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焦点:海外勢の日本株売り、本腰か調整か 個人は逆張り継続

[東京 10日 ロイター] - 海外投資家の日本株売りが強まっている。年初からの累計では売り越しに転じた。ただ、日本独自の売り材料が出たわけではなく、米国の長期金利上昇をきっかけとして利益確定売りに動いた可能性がある。個人投資家は足元では買い向かっており、逆張り姿勢は健在だ。

 3月10日、海外投資家の日本株売りが強まっている。年初からの累計では売り越しに転じた。写真は都内で昨年10月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

<株価のピークを境に反転>

日経平均株価が30年半ぶりに3万円を回復したのは2月第3週の15日。翌16日に取引時間中のバブル崩壊後高値(3万0714円)を付けたが、その週を境に海外投資家の姿勢は反転した。

東京証券取引所と大阪取引所が公表する投資部門別売買動向によると、海外投資家による日本の現物株と先物合計の売買は、2月第1─2週の合計で1兆3284億円の買い越しだったが、第3─4週は8854億円の売り越しに転じた。

特に2月第4週は7006億円の売り越しと、前年9月第5週の7540億円以来の規模となった。1月が5753億円の売り越しであったことから、年初からの累計でも1323億円の売り越しに転じている。

海外投資家は、米国で大統領選挙が終わり新型コロナウイルスのワクチン開発に進展がみられた昨年11月以降に日本株買いを活発化。11月に3兆1030億円、12月に4782億円の計3兆5812億円買い越している。

昨年11月から今年2月までの累計では依然3兆4489億円の買い越しであり、日経平均は今年2月末時点で、昨年10月末比で5988円(26%)、前年末比で1521円(5.5%)上昇した地点に位置する。しかし、足元では景気回復期待を背景に積み上げてきた株式ロングポジションの利益確定売りに動いた可能性がある。

<株式と債券のスプレッド縮小>

海外勢が利益確定売りに動いたきっかけの一つは、米国の長期金利の上昇だ。米10年国債利回りが約1年ぶりに1.3%台に乗せた2月16日の翌日以降、ナスダック総合指数が下落するなどマーケットの一部で変調がみられている。

豪AMPキャピタルの投資戦略部門責任者兼チーフエコノミスト、シェーン・オリバー氏は「債券売りが一部株式のバリュエーションに関する懸念をもたらし、米国、日本、中国などグローバルでの株式売りにつながった」と指摘する。

歴史的にみれば、金利上昇と株高が併存しているケースは少なくない。金利上昇の要因が、景気回復(期待)であるためだ。最近ではトランプ氏が米大統領選に勝利した2016年11月からの局面がそれにあたる。

ただ、金利上昇が短期的な株価の調整(下落)を引き起こすこともある。今回のリフレトレードが調整を迎える前、株式の益回りと、債券の利回り差である「イールドスプレッド」が縮小していたことが注目されている。

株式と債券は「ライバル関係」にある。投資家はどちらのリターンが高いかを比較検討し、資金を配分する。先行きの見通しやボラティリティーなど複雑な要素が絡むため、そう単純ではないが、イールドスプレッドの低下で株式の相対的な魅力度が低下するとみれば、利益確定売りのきっかけになりやすい。

<買い主体が交互に登場>

海外勢が売り越しに転じたからといって、相場が崩れるとは限らない。

海外勢が日本株を大きく買い越したのは昨年11月だけで、その後は売り買いまちまちだ。1年間に15兆円買い越した「アベノミクス相場」初期の2013年のような継続性や規模感は乏しい。それでも日本株を30年半ぶりの高値に押し上げたのは、買い主体が入れ替わり立ち代わり表れたためだ。

年金の売買動向を示す信託銀行は、昨年11月に3997億円売り越したが、海外勢の買いがペースダウンした12月に3564億円の買い越しに転じた。今年1月は海外勢、信託銀行ともに売り越しとなったが、個人投資家が買い越しに転換。

個人投資家は、昨年11─12月に2兆3410億円売り越したものの、今年1月は5091億円の買い越し。2月1─2週は9271億円売り越したが、3─4週に6967億円買い越しと、海外勢の売買に対して「逆張り」を続けている。

海外勢の日本株売りも、現時点では調整の範囲内と野村証券のクロスアセット・ストラテジスト、高田将成氏はみる。「CTA(商品投資顧問業者)は一部ポジションの圧縮にとどまり、マクロ系ヘッジファンドの景気見通しに変化はなくヘッジ売りにすぎない。ロング・ショートも銘柄入れ替えの範囲だ」と指摘する。

ただ、相場観に違いはあっても、日本株独自の買い材料は依然乏しく、グローバル・マーケットとの高い連動性は変わらない。足元の米金利上昇はドル高/円安要因となっているが、昨年後半の円高は株売り材料とされておらず、今回プラス材料として認識されない可能性もある。米長期金利などの動向に神経質な展開が続きそうだ。

(伊賀大記 取材協力:植竹知子 グラフ作成・編集:田中志保)

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