水野 文也記者
[東京 25日 ロイター] 3月期企業の中間決算発表シーズンが本格化した。ドル安/円高に対する警戒感から、現時点では好決算が目立つにもかかわらず、業績に対して市場では慎重な評価にとどまっている。為替変動による影響のほか、米国の景気悪化懸念により地域別売上高の構成比で収益に差が生じるとみられる一方、製品値上げなど原料高への対応も明暗を分ける要因になり、これらを踏まえて決算発表が一巡した後は物色面で銘柄を選別する動きになるとの見方も出ており、企業業績が株価全体を押し上げるという展開にはなっていない。
<為替差益のゲタが消失>
今回の決算発表シーズンで最も注目されそうなのが、為替変動が収益に及ぼす影響だ。第1四半期の決算発表が行われていた8月前半までドル/円JPY=は118円台にあったが、現在は114円前後で推移しており「これまで輸出型企業の利益にゲタを履かせる格好となっていた為替差益が消え、本当の意味で実力がはっきりしてくる」(SMBCフレンド証券・投資情報室長の松野利彦氏)という。
ただ、現時点で主力の輸出型企業について好調な決算が目立つ。25日の大引け後に中間決算を発表したソニー(6758.T)が、08年3月期の連結営業利益について4400億円から4500億円に上方修正したほか、日立製作所(6501.T)が中間期の営業利益予想を900億円から1210億円に増額。12月期企業で第3四半期決算を発表したキヤノン(7751.T)も、通期の営業利益について7660億円から7730億円にわずかとは言え上方修正した。
週初に中間期の見通しを下方修正(通期については据え置き)し、ネガティブ・サプライズ感が生じたシャープ(6753.T)にしても、制度改正に伴う減価償却費の増加が大きな要因であることから、アナリストから極端に評価を下げる動きは今のところみられない。
それでも、市場では「ここにくるまで決算が良いとしても、よほどのサプライズがない限り、買われる様子はない。そうした意味でソニーや日立の修正を受けたあす26日の株価を見極めたいところ」(東海東京調査センター・シニアマーケットアナリストの矢野正義氏)といった声が出ている。
<輸出企業のモメンタム悪化>
たとえばトヨタ自動車(7203.T)は、23日付日経新聞朝刊で9月中間期連結営業利益(米国会計基準)について、前年同期比で約1割増えて1兆2000億円強になった模様と報じられたものの、材料視されたのは一時的で、その後は年初来安値を更新。25日には昨年8月2日以来の6000円割れとなった。
この点について大和総研・チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏は、第1四半期決算を発表した8月までに比べ、9月以降、モメンタムが悪化したと指摘する。木野内氏によると「貿易統計をみても、北米輸出の落ち込みが顕著になるなど不安が台頭。一度悪化したモメンタムは回復するのが容易ではなく、先行きに対して期待感が出てこない」という。
市場では「新興国の需要拡大で利益成長の余地はあるが、北米向けのマイナスや為替差益が消滅する分の影響を見極めるまで、素直に好決算を評価しようとする動きにならないのではないか」(生保系投信投資顧問の運用担当者)との声も出ており、業績に対する市場の評価が慎重なものになりそうだ。
<地域別の売り上げ構成比や値上げ浸透度などで明暗>
さらに、為替以外の部分でも、北米の景気悪化懸念によって、北米・欧州・新興国の海外売上高の地域別売上構成比や、製品値上げなど原料高への対応など他の変数に対して関心が集まっている。
地域別については、米住宅市場の不振で塩化ビニールメーカー各社が大幅減益となる中で、24日に中間決算を発表した信越化学(4063.T)の同事業は、建設ラッシュに沸く中東やインドへの輸出を伸ばして3割程度の減益にとどめた例が目を引く。
また、23日に印刷用紙、家庭紙などの販売価格が復元を理由として中間期見通しを上方修正した大王製紙(3880.T)は、その後も株価は順調に上値を追っている。
SMBCフレンド証券の松野氏は「今回の決算によって、為替差益などを省いた本来の意味における実力差がはっきりするため、先行き業績によって物色される銘柄が選別される可能性が高い」とコメントしていた。
<好決算の企業多く、株価の下支え効果に注目の声>
一方、業績の内容そのものは悪くはないので、サブプライムローン問題で相場が波乱商状となった場合でも、好決算が株価を支えて株価は大きく崩れないとみる関係者が少なくない。
クレディ・スイス証券・ストラテジストの市川眞一氏は「マクロ面に不安があるため、しばらくは業績の良い銘柄を個別に物色する動きになる」としたうえで「企業は1ケタ後半の増益基調を維持し、これが株価を支える要因になる。2ケタには届かないものの、それは制度変更に伴う減価償却費の増加を考慮すべきだ」と述べる。
東海東京調査センターの矢野氏は「全体のPERが17倍まで下がった現状を考えれば、好決算が目立つここで、売り込むことは難しい」と指摘していた。