[ニューヨーク 28日 ロイター] - 米国株が最高値を更新する中、一部の投資家は、バリュー(割安)株が今後の上昇をけん引すると見込んでいる。
景気に敏感で、通常グロース株(成長株)に比べて株価収益率が低いバリュー株は、3月以降の株価上昇の中で出遅れが目立っていた。
一部の投資家は、始まったばかりの米景気回復が加速すれば、エネルギー、銀行、工業分野の複合企業などを含むバリュー株がその割安感から市場のけん引役に躍り出て、新型コロナウイルス感染拡大の中で上げを主導してきたハイテク関連の大型株から関心がシフトするとみている。
ラッセル1000バリュー株指数の株価収益率は約18倍と、1年前の14倍から上昇し、3月下旬からは約45%上昇。一方、ラッセル1000グロース株指数の株価収益率は1年前の22倍から31倍に上昇、3月下旬以降では70%超上昇している。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が27日、インフレ抑制より雇用最大化に重点を置く新戦略を発表したことは景気回復期待への追い風となり、ウェルズ・ファーゴやシティグループなどの銀行株が買われた。
31日からの週は、景気の回復状況の手がかりとして9月4日発表の米雇用統計に注目が集まる。
新型コロナワクチン開発を巡る動きも、バリュー株復活を見込む理由の1つとなっている。ワクチン接種が可能になれば、全米で経済活動の再開が加速し、学校の対面授業再開が可能になるとみられている。
ゴールドマン・サックスなど一部のアナリストは、早ければ今年末にもワクチンが承認されると予想している。
ゴールドマンのアナリストは今月、ワクチン開発を巡る明るいニュースが続けば、S&P総合500種は年末までに3700に上昇し、バリュー株への循環が進む可能性があると指摘した。
一方で、バリュー株の早期復活に懐疑的な見方も少なくない。
小売りなどバリュー株の一部業種は業績が低迷し、ハイテク社会への移行の中でビジネスモデルの転換を迫られる中、苦境が続いている。
リチャード・バーンスタイン・アドバイザーズの最高経営責任者(CEO)兼最高投資責任者(CIO)、リチャード・バーンスタイン氏は「割安感だけで株価が上がるわけではない。割安感とファンダメンタルズ改善の両方が必要だ」と指摘。「バリュー株がアウトパフォームするためには通常、利益の伸びの加速が必要だ。それはまだ起きていない」と話した。
バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチは、過去14回のリセッション(景気後退)で毎回バリュー株が回復を主導したと指摘する。
同時に、割安な銘柄がそのまま放置される「バリュートラップ(割安のわな)」についても警告し、こうした銘柄は1997年以降、市場全体を年4%ポイントほどアンダーパフォームしてきたと分析。バリュートラップが見られる業種として、エネルギーや実店舗を運営する小売りを挙げている。
ボケー・キャピタル・パートナーズのCIO、キム・フォレスト氏は、バリュー株復活は過去の現象だと話す。
情報技術の発展によって企業の在庫管理は様変わりし、ビジネスサイクルは転換、成長加速局面で景気循環株が受ける恩恵は減ったとし、「(投資)環境が変わったことを理解できていない時代遅れの企業がある」と語った。
それでも、スミード・キャピタル・マネジメントのビル・スミード氏らは期待を崩していない。
同氏は投資家向けリポートで、いずれインフレが加速すれば、消費者物価指数(CPI)が上昇傾向にある局面でアウトパフォームしてきたエネルギーや銀行、住宅建築などの株価が上昇する可能性があると指摘。ただ、バリュー株に対して長年強気な姿勢を維持してきた同氏でも、「われわれは我慢強いが、我慢は永遠には続かない」とこぼした。
*チャートは以下をご覧下さい。
(Rodrigo Campos記者)
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