for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

日銀決定会合:識者はこうみる

[東京 18日 ロイター] - 日銀は17―18日に開いた金融政策決定会合で金融政策の現状維持を全員一致で決めた。マイナス金利、10年物国債金利の誘導目標ゼロ%をいずれも維持し、10年物国債金利0.5%での指し値オペを「明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日実施する」と改めて表明、長期金利変動幅の上限を据え置いた。市場関係者の見方は以下の通り。

日銀は17―18日に開いた金融政策決定会合で金融政策の現状維持を全員一致で決めた。写真は日銀本店。2009年3月、東京で撮影(2023年 ロイター/Yuriko Nakao)

●当面は資金供給オペ拡充の効果見極め、修正の思惑消えず

<大和証券 チーフエコノミスト 末広徹氏>

YCC(イールドカーブ・コントロール政策)の枠組みが維持され、日銀は黒田体制の下では大規模緩和が維持される可能性が高くなった。

  個人的には予想外の結果ではなかったが、円債市場の反応は予想外に大きく、海外投資家を中心に今回日銀が政策修正に動くと期待する向きが多かったのだろう。

  今回決まった「共通担保資金供給オペ」の拡充については、市場に低金利で資金を供給して国債を購入するインセンティブを与えることが狙いだろう。同オペの利点は日銀が国債を買わずして金利低下圧力をかけられることで、いわば「他力本願」な政策。拡充の背景には、日銀が国債買い入れに限界を感じている可能性があるとも読める。

  これまで2年という短いゾーンだけで効果が限定的だったが、最長10年までできることになり、金額と金利水準によっては相当強力に金利を押し下げる効果がありそうだ。ただ債券市場に幅広い市場機能のゆがみが存在する中、今回の措置でそれがどれだけ改善されるのかはやってみないと分からず、市場関係者はその効果を見守ることになる。

  今後は、新総裁への思惑を含め、市場のYCCの修正観測が続くと考えられる。今会合の結果をもって修正観測は消えることなく、毎回の日銀会合ごとに「新しい動きがあるのでは」との市場の思惑が続くとみている。

●新総裁人事にらみ株高に波乱も 修正思惑くすぶる

<ピクテ・ジャパン ストラテジスト 糸島孝俊氏>

現状維持の決定に対する円安、株高の反応は想定通りといえる。株高に乗り遅れた投資家も加わり、数日間は高値もち合いとなり得る。米国株上昇の追い風が加わるようなら日経平均は2万7000円を上回る可能性もある。

  一方、今回の決定は、投機筋にもう一度チャンスを与えた面もある。現状維持となったことで、先行きの政策修正への思惑は引き続きくすぶっている。米連邦公開市場委員会(FOMC)結果発表(2月1日)や、日銀新総裁人事への思惑から、もう一波乱あってもおかしくない。

  会合結果の発表後に銀行株は、日銀のスタンス変更への思惑が冷やされて売られた。米銀決算がふるわない影響もありそうだ。ただ、バリュエーションが低く、配当利回りの魅力で買われていた側面もある。この点が米銀とは異なり、下値余地は大きくないだろう。

  輸出株は円安を受けて上昇したが、中国ビジネスの先行きに対する市場の見方は割れており、今後、株価の上値を抑える可能性がある。

●YCC撤回は新総裁就任、アコード修正後

<野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英氏(元日銀審議委員)>

イールドカーブの形状のゆがみや、金利上昇を抑制するため連日日銀が実施している巨額の国債買い入れについて日銀事務方は懸念しているが、黒田東彦総裁は問題視していない。

  次回3月会合では、市場のアタックにより日銀が長期金利の上限再引き上げを迫られる可能性はある。ただ、1)市場環境、2)事務方が黒田総裁を説得できるか─にかかっており、上限引き上げの可能性は半々だろう。

  現行の日銀のマイナス金利政策と長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正は、4月に就任する新総裁の下でないと実現しないだろう。

  まず岸田文雄政権主導で政府・日銀共同声明(アコード)の見直しが行われ、2%の物価目標達成が柔軟な方針に改められ、その後、日銀としては先にマイナス金利の解除、その後YCCの撤回という順番で政策変更に着手するとみている。

  ただ黒田日銀の政策を強く支持する自民党安倍派の声もあり、アコード改定が想定外に難航するリスクがある。また世界経済が減速局面に入っており、政府、与党、世論ともに緩和的な金融環境は継続を希望する声が多く、また過度な円高進行が懸念されるリスクもあり、日銀の政策正常化は時間がかかる可能性もある。

●今後は政策修正方向、円安進行は限定的か

  <三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩氏>

市場の大方の見方は政策変更なしということで想定内の結果ではあったものの、一部に変動幅再拡大の見方がくすぶっていたことから、株・金利・為替の中では、為替が一番大きく円安で反応している。今後は基本的に金融緩和修正方向との見方が多く、ここからどんどん円安が進む展開ではないと思う。

  共通担保オペ拡充については、これで市場機能改善するかはまだ不透明だ。一応、資金供給手段を拡充した形であるが、これで債券市場が落ち着くかは微妙。先月、長期金利変動幅を上下0.5%に拡大した後の状況が、0.25%の時より厳しくなっているのにも関わらず、今回は現状維持であり、そのあたりを黒田東彦日銀総裁がどう説明するのか注目したい。

  ●イールドカーブのゆがみ是正されなければ、再び政策修正思惑強まる

  <ニッセイ基礎研究所 上席エコノミスト 上野剛志氏>

メインシナリオは金融政策の現状維持だったので、驚きはなく想定の範囲内だ。前回の会合から1カ月も経っていない状況でさらに政策を修正をすれば、日銀が政策を失敗しているという印象が強くなってしまう。

小幅に金利を引き上げれば、催促相場となりイールドカーブがゆがみ、さらなる金利引き上げに追い込まれかねない。大幅に金利を上げれば、市場や景気に悪影響を及ぼす可能性がある。前回の決定方針のもと、オペの調整で日銀が考えるイールドカーブの形成を目指すということなのだろう。

展望レポートで物価見通しは想定よりも引き上げられなかった。24年度のコアコアCPIは1.6%にとどまるなど、日銀としては金融緩和の継続を示す意味合いもあるのではないか。

共通担保資金供給オペが拡充されたが、このオペと通常の国債買い入れオペでイールドカーブがどこまで是正されるかが注目だ。ゆがみが是正されなければ、金融政策修正を巡る思惑につながりやすくなる。

日銀の政策修正観測はなかなか沈静化しないとみている。黒田東彦日銀総裁が会見で緩和を継続すると述べたとしても、前回の会合で唐突に政策を修正し事実上の利上げに踏み切ったことから、市場との対話が損ねれられている。日銀の情報発信に対する信頼は低下しているため、額面通りには受け止められない。また、総裁の任期が数カ月となることも、市場の観測を鎮静化させにくい。今後も金利上昇や株安圧力がかかりやすい場面が想定される。ドル/円については、日銀の政策修正を巡る思惑と米国の利上げ観測のバランスによって、動向が決まっていくだろう。

  ●物価観に変化、早い段階で政策見直しも

  <住友生命保険運用企画部 エコノミスト 武藤弘明氏>展望リポートで想定通り物価見通しが2%近くに上方修正され、将来的な物価観が変わってきている。予想上昇率も上がってきているというコメントも付されており、新総裁の下では早い段階でYCC(長短金利操作)撤廃も含め政策見直しがあるのではないか。

正副総裁人事を2月10日ごろ国会提示という観測報道があり、3月は(現体制が)レームダック化する可能性がある。マーケットの焦点も新総裁、新しい執行部の下での政策運営に当たってくる中で、3月は政策修正はやらないのではないか。ただ副作用の点検などをアナウンスしてくる可能性はあるとみている。

●共担オペ拡充、黒田体制で枠組み変更なしを示唆

<東短リサーチ 社長・チーフエコノミスト 加藤出氏>

今会合で長期金利の上限を再度引き上げたり長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を撤回したりすれば、マーケットにかえって攻め込まれてしまうので、政策据え置きは想定通りの内容だ。

昨年12月に長期金利変動幅を上限0.5%に引き上げた際にも、日銀内では現行の黒田東彦総裁体制でのYCC撤回は議論されていなかった。

今回の会合では、共通担保オペの拡充を決定した。詳細は総裁会見での説明などを待ちたいが、柔軟に長期のオペを打つ姿勢を示したということは、3月までの黒田体制下で日銀は金融政策を大きく修正することはないとの意思表示ではないか。

●長めの共通担保オペ、金利低下要因に

<JPモルガン証券 債券調査部長 山脇 貴史氏>

共通担保オペで金利入札方式の期間を1年から10年に延長したことで、5年物の共通担保オペなどが実施できるようになった。金利上昇が目立っていた5年物のスワップ金利の低下を促すとともに、日本国債にも間接的な金利低下効果が期待できるだろう。社債発行環境も改善するのではないか。

次期日銀総裁が就任早々に市場機能低下に対応しなくててもいいように、黒田東彦総裁がうまく道をつないだともみえる。限界が見えてきたイールドカーブ・コントロール(YCC)など現在の金融政策のフレームワークを変更しなくてもいいということではないが、それは次期総裁がマクロ環境をみながら検証し修正していくことになりそうだ。

●市場と闘う意思示す、現状維持の持続性が焦点

<りそなアセットマネジメント 運用戦略部チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏>

イールドカーブ・コントロールの撤廃や許容変動幅の拡大、現状維持の3つのシナリオを想定していたが、発表文を見る限り現状維持にみえる。政策修正への思惑がくすぶっていたことから、ドル高/円安、株高の反応は当然だろう。2024―25年度の物価見通しを大きく引き上げなかったことも大きい。

今後は、どれほど現状を維持できるかが焦点だ。政策修正への市場の思惑は、日銀が国債発行残高の全てを買う覚悟で市場と闘う意思を示さないと収まりがつきそうにない。今回はその意志を示したとみることができるだろう。

政策の正常化が進めば、企業の利払いが増えて設備投資計画の先送りや、個人のローン金利なども上がってくる。海外景気の先行きが不透明な現状では、日本経済にとって正しい判断とみている。これから予算審議に入るが、金利の前提が変われば組み直す必要が生じ、景気のテコ入れが遅れかねない。

2000年と06年、07年には、デフレ脱却が見えながら出口を急ぎ、デフレに逆戻りした経緯もある。12月会合での政策修正を元に戻すことはできないため、現状維持の判断をしたのだろう。

●3月会合でYCCサプライズ解除の可能性

<みずほ証券 チーフエコノミスト 小林俊介氏>

今会合で日銀が政策(の副作用)を点検するとの読売新聞の報道が正しかったと仮定すれば、今回は現行の長短金利操作(イールドカーブ、YCC)継続に問題がないとの結論に至ったのだろう。

日銀の政策維持の決定を受けて株式市場は後場踏み上げで上げているが、これがトレンドとして持続するかは不透明だ。昨年12月の政策修正のように3月にサプライズでYCC解除を決める可能性は排除できない。解除する場合、ショート筋がいなくなったタイミングを狙う方が安全である可能性はある。

やはり今後の注目点は次期日銀総裁に誰が指名されるのか。山口広秀・元副総裁なのか、雨宮正佳・現副総裁なのか、など人選を注視することになる。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up