April 24, 2008 / 3:36 AM / 11 years ago

訂正:〔日銀新体制への期待〕白川総裁は柔軟対応が持ち味、時間軸効果活用も=翁・前日銀金研所長

訂正:本文7段落目の「0.01%」を「0.001%」に訂正します。

 [東京 24日 ロイター] 翁邦雄・前日銀金融研究所所長(現・中央大学大学院特任教授)はロイターとのインタビューで、白川方明日銀総裁の政策スタンスについて、理念にこだわらずに局面変化に応じて柔軟に対応することが持ち味との見方を示した。タカ派的な発言が目立つことについては、上ぶれリスクもありうるとのメッセージであり、金利正常化路線へのこだわりを示すシグナルではないと指摘。白川総裁は市場機能を生かす政策が基本にあり、効果の乏しい利下げではなく時間軸効果などを狙った政策を選択する可能性が高いとの見方を示した。

 

 <一つの理念に偏らず、現実の変化に柔軟対応>

 

 翁氏は日銀で白川総裁の2年後輩にあたる。白川総裁に薦められて総裁と同じシカゴ大学へ留学した。バブルと金融政策に関する共著もあり、今回、白川総裁が金融政策に関する書籍を出版した際にもコメントを求められている。

 長年、白川総裁をよく知る立場から翁氏は「福井前総裁とは実務的である点では共通しているが、福井前総裁が理念型であるのに対して、白川総裁は理念や学派に偏らず、柔軟に予断を持たずに対応することが持ち味だ」との見方を示す。過去の経験を振り返っても、現実の局面が予想以上に悪化した場合、それまでの対応を反省して路線転換を図ってきた柔軟性があるとも指摘。

 

 金融市場で白川総裁がタカ派であると受け止められていることについて翁氏は否定的な見方を示し、「総裁自身、何か偏った考え方に陥ることなく、予断を持たないように戒めている。レッテルを貼られることは本意ではないはず」と述べた。白川総裁の「霧が急きょ晴れることもありえる。調整が終了すれば同じ金利水準でも経済に対する効果は違ってくる」などの発言は「必ずしも金利正常化にこだわっているわけではないし、そのシグナルでもない。上ぶれのリスクシナリオもありえるとのメッセージだ」と解説した。

 

 <当面の政策対応は市場動向を様子見、一時的利下げより時間軸が有効>

 

 世界経済が減速する一方でインフレリスクも強まっているなか、各国の金融政策の方向性は上下まちまちとなっているが、白川総裁はどのようなスタンスで臨むのか──。翁氏は「明確なシグナルを出すよりも、十分緩和的な金利水準のもとで市場の金利形成を見ようというスタンスだろう」との見方を示した。

 さらに「まず日本は政策金利がかなり低い水準にあるという現状がある。その上で、足元の金利を動かすことが有効なのか、それとも先行きへのシグナルを出すのが有効なのかという考え方がある」と指摘。事態の悪化に対応して利下げをしても、一時的なものにとどまり、その後の政策の方向性が読みづらい状況になれば、経済に影響する長めの金利は低下しない可能性がある。一方、足元の金利を下げずに、当分無理はしないというメッセージを出すなど時間軸効果を狙ったほうが市場の安定につながり効果があるとの見方を示した。 

 0.5%というわずかな政策金利を引き下げるとしても、「どこまで下げるかという問題について、白川総裁は市場機能を壊してまで利下げするのはやり過ぎとの考えがある。かつてのように0.001%(訂正)まで下げるという選択はないだろう」と述べた。マーケットが機能してこそ中央銀行の役割が果たせるという考えが総裁にはあるため、過去に行われた量的緩和政策まで踏み込むことに疑問を呈した。

 

 <総裁はインフレターゲットには懐疑的>

  

 一方、食品や原油、資源などの価格高騰でインフレ懸念が強まったとしても、「一次産品の価格上昇を無理に抑え込むような短期的な引き締め政策はショックや調整が大きくなることから、無理な対応はしない」との見方を示した。

 また、白川総裁が長い目でみた物価の安定を重視する立場であることを強調していることについて翁氏は「例えばバブル後の消費者物価は10年単位でみてデフレへと変化し、経済に大きな打撃を与えた。短期的な物価安定よりも、長期で見て物価が安定することを目指したもの」と解説。したがって「白川総裁は短期的な物価のレンジを達成するようなインフレターゲティングには懐疑的なスタンスだ」と説明した。

 

 <中央銀行機能の強化に向けての意欲と悩みを抱えて出発>

 

 翁氏は、白川総裁に対して「趣味は金融政策というよりは中央銀行そのものだと本人をからかっている」ことを打ち明ける。総裁にとっては5年間という任期はやろうとしている中央銀行機能の強化を実現するには短すぎるとして「各国中銀、特に米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)に比べて日銀の中央銀行としての機能は脆弱なものだという強い認識を白川総裁は持っている」と述べた。

 具体的には、リサーチ機能や日銀ネットの決済システムなど、遅れをとっている重要な機能の強化が課題になるとした。ただし、日銀の組織自体は人員減少傾向にあり、「縮小傾向の中でいかにレバレッジを聞かせて機能を強化させるのか、難しい問題に取り組まねばならない」と見ている。

 このため、翁氏は「白川総裁が難しい経済局面での金融政策のかじ取りを迫られていることや、こうした中央銀行機能強化に取り組むためには、空席となっているもう一人の副総裁は実務や内部管理に長けた人物がふさわしい」と述べた。

 

 *このインタビューは23日に行いました。

 

 (ロイター日本語ニュース 中川泉記者;編集 石田仁志)

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