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〔アングル〕マイナス金利の副作用対策、深掘り余地へ必要な「ロジック」

[東京 24日 ロイター] - 日銀が3月に公表する政策点検は、物価目標達成に向けた持久戦を続けるうえで、先々起こり得るショックに「打つ手」を確保することも狙いだ。追加緩和の手段の一つとされながら現実的には難しいとみられているマイナス金利の深掘りについても、副作用対策を講じることで実行の余地を作るとの見方が市場関係者から出ている。

<ショックへの機動的対応>

「やらないと判断しているだけで、やれないのではないということを示す必要がある」。マイナス金利深堀りという政策オプションについて、日銀内からは、こうした声が聞こえる。

日銀は2016年の「総括的な検証」の際、今後の追加緩和の具体的な手段として、1)短期政策金利の引き下げ、2)長期金利操作目標の引き下げ、3)資産買入れの拡大、4)マネタリーベース拡大ペースの加速を示した。

さらに、金融政策決定会合後の声明文や黒田東彦総裁の会見などで「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」と繰り返し述べており、日銀内では、マイナス金利深堀りもあり得るとの姿勢はすでに明確にしている、との認識がある。

ただ、マイナス金利の深掘りは金融機関の収益などに与える負の影響が大きい。銀行界からの反発も強く、実行のハードルはかなり高いとみられてきた。

昨年末以降、黒田総裁をはじめ日銀幹部は、平時の運営の持続性確保とともに、将来起こり得るショックに対して、効果的な対応を行えるような機動性を備えておく必要性があるとしてきた。日銀の事情をよく知る関係者は「マイナス金利の深掘りが金融仲介機能への影響を気にしてできないと思われているのであれば、そこへの配慮は考えた方がいいという議論もあり得る」と話す。

<マイナス金利の副作用対策>

このため、市場の一部では、マイナス金利に伴う副作用を軽減することで、現行の緩和政策の有効性を高める工夫を検討するのではないか、との見方がでている。

JPモルガン証券のチーフエコノミスト、鵜飼博史氏は、一つの例として「超過準備のうち、プラスの付利がなされている基礎残高を増やし、プラスの付利幅を拡大すれば、ある程度金融機関に収益を還元できる」と指摘する。

日銀の当座預金制度は、マイナス金利が付く「政策金利残高」、金利ゼロ%の「マクロ加算残高」、プラス0.1%が付く「基礎残高」の3層で構成されている。現在の基礎残高は2015年の当座預金の平均残高を用いているが、この基準を2020年平均に変更すれば、基礎残高は200兆円程度から384兆円程度へ増える。さらに、基礎残高への付利をプラス0.1%から引き上げることで、金融機関の収益への影響は緩和される。

<補助金的措置には慎重>

ただ、日銀は点検について「副作用対策を主眼としたものではない」としており、金融機関への補助金的政策と捉えられるような措置には慎重論が根強い。また、考えうる工夫についても、異論を納得させられる「ロジック」が必要となる。

例えば、基礎残高の基準時点が2015年となっているのは、16年1月にマイナス金利政策を導入する際、金融機関のそれまでの取り組みを保証する主旨で決まった経緯がある。そうした事情がない中で基準時点を変更する理由については、説明が難しいとの見方が日銀内に存在する。2020年は新型コロナ対応オペの利用が膨らんだ結果、マクロ加算残高が230兆円程度に膨張した。こうした「特異な年」の20年を基準にするのが適切なのか、との指摘もある。

技術的な措置とはいえ、当座預金の3層構造を組み換えることもハードルが高い。金融機関によって恩恵を受けるところと、そうではないところが出てくるためだ。日銀内では、副作用対策のみを名目に当座預金の3層構造を修正することに慎重な見方も根強い。

日銀は、コロナ禍での企業の資金繰りを支えるうえで要となる、金融機関への収益支援策を打ち出してきた。新型コロナオペではマクロ加算2倍措置と利用残高に応じたプラス金利の付利、マクロプルーデンス政策の一環で打ち出した地域金融支援のための特別当座預金制度では、経営統合や経営効率化目標の達成でプラス0.1%の特別付利がつく。これ以上の副作用対策はかえって「日銀は銀行を優遇しすぎ」との批判につながる可能性もある。

危機時にマイナス金利の深掘りもいとわない姿勢を鮮明にしたり、副作用対策を示したりするのか。日銀は点検の最中であり、決まったものはない。ただ、純粋な副作用対策とみなされないような工夫を説得的な「理屈」で打ち出すことができれば、「抜けないとみられてきた『伝家の宝刀』の存在を改めて意識させるような効果はあるのでは」(国内証券エコノミスト)との声が聞かれる。 (杉山健太郎、和田崇彦、木原麗花 編集:石田仁志)

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