February 13, 2008 / 12:54 AM / 12 years ago

〔焦点〕景気は正念場とみる日銀、政策維持しつつ決定会合で幅広い政策対応を議論へ

 中川 泉記者

 [東京 13日 ロイター] 日銀は、現在の国内景気の状況について、前向きメカニズムが崩れないかどうかの正念場を迎えていると捉えており、その行方を見極めるため14、15日に開催する金融政策決定会合で、現状の政策金利を維持する見通し。米経済の後退リスクが次第に大きくなっている中で、世界経済にそれなりの打撃がありうるとの見方が日銀内で強まっており、日本経済も輸出や生産という景気拡大の起点に影響が出かねないとの懸念が高まっている。だが、景気が悪化していることに対応するための利下げ余地は小さく、金利感応度の低い日本経済には効果が薄いとの見方も根強い。このため会合では、将来の可能性も含め幅広い政策の選択肢について議論をすることになりそうだ。

 <米経済指標が悪化、日本への波及懸念高まる>

 日銀では1月半ばの「展望リポートの中間評価」で足元の成長率は潜在成長率をやや下回るが、08年度は2%程度に回復すると発表したばかりだが、米景気後退懸念が強まっていることから「1.5─2.0%の間と見られる潜在成長率への復帰が遅れる可能性」(高知市で岩田一政副総裁)も念頭に置き始めている。

 当初は「米経済が今後1%台半ばに減速することは覚悟しており、世界経済は吸収可能」(福井俊彦総裁、12月3日に名古屋市での各界代表者との懇談で)とみていたが、実際には米国の2007年10─12月期の国内総生産は、年率・前期比プラス0.6%に落ち込んだ。

 さらに1月の米雇用者数は減少に転じ、1月の自動車販売台数は、トヨタをはじめこれまで好調だった日本勢でも軒並み前年割れし、雇用・所得面や個人消費に変調がうかがわれる状況に直面している。米国内の金融機関が融資基準を一段と厳格化し、法人向け・個人向けともにローンが減少していることも明らかとなった。

 米国が打ち出した金融・財政両面での政策についても、底打ち感が出るほどの効果は期待しにくいのではないか、との冷めた見方が、日銀内の一部にも出ている。

 このため「米金融部門と家計部門が本格的なバランスシート調整に陥ると、09年まで米経済は回復しないというL字型回復になる可能性も否定できない」(水野温氏審議委員、1月25日ロイターとのインタビュー)として、米景気の回復は相当遅れるとの見方や「米経済がリセッションに陥る可能性は排除できない」(西村清彦審議委員、1月31日に熊本市での会見)との見通しなどが出てきており、米経済への見方は厳しさを増している。

 世界経済や日本経済についても「米国経済減速の影響を受けないとの考えは、もはや影を潜めつつある」(複数の幹部)という。日銀内の一部では、世界経済が減速しても4%台の成長を維持できるとのIMF見通しは、楽観的過ぎるとの厳しい見方が浮上している。

 <生産起点の循環メカニズムに変調>

 

 国内統計を見ると、鉱工業生産統計の1、2月の生産予測はともに前月比減少となり、日銀内では先行き不透明感の強まりに伴い、企業が生産計画に対し、消極的になっている可能性を指摘する見方が聞かれる。「生産のモメンタムは少し落ちている」(西村委員)との受け止め方も出ており、生産を起点する所得・支出への波及メカニズへの不安は、高まる方向にある。

 12月までの輸出をみると、金額ベースでも数量ベースでも大きな落ち込みはみられないため、日銀は公式見解としてはメカニズムは崩れていないとの見方を維持している。しかし、輸出や生産がこのまま崩れずにはすまないだろうと懸念の声も増えており「1─3月が極めて重要な時期」(複数の幹部)として、新興国向け輸出の勢いや生産計画などの聞き取りなど最新情報の収集に努めている。

 また、物価上昇が与える景気への影響についても、石油製品や食品を中心に国民生活に打撃となる物価上昇圧力が強まっている点は「さまざまな所得移転を伴って経済全体に対して押し下げ圧力をもたらす」(福井総裁:7日衆院予算委員会で)として景気悪化要因になりかねないとの認識だ。特に賃金上昇を伴わない物価上昇が進んでいることに懸念を強める声が多い。 

 <金利感応度低い日本>

 内外経済に不安が募る中で開催されたG7では、国際金融市場の安定のために各国の取り組みや国際的な協調体制が重要だとの認識で一致したが、日銀の取り得る選択肢は限られている。

 西村委員は「利下げ効果は、その時々の経済構造や金融の仕組みに依存するものであり、慎重に考えなければならない」と指摘。水野委員はさらに具体的に「日本経済は過去10年間長低金利政策を続けてきたこともあり、金利感応度が低い経済体質になっており、追加的な景気下支え効果は乏しい。期待インフレ率の上昇もあり、仮に利下げを議論するならば、その副作用についても十分検討が必要」としている。

 利下げでの対応が難しくても、日銀は流動性供給に多様な手段を駆使してきた経験があり、それらを組み合わせることで柔軟に対処することも考えられる。

 ただ、現実に流動性の問題が東京市場や邦銀に発生していない中で、流動性を追加供給するメリットは何か、との見方もある。景気悪化リスクが顕現化した場合にどのような対応が考えられのか、将来の可能性も含め、政策対応の選択肢を丹念に議論していくとみられる。

 

 (ロイター日本語ニュース 編集 田巻 一彦)

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