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〔アングル〕長期金利の変動幅拡大へ日銀が地ならし、相場波乱に警戒感も

[東京 29日 ロイター] - 日銀の政策点検で焦点の1つとなるイールドカーブ・コントロール(YCC)の運営を巡り、日銀が長期金利の変動幅拡大容認へ地ならしに動き出した。日銀では、金利の変動幅縮小を懸念し、市場機能回復に前向きな見方が出ている。ただ、2018年に黒田東彦総裁が長期金利の変動幅拡大を容認した際には、市場で金利の上限を試す動きが顕在化、日銀が制止に動いた。来週以降の日銀ボードメンバーの情報発信が手がかりとなりそうだ。

<長期金利の変動、容認論が複数に>

「企業・家計による資金調達のうち、長期金利の影響を受けるものの割合は高くない。長期金利が変動しやすくなった場合でも、経済活動に与える影響は限定的だ」。29日に公表された1月20―21日の金融政策決定会合の「主な意見」にはこうした意見が盛り込まれた。前回に続き、金融システム面への好影響を重視した意見もあり、政策点検に関して示された9つの意見のうち2つが長期金利の変動幅拡大を容認するものとなった。市場では、日銀が長期金利の変動幅拡大容認へ地ならしを始めたとの見方が広がっている。

大和証券の岩下真理・チーフマーケットエコノミストは、日銀は声明文で新型コロナウイルスの終息が見えるまでは「機動的」に対応する方針を示した上で、日々の調節は金融市場局が毎月の買い入れ計画をもとにきめ細かく対応していくと予想している。「機動的」は政策点検のキーワードの1つで、29日の「主な意見」でも頻出している。岩下氏は「決定的に金利を上に持っていこうとか、下がないとならないように、機動的に調節するというのが日銀が強調したいところだろう」と読む。

もっとも、日銀が声明文で長期金利の変動幅を明示するとの見方は少ない。現在の声明文は、長期金利について「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうる」と記し、数値を示していないからだ。その代わり、黒田総裁が18年の会見で長期金利の誘導目標ゼロ%に対して「従来プラスマイナス0.1%くらいの狭い幅で動いていたが、その倍くらいの幅を念頭に置いて考えていく」と説明し、これが事実上の目安となってきた。

SMBC日興証券の丸山義正・チーフマーケットエコノミストは、日銀が長期金利の一定の変動を容認すると同時に、金融機関の収益に配慮して超長期債利回りの上昇余地を作ると予想している。声明文にはこれまで通り、10年金利について容認する変動幅は明示せず、上昇の余地を認める定性的な表現にとどめ「海外の金利が上がっていった場合に日本の超長期金利も上がるような仕組みにするのではないか」とみている。

<日銀、金利の変動幅縮小を懸念する声も>

日銀内では、金利の変動幅が小さくなっている現状を懸念する声が出ている。米10年債利回りが民主党政権による財政支出拡大観測などから上昇基調を続ける一方、日本の長期金利はレンジ内での推移が続いている。1月の展望リポートでは、イールドカーブの形状が前回10月のリポート時点とほぼ変わらないことが示された。

もっとも、超長期債の買い入れを一段と減らすことには慎重論もある。超長期債は相対的に金利が高く、生命保険や地方銀行の需要が強い。超長期債の買い入れを減らして利回りを高めに誘導すれば露骨な副作用対策になりかねないためだ。黒田総裁は昨年12月の経団連での講演で「低金利の継続によって金融機関の収益には負の影響がある」と述べる一方、「コスト・副作用を抑えることが点検の重点ではない」と話した。

<18年夏の神経戦、再来への警戒感>

長期金利の変動幅の拡大観測が高まる中、市場関係者の脳裏をかすめるのは2018年夏の記憶だ。日銀は同年7月の金融政策決定会合で政策金利のフォワードガイダンスを導入するなど、金融緩和の枠組みを強化。会合後の会見で黒田総裁が長期金利の変動幅拡大を容認した。

このとき、債券市場は金利上昇で反応。ただ、上昇ピッチが急で、上限を探る「神経戦」(市場関係者)の様相となり、日銀は同年8月上旬、当初予定にない臨時オペを初めて行って金利の上昇を抑えにいった。それ以降、長期金利が0.2%を試しに行く場面は見られていない。

日銀は国債の約半数を保有する巨大な存在。ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは今回の点検について「政策の大転換はないだろうが、下手をすると緩和の後退感が出かねない」と指摘。「発表する内容とそれをいかに市場に上手に伝えるか、市場との対話力が問われてくる」と話している。

<日銀の情報発信に変化>

政策点検の決定以降、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みの変更は必要ない」など、日銀は点検を経ても変更が見込まれない事項を明示し市場に発信してきた。29日の主な意見を境に、今度は想定される変更内容の示唆が続く可能性がある。

2月3日には若田部昌澄副総裁、10日には中村豊明委員と、来週以降、ボードメンバーの発言が相次ぐ。政策点検についてどのように語り、市場への織り込みを進めるのかこれまで以上に市場の注目が集まりそうだ。 (和田崇彦 取材協力:木原麗花 編集:石田仁志)

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