[北京 10日 ロイター] - 中国国営の中国中央電視台(CCTV)によると、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は10日、外国の制裁に対抗するための法案を可決した。
貿易、技術、香港、新疆ウイグル自治区を巡る問題について、米欧から圧力を受けていることが背景。
この法案は4月に1回目の審査が行われ、2回目の審査を経て10日に承認された。
通常は3回の審査が必要になるが、3回目の審査は省略した。法案は、2回目の審査を行うと発表したわずか2日後に承認された。1回目の審査は極秘に行われた。
法案の詳細は公表されていないが、国内の専門家は、外国の制裁に報復する最も幅広い法的な手段になると指摘。中国の報復措置の合法性と予測可能性を高めることが狙いだと分析している。
米政府は、全人代が香港国家安全維持法を承認したことを受けて、全人代常務委員会の副委員長14人全員を制裁対象に指定している。
習近平国家主席は昨年11月、中国の主権と国益を守るため、法的な手段を活用するよう、共産党に呼び掛けていた。
中国商務省は1月、中国企業や市民に対する外国の「不当な」法律や規制に対抗するための新規則を公表している。
欧州連合(EU)商工会議所の代表はロイターに対し、法案の成立手続きを巡る透明性の欠如に会員企業が驚いているとし「中国は急いでいるようだが、そうした行為は外資の誘致にプラスにはならない」と述べた。
香港の法律事務所ポール・ヘイスティングスの専門家は、中国でビジネスを展開しようとする外国企業は、国内外での事業活動に関して、中国の規制当局からの監視の目が厳しくなる可能性があるとの見方を示した。
中国の専門家は、米欧が様々な法案を成立させて対中政策の法的根拠にしていることに触れ、中国も米欧を真似ただけだと指摘している。
香港城市大学の王江雨教授(法学)は「以前の中国には、法的手段を活用して米国の制裁に報復する政治的な意思も、経済的な力もなかった。今は、そのどちらも持っている」と指摘。
「協力が最高の選択肢だが、米国は協力を望んでいない。このため、こうした新法による報復が次善の策となる。こびへつらうのは最悪の選択肢だ」と述べた。
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