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アングル:入管法改正案に批判の声、難民申請にも罰則など制度厳格化

[東京 2日 ロイター] - 今国会で審議予定の入管法改正案が弁護士や人権団体から批判を集めている。紛争から逃れ難民申請をしている外国人が日本で難民として認定される道は極めて狭く、入管施設に長期間収容されるケースが多いことは人権団体や国際社会からも問題視されている。

 4月2日、今国会で審議予定の入管法改正案が弁護士や人権団体から批判を集めている。在留資格を求める人々、都内で2015年撮影(2021年 ロイター/Yuya Shino)

その状況を打開するための政府の改正案だが、罰則が盛り込まれるなど現行の制度がさらに厳しくなる内容は「排除の方向のみで、評価すべき点はほぼない」との声も出ている。

<違反者は刑事罰も適用に>

日本の出入国管理局収容施設における長期収容では、施設の医療体制が不十分なため死亡事故や病死も繰り返されており、2019年6月には長崎県の大村入管で長期収容に抗議してハンガーストライキ中だったナイジェリア人男性が餓死した。

この事件をきっかけに、法務省は専門部会を開いて入管法改正案の作成に取り掛かった。しかし、政府が2月19日の閣議で了承しこれから国会で審議される見通しの同改正案には、弁護士や人権団体などから批判が強まっている。

改正法案の問題点とされるのはまず、オーバーステイなどで退去強制令書を発付された外国人が自ら退去(日本から出国)しないことに対し、刑事罰(退去強制拒否罪)が適用されること。被退去強制者の中には、日本に家族がいる人や、帰国すると身に危険が及ぶため難民申請している人も含まれている。

広島弁護士会は3月25日に公表した意見書で「日本での在留が認められる可能性のある者に、刑事罰で威嚇して帰国を強制することは相当でない」とし、支援者や弁護士が退去強制拒否罪の共犯とされる可能性も払拭できないと懸念を示している。

また、改正案では難民申請を3回以上行った申請者を自国に送還することも可能となる。日本は難民認定率が他の先進国と比べ極端に低く、19年はドイツで25.9%、米国は29.6%だったのに対し、日本はわずか0.4%の44人。3月31日に入管庁が発表した統計では、20年も47人にとどまった。弁護士らは、こうした状況下で難民認定されなかった人を強制的に送還することは非人道的だと指摘している。

<長期収容に代わる新設制度も曖昧>

改正案では非正規滞在者に対し収容に代わるものとして「監理措置」制度を新設、親族や弁護士などを「監理人」とすることによって収容施設の外で生活できるとしている。ただ、それを決めるのは入管で、誰が対象となるかの基準がはっきりしない。また、収容施設から出ることができても就労は認められず、生活手段が確保できない。監理人は対象となる外国人の生活状況に関する監督や届け出義務を負うなど重い負担が生じるため、監理人を見つけることは困難だと危惧(きぐ)されている。

19年末時点で、全国で収容されていた外国人は1054人。本来、収容所は退去強制令書を発出された人が退去するまでの間一時的に収容される場所だが、実際には1054人のうち約400人が6カ月超収容されていたという実態がある。

国連の「恣意的拘禁作業部会」は20年9月に、日本の入管収容制度における長期収容について、申し立てを行った被収容者2人の事案は国際法に違反し「恣意(しい)的」であるとし、日本政府に意見書を送付し必要な措置をとるよう求めた。

これに対し政府は3月27日付で「入管難民法の手続きを順守しており、人権諸条約に抵触するものではない」と異議を申し立てたと上川陽子法相が30日、明らかにした。

<長期収容の解消、「排除の方向のみは間違い」>

入管法に詳しい児玉晃一弁護士は、今回の改正案は評価できる点はほとんどないとの見方だ。「(政府の)基本的な発想は長期収容の解消を、強制送還することで達成させようということ」であり、「排除の方向だけで考えているのは間違っている」と話す。

児玉氏によると、現在約8万人いるとされる不法滞在の外国人の多くはすでに日本社会にとけこんでおり、オーバーステイ以外は犯罪もなくひっそりと暮らしている善良な人々。「そういう人を正面から正規化し在留資格を与えて働いてもらい、健康保険料や税金を払って社会の一員として表に出てきてもらう方がよほどいい政策なのではないか」と指摘している。

3月6日、昨年8月から不法滞在で愛知県の名古屋出入国在留管理局に収容されていた33歳のスリランカ人女性が死亡した。支援団体によると、女性は今年になって体調を崩して1月下旬から嘔吐を繰り返し吐血もしたが入院などの措置はとられず、職員が死亡しているのを発見した。「本当に痛ましい事件。見殺しだった」と支援団体スタートの松井保憲氏は語る。

入管庁ではこの事件について現在、第三者を含む調査チームを作って死亡に至る診療の経過や対応の状況を調査しており、4月上旬にも中間報告を公表するとしている。

宮崎亜巳 編集:田中志保

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