[東京 21日 ロイター] - 日本証券業協会が21日に発表した11月公社債店 頭売買高(国債)によると、生損保勢による超長期債買い越しが7カ月ぶりの規模に膨ら んだほか、9・10月に続いて外国人投資家が最大の買い主体となった。 このうち、生損保は11月に超長期債を今年4月以来7カ月ぶりの大きさとなる65 21億円買い越し、投資ペースを加速している。 日証協の統計によると、生損保の超長期債買い越し額は、今年度上期(4─9月)の 月平均が5699億円。前年度の月平均は4097億円(上期3156億円、下期503 8億円)だったが、11月の買いはそのいずれをも上回った。 みずほ証券の松崎涼祐マーケットアナリストは「11月は米金利に上昇圧力が、また 国内では国債増発懸念が相場の重しとなったが、生損保は一定量を淡々と買わないといけ ない主体。逆の見方をすれば、彼らの買いが、20年金利がなかなか米金利上昇について いかなかった背景となった可能性がある」と指摘。 ただし目先については「生損保の買いは必ずしも投資姿勢を積極化させたわけでなく 、9─10月に買いを抑制した分、あるいは12月の需要を前倒しした分の可能性があり 、今後も同じペースでの買いが続くとは言えない」との見方を示した。 一方、外国人は利付国債全体で約1兆5809億円超買い越し、9月(2兆1679 億円)・10月(1兆6694億円)からはややペースダウンしつつも、最大の公社債買 い主体となった。内訳をみると、中期債3735億円、長期債7569億円、超長期債4 505億円と、全セクターで買い越し基調を維持した。 「10年金利が小幅プラス圏のレンジ推移となり国内投資家の購入は限られる一方、 為替ヘッジをつければプラス利回りとなる海外投資家の購入ニーズが拡大した可能性があ る」(みずほ証券)という。 生損保以外の国内勢では、第3次補正予算の編成を前に超長期債の増発懸念がくすぶ り、JGBカーブがスティープ化した中で、都市銀行が超長期債を中心に利付国債を売り 越した。トータルでの売り越しは6カ月ぶり、また超長期債の売り越しは2カ月連続。 JPモルガン証券の債券調査部長、山脇貴史氏は「銀行勢の預貸ギャップの拡大ペー スが鈍ってきていることも踏まえると、彼らの超長期債への投資が緩やかに鈍化する可能 性も否定できない。いずれにせよ、今後の銀行勢の超長期債、20年債の投資動向が円債 相場の鍵を握るとみている」と話した。 11月の先進国の長期金利動向は、月前半に上昇した後もみあう展開となった。米国 では大統領選で接戦が報じられていったん低下する場面もあったが、その後、バイデン氏 勝利やねじれ議会の可能性、さらに新型コロナウイルス向けワクチン開発期待が強まる中 で急反発。10月の水準からはレンジを切り上げて推移した。 一方で日本の長期金利は、米長期金利が上昇したり日経平均株価が29年半ぶり高値 を更新し続けた中でも比較的落ち着いており、0.01─0.05%のレンジ推移にとど まった。 ◎国債投資家別売買高(国庫短期証券を除く)は以下の通り。 利付国債買越 超長期債買越 長期債買越 中期債買越 額 額 額 額 都市銀行 ▲ 1194 ▲ 1279 ▲ 665 750 地方銀行 2864 1869 1145 ▲ 150 信託銀行 5203 4967 ▲ 4685 4921 農林系金融機 619 1445 ▲ 826 0 関 第二地銀協加 447 409 113 ▲ 75 盟行 信用金庫 ▲ 61 ▲ 270 209 0 その他金融機 1054 775 299 ▲ 20 関 生保・損保 6788 6521 187 80 投資信託 110 5 29 76 官公庁共済組 ▲ 78 ▲ 67 ▲ 11 0 合 事業法人 81 4 85 ▲ 8 その他法人 156 143 13 0 外国人 15809 4505 7569 3735 個人 ▲ 12 0 ▲ 12 0 その他 ▲ 40126 ▲ 17035 ▲ 7574 ▲ 15517 債券ディーラ ▲ 181 148 ▲ 232 ▲ 97 ー 合 計 ▲ 8521 2140 ▲ 4356 ▲ 6305 (植竹知子)
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