[東京 20日 ロイター] -
<みずほ証券 チーフエコノミスト 小林俊介氏>
かつて日銀理事からもイールドカーブ・コントロール(YCC)を修正する際は不意打ちで行う旨の発言が出ていたが、今回の決定はそれを実現した格好だ。市場参加者の多くが政策修正を見込んで日本国債をショートしている中で行えばデメリットが大きい。市場の催促に負けた格好となって中央銀行の沽券にかかわる上、金利が急騰して市場のショックは大きくなり、投機の成功がさらなるショートを誘発するためだ。年末で参加者が少なくなるタイミングで不意打ちの変更を行うことは理にかなっていたと言える。
来年1─3月の長期国債買い入れ額を増額するなど、YCC修正に伴う打撃を一定程度抑制する工夫もみられた。それでもなお、今回の決定が日銀にとって危険な賭けであることに変わりはない。
一度市場に屈服してしまった以上、さらなる政策変更を催促されうることは自明の理だ。よほど強いコミットメントを発しなければ中銀の信認は回復しないだろうし、そもそも日銀自身がコミットメントを反故にし続けている以上、もはや市場の期待に働きかける政策が効果を発することはないかもしれない。
今後の政策変更の本丸は、YCCのさらなる修正というよりマイナス金利の撤廃となる可能性が高い。YCC修正の前にプラス付利への回帰を行うことは人為的に日本国債のイールドカーブを完全にフラット化させることと同義であり、今回の決定が先んじたことは納得感がある。
日銀はその後、相応に強い経済環境とインフレ率という一定の条件下で、ETF(上場投資信託)やJ-REIT(不動産投資信託)の購入停止やYCCのさらなる修正を目指すことになるだろう。もちろん、そうした政策変更の時間軸は次期総裁・副総裁の人事に強く依存することになる。 (植竹知子)
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