[サンフランシスコ 19日 ロイター] インターネット検索世界最大手の米グーグルGOOG.Oが中国の検索市場から撤退すれば、同社の世界戦略の一歩後退を意味するだけでなく、「上昇に限界はない」とされてきた同社の株価にとってもターニングポイントにもなる可能性がある。
とどまるところを知らない潜在力で投資家を魅了してきたグーグルだが、ネット人口世界一の中国事業を閉鎖することになれば、将来の成長に向けた1つの重要な道が断たれる初めての経験となりかねない。
同社の中国事業をめぐる状況について投資家は、ハイテク銘柄の代表的な成長株として輝いてきたグーグル株を見直す契機とも考えているようだ。
カウフマン・ブラザースのアナリスト、アーロン・ケスラー氏は「中国での事業機会がないとすれば、グーグルへの投資意欲がそがれる」と語る。
中国サイト(Google.cn)の検索結果に対する検閲を停止する方針を発表した1月半ば以降、グーグルの株価はアナリストによる業績予想引き上げにもかかわらず19日までに約6%下落し、時価総額にして約116億ドルが吹き飛んだ。同じ期間にナスダック指数は3.4%上昇している。
アナリスト評価を公表しているトムソン・ロイターのスターマインによると、過去2カ月で、同社の来年の売上高予想は3.1%、1株当たり利益(EPS)予想は2.3%引き上げられている。
グーグルは米国など多くの国のインターネット検索市場で圧倒的優位に立つが、中国では百度公司BIDU.Oに大きく水をあけられている。グーグルが中国撤退の可能性を発表して以降、百度公司の株価は約45%急騰した。
2011年の利益予想に基づく株価収益率は百度公司が約41倍なのに対し、グーグルは約18倍にとどまっている。
RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ロス・サンドラー氏は、世界最大のネット人口を抱える中国が、オンライン広告市場で世界一になる日も遠からず来ると指摘。「そうした成長機会を放棄することが、グーグルやグーグルの株主にとって真の問題だ」と語る。
<チャイナ・オプション>
グーグルの中国事業の先行きは、依然として不透明なままだ。中国政府との間で検閲を受けない検索エンジンの提供について協議しているが、その方向で交渉がまとまるとの見方は少ない。チャイナ・ビジネス・ニュースは19日、匿名のグーグル従業員の話として、中国事業に関する決定が22日に発表される可能性があると報じた。
多くのアナリストは、グーグルは中国サイトを閉鎖するとしても、中国の検索市場で戦うための何らかの代替手段を模索するとみている。中国本土の外で新たな中国語版の検索サイトを立ち上げることも可能だ。ただ、その場合、サイトにアクセスできる中国のネットユーザーはコンピューターに精通した人たちに限られ、中国の広告主がどの程度利用できるかも分からない。
一方、グーグルの携帯端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」も、中国での同社の未来に大きな役割を果たすとみられる。グーグルは携帯電話メーカーに無料でアンドロイドを提供しているが、それによって中国の消費者に直接つながる道が確保され、検索結果ほど政治的に問題にならない方法で広告などのサービスを展開できるかもしれない。
アナリストは、グーグルの中国事業の年間売上高は3─6億ドルとみており、同社の年間総売上高240億ドルに占める割合は極めて限定的だ。
グーグルにとって中国事業を取り巻く状況は逆風だが、今後も成長株であり続けるための別の成長機会は十分あると指摘するアナリストもいる。
シティグループのアナリスト、マーク・マハニー氏は「中国でのエクスポージャーを理由にグーグル株を買ったという人がいるだろうか。投資家はグーグルの世界の検索市場での位置付け、ほぼ全市場で首位に立っているという事実で買っている」と述べている。
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