人の増大をきっかけに埋める方向になれば、「暗い未来」ばかりを想定せず、「明るい将来」を展望するきっかけになると指摘したい。

●背景となるニュース ・貿易収支、上半期の赤字が半期ベースで過去最大=財務省

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