[モスクワ 21日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派2地域の独立を承認する大統領令に署名した。その上で2地域に軍を派遣するよう国防省に命じた。米欧は強く反発し、対抗措置を取ると表明した。
派遣する部隊の規模は明らかになっていないが、法令によると、ロシアは2地域で軍事拠点を設ける権利があり、派遣される軍は平和維持の任務に当たる。欧米側がこうしたロシアの軍事行動をウクライナへの本格侵攻の始まりと捉えるのかは不明。
ロイターの記者は、プーチン氏による部隊派遣の指示後、ウクライナ東部ドネツク州の首都ドネツク周辺で軍用車両が隊列走行しているのを確認した。
ロシア国営テレビはこれに先立ち、プーチン大統領が親ロシア派の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を認める大統領令に署名する映像を放映した。
プーチン大統領はテレビ演説で、ウクライナはロシア史の不可分の一部で、ウクライナ東部は古代ロシアの領土だったと述べ、怒りの表情を見せた。ロシア国民が今回の決定を支持すると確信していると語った。
さらに、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟はロシアへの直接的な脅威になるとし、NATOがロシアの安全保障要求を完全に無視したと非難した。
プーチン大統領は、ロシアがウクライナに対しどのような行動を取るかにかかわらず、西側は「制裁の根拠を見つけたとするか、あるいは捏造するだろう」とした。
ロシア大統領府(クレムリン)によると、プーチン氏はこれより先、独仏の首脳との電話会談でウクライナ東部に関する決定を伝え、両国の首脳は遺憾を表明したという。
原則的に合意していた米ロ首脳会談の開催も危うい状況となった。ロシアの通貨ルーブルは下げ止まらず、1ドル=80ルーブルを突破した。
<米欧が相次ぎ対抗措置>
バイデン米大統領は21日、ロシアが独立を承認したウクライナ東部の2地域について、米国人による投資や同地域の製品などの米国への輸入を禁止する大統領令に署名した。
ロシア外交筋によると、ウクライナ問題で国連安全保障理事会は21日午後9時(日本時間22日午前11時)に公開会合を開く。米英仏の3カ国が要請していた。
オランダのルッテ首相は、欧州連合(EU)加盟国はロシアの親ロ2地域の独立承認の当事者を対象とする限定的な制裁の発動で合意したと明らかにした。トラス英外相も英政府は22日にロシアに対する追加制裁を発表するとツイッターに投稿した。
NATOのストルテンベルグ事務総長は、ロシアがウクライナ東部の紛争をあおり続け、さらなる侵攻のための口実を作ろうとしていると非難した。
バイデン大統領はまた、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談で、同国の主権を支持すると改めて表明した。
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