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焦点:ワクチン接種遅れ、経済シナリオに暗雲 コロナ前回復後ずれも

[東京 19日 ロイター] - 菅義偉首相がコロナ対策の切り札とするワクチン接種の遅れが鮮明になってきた。ワクチン供給が滞り、接種停止に追い込まれた自治体も少なくない。政府は、ワクチン接種の進展を織り込み、年内にも経済規模がコロナ前の水準に戻ると想定するが、事態を改善できなければ回復シナリオが後ずれしそうだ。

 7月19日、菅義偉首相がコロナ対策の切り札とするワクチン接種の遅れが鮮明になってきた。写真は東京・新宿の景色。6月20日撮影(2021年 ロイター/Pawel Kopczynski)

<首相、接種完了前倒しに意欲>

菅義偉首相は17日のテレビ番組で、希望する人へのワクチン接種について「10─11月の早い時期」と、6月時点の目安よりも早期に終える見通しを語った。政府は、足元での自治体の予約制限などは「現場の接種ペースが想定を上回っただけの一時的現象」(政府関係者)として、4000万回分の市中在庫があるとの姿勢を崩していない。

河野太郎行政・規制改革担当相は9日、足元の接種回数が1日当たり140万回程度となった現状を受けてファイザー製ワクチンの接種ペースを120万回程度に抑えるよう、自治体に要請した。

しかし、16日に行われた東京23区の特別区長会と河野担当相による意見交換会では、「このままでは今年中に接種が終わらない」との批判が出た。

15日付日経新聞電子版によると、県庁所在地などの主要都市の7割がワクチン接種の「予約を停止・制限」(検討中含む)と回答し、希望する全住民の接種が完了する時期も、政府目標に沿った「11月末まで」との回答は3割にとどまったという。

「ワクチン記録システム(VRS)」を基に在庫が余っている市町村の配分量を国が1割削減する方針を示したことも自治体の不満をかっている。特別区長会会長の山崎孝明・江東区長は、一部の自治体で2回目の接種用として保管していた在庫が「余剰分」とみなされて供給を絞られたとして「非常に強い憤りを感じる」と抗議。

大阪府の吉村洋文知事も「国はもう少し実態を見てほしい」と述べている。

<最大のプラス成長を想定>

内閣府は6日の経済財政諮問会議で、2021年度の実質成長率が3.7%のプラス成長になるとの試算を示した。実現すれば比較可能な95年度以来、最大の伸びになる。

試算によると、21年度の経済規模は546兆円に上方修正され、年内にコロナ前の19年10─12月期の水準を回復する見通しだ。「ワクチン接種の促進などでサービス消費が回復に向かう。輸出や設備投資の着実な増加もあり、年度後半に回復ペースが速まる」と、内閣府幹部は語る。

しかし、政府が描く道筋どおりに進むかは見通せない。複数の政府関係者によると、菅首相はここにきてコロナ対策の切り札とするワクチン接種が進展した場合のGDP押し上げ効果について、民間シンクタンクの関係者に相次いで意見を求めた。

一方で、首相は自身の考えを補強する意見を求めるばかりで「意見交換を求めるシンクタンクの人選には疑問符が付く」(別の関係者)と、行政府からは首相の言動をいぶかる声も漏れる。

<民間からは疑問の声>

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「ワクチン不足の原因はVRSのシステム上の問題もあるが、ワクチンの供給自体も減少している可能性がある」と懸念する。さらに「欧州各国の例ではワクチン接種が進んでも、拒否する人も一定水準で残り、感染拡大が止まらない」と指摘、たとえ政府の想定通りにワクチン接種が進んでも、思惑とは裏腹に感染が止まらない可能性に懸念を示す。

みずほリサーチ&テクノロジーズの服部直樹・上席主任エコノミストは、今年6月時点でワクチンの接種ペースが1日50万回から100万回まで増えたことを受け、GDPを1%押し上げる効果があるとの試算を公表していた。

しかし、今後のワクチン接種ペースが鈍化し、「デルタ変異株による感染拡大が急速に進むようなケースではGDP押し上げ効果が圧縮される」と、今後の感染状況によっては経済回復シナリオに飛び火する可能性にも言及している。

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