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アングル:日銀点検、市場が試す「基準と限界」 いつ動くか見極め

[東京 19日 ロイター] - 日銀が政策点検で示した変更点について、マーケットはその「基準」と「限界」を試しにいくとみられている。上場投資信託(ETF)買い入れに動くのはどのような株安の状況か、長期金利が上昇した場合はどの段階で抑制に動くのか、を見極める見通しだ。

 3月19日、日銀が政策点検で示した変更点について、マーケットはその「基準」と「限界」を試しにいくとみられている。写真は日銀本店前。2019年1月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

<ETF購入の「基準」試す>

ETF購入は上限の年12兆円は残ったが、年6兆円のめどが削除された。絶対的な購入規模の「コミットメント」がなくなる中で、マーケットが試すとみられているのは購入の「基準」だ。どのような株安場面で日銀が買い入れに動くのかを探っていくことになる。

今年1月、注目を集めた動きがあった。その当時、「基準」と市場がみていたのはTOPIXの前場の下落率。0.5%よりも下落率が大きければ、日銀がETF購入に動くとの認識が広く共有されていた。

実際、TOPIXの前場下落率が、0.51%だった15日は、通常のETFを501億円買い入れ、0.49%だった18日は買い入れなし、0.51%だった20日は501億円の買い入れと、0.5%を挟んで買い入れの有無がはっきり分かれた。

その後、0.5%を下回っても、買い入れが行われないケースが増えるなど、「基準」は崩れている。また「買い入れ基準は、イールドスプレッド(国債と株式の利回り差)や、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、ボラティリティーなど様々なリスクプレミアムで判断している可能性がある」(ニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏)との指摘もある。

ただ、マーケットは今年1月のようにシンプルな「基準」を探す傾向がある。まずは今回の「点検」後に、TOPIXの前場下落率が、どの程度大きければETFを購入するのか、わずかな違いにも目を凝らすことになりそうだ。

<長期金利上限のトライは様子見か>

一方、長期金利の許容変動幅の「上限」を試す動きは、しばらく控えられるとの見方が多い。今回新たに導入した「連続指し値オペ」の存在が不気味なためだ。

「連続指し値オペ」は、金利の大幅な上昇を抑制する方法として、特定の年限の国債を無制限に買い入れる指し値オペを、さらに強化するために、一定期間、指し値オペを連続して行うという。

野村証券のチーフ金利ストラテジスト、中島武信氏は、「詳細は不明だが、それだけに金利上昇を抑える脅しともなる。超長期金利に関しては、過度な低下が望ましくないという従来からの表現と変わらないため、長期金利が上昇しにくい分、超長期金利も上昇しにくくなるかもしれない」と話している。

今回、拡大された変動許容幅はプラスマイナス0.25%程度。日銀が、2018年7月に変動許容幅を上下0.2%程度に拡大した後の長期金利の最高水準は、今年2月26日に付けた0.175%であり、これまで上限に届いたことは一度もない。

しかし、米長期金利(10年国債)が1年2カ月ぶりとなる1.7%台に急ピッチで上昇する中、日本の国債金利にも連動した上昇圧力が高まる可能性がある。その際、日銀は、0.25%の手前で抑制に動くのか、それとも超えたことろで動くのか、市場の注目が集まりそうだ。

<日銀の「存在感」に変化はあるか>

今回の点検における、もう1つの大きなポイントは、日銀のマーケットにおける「存在感」に変化があるかという点だ。

日銀保有のETFは21年1月末時点(簿価ベース)で35.6兆円。12年度末の1.5兆円から、23倍に膨らんでいる。16年7月に年間目標を6兆円に拡大して以降、17年5.9兆円、18年6.5兆円、19年4.3兆円、20年7.1兆円を買い入れており、海外投資家を上回る日本株の買い主体筆頭となっている。

保有国債は、20年12月末時点で、国債等残高1220兆円のうち44.7%にあたる545兆円に達する。黒田東彦総裁就任前の12年12月末時点では9.9%にすぎなかったが、いまや、日銀が大量の国債を保有する「ストック効果」で金利は上昇しにくい構造になっている。

日銀の資産買い入れによる、金融市場への影響が大きすぎることを問題視する声は、マーケットでも少なくない。一方で、低金利と株高を実現しているとの分析もある。

日銀は、政策点検の目的は、政策の持続性を高めることだとしている。ただ、市場では「トータルで見れば、従来より長期国債やETFの買い入れ額は縮小することが予想される。本当の狙いは資産買い入れ減少を通じた副作用の軽減にあるのだろう」(シンクタンクのエコノミスト)との見方がくすぶる。

シティグループ証券のチーフエコノミスト、村嶋帰一氏は、「日銀の政策が複雑になり過ぎて、海外投資家からの問い合わせがめっきり減った」と指摘する。マーケットでの存在感が極めて大きくなった日銀の「庇護」が弱くなった場合に、市場がどう動くか不透明感は強い。

(伊賀大記 編集 橋本浩)

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