[ワシントン 26日 ロイター] - 2016年次期大統領選で民主党の有力候補と目されているヒラリー・クリントン前米国務長官だが、石油・ガス事業者らとのつながりが指摘され、民主党支持者が多く所属する一部の環境団体は同氏への支持表明にジレンマを感じている。
ヒラリー氏はまだ大統領選出馬を公式には表明していないが、出馬を表明すれば、民主党の候補指名を大差で獲得するとみられている。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、クリントン一家が設立した「ビル・ヒラリー・アンド・チェルシー・クリントン財団」と「クリントン・グローバル・イニシアチブ」がエクソン・モービル やシェブロン などの石油大手から多額の寄付金を受け取っていたと報道。ヒラリー氏の環境に対する取り組みに厳しい視線が注がれている。
このほか、世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアや、原油パイプライン「キーストーンXL」の推進活動部門であるカナダの政府機関などが、財団に資金を提供したことも明らかになった。「キーストーンXL」はカナダのオイルサンドを米メキシコ湾岸の製油施設に運ぶ計画だが、環境活動家らが反対を表明している。
米国で最大規模の環境団体「フレンズ・オブ・アース」のベン・シュライバー氏は、寄付を提供する側は何も受け取らずにただ寄付を行っていると考えてはいないだろう、と述べた。
財団側は、ヒラリー氏が出馬を表明すれば、海外から受ける寄付にかかわる方針を見直すとしている。
財団と石油業界とのつながりは、ヒラリー氏と環境団体との関係を複雑化させる可能性がある。環境団体のメンバーらは民主党の支持基盤で重要な位置を占めているほか、次期大統領選で気候変動は大きなテーマとなることが予想されている。
多くの環境活動家が関与するという団体「350アクション」の広報担当を務めるジェイミー・ヘン氏は、ヒラリー氏が気候変動政策で矛盾するような姿勢を示せば、進歩的な有権者の支持を失う可能性もあると指摘する。
<フラッキング推進の理由>
ヒラリー氏の「キーストーンXL」建設への支持に対し、多くの活動家は警戒的な姿勢を崩していない。ヒラリー氏は2010年に同パイプラインの建設を承認する考えに「傾いている」と述べた。
WSJの報道によると、エクソンは2009年から「クリントン・グローバル・イニシアチブ」に約200万ドルを、シェブロンは13年にクリントン財団に25万ドルをそれぞれ提供した。2社は寄付が数多くの社会プログラムの支援のために行われたと説明している。
ヒラリー氏は、環境面などでの悪影響が懸念される、水圧破砕(フラッキング)技術の他国への拡大も支持している。同氏を擁護する環境活動家らは、その理由として米国の戦略的利益を挙げる。
自然保護を掲げる団体「League of Conservation Voters」のダニエル・ワイス氏は、東欧での天然ガス生産にフラッキング技術を紹介することは国家安全保障に関連しているとし、東欧諸国のロシア産ガスへの依存度を減らす目的があったと指摘した。
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