May 1, 2008 / 10:27 AM / 12 years ago

再送:インタビュー:野村証、人事政策と情報管理を再考すべき=インサイダー事件で郷原・桐蔭横浜大学教授

 *この記事は1日午後7時25分に送信しました。

 [東京 1日 ロイター] 桐蔭横浜大学法科大学院の郷原信郎教授(コンプライアンス研究センター長)は、野村証券の元社員によるインサイダー事件について、野村証券は、今回の事件を個人の行為ととらえず、組織に問題ないか徹底的に調査する必要があると指摘した。事業拡大を計画する際は、人事政策と情報管理のバランスが重要で、会社は人事面の制約を認識した上で、情報管理を徹底する必要があると主張。こうした制約条件に対する認識が日本の企業では一般化していないため、他の企業でも同じような問題が発生する可能性があると述べた。

 M&A(企業の合併・買収)のような企業の機密情報を扱う部署では、社員の銀行通帳を会社に開示させるなどして会社が個人的な資産運用の状況を把握できるようにすることも、証券会社の透明性・信頼性を高める1つの案だとした。

 郷原教授は、元検事で、新日本監査法人の元職員が起こしたインサイダー取引事件の原因調査や再発防止策の提言をするために、同監査法人が外部の弁護士などを集めて立ち上げた「第三者委員会」の委員長を務めている。

 インタビューの主な内容は以下の通り。

 ──今回の野村証券の事件をどう思うか。

 「そもそもの間違いは、コンプライアンスを法令順守と考え、経営や事業とは別のところでやらなければいけないと思っていることだ。むしろ、経営の中にコンプライアンスをビルトインしていく必要がある。コンプライアンスについて、野村はこれ以上はないというくらい徹底していた。しかし、それは経営と切り離されたものだったと思う」

 ──何が重要か。

 「肝心なのは人の配置だ。M&A部門を急拡大する中で、どういう人間にその部門を担わせるのかという人事政策がなかったのではないか。コンプライアンスには情報管理と人事面の2つがあるが、情報管理よりも人事面の方が大きい」

 ──具体的にどうマネージすればいいか。

 「業務を拡大する中で、ハード面の情報管理に加え、これは絶対大丈夫という人材に担わせないといけない。そういう人が確保できなければ、それがその事業拡大の限界という発想をすべきだ。しかし、野村はまず事業拡大の方が先にあり、その事業をやるためのコンプライアンスは教育や研修でいいという考え方が定着していたようだ。そうではなく、制約がある中で事業を展開していくという発想が必要だ」

 「逮捕された元社員は有能だったかもしれないが、彼を採用し企業情報部に送り込む人事配置に問題があったのではないか。そこを検証し見直さなければ、デリケートな情報を扱う業務は、安心して野村に任せられないということになる。日本語、中国語の両方をこなせる人材を確保すれば、他社に先駆けてアジアに展開できるという事業上大きなメリットはあったかもしれない。しかし、文化や国籍が違えば、日本人には見えないものもあるだろう」

 ──社内教育の強化は必要か。

 「コンプライアンスをいくら頑張っても、今回のようなことは起きる。野村の教育研修が不十分だったかといえば、そういう問題でもない。従来のコンプライアンスという考え方では防止できない。ではどうすればいいか。経営の中に人事戦略、業務戦略があって、その中にリスク要因を取り込んでいかないと無理だ。コンプライアンスの質的な転換が迫られている」

 ──インサイダー取引を減らすには、課徴金の引き上げが一定の効果を発揮すると思うか。

 「インサイダー取引は、情報の不正使用の一形態にすぎない。それが株式売買とつながったときにインサイダー取引になる。最近のNHKや監査法人、証券会社などのインサイダー取引問題は、一般企業のインサイダー問題と全く性格が違う。機密情報を提供してもらってその情報を加工し、公開することを生業にしている企業や団体は、個人的にその情報を使わないことが職業の根幹だ。一般とは違い、情報に対する特別な倫理観が求められる」

 ──どうすれば、情報に対する特別な倫理観を徹底できるか。

 「個人の資産運用に関して、会社に全ての情報を提示させ、会社が管理するやり方がある。会社として最高レベルのセキュリティーをかけるとはそういうことだ。給与はどの銀行に振り込まれるか、社員と家族の預金通帳を会社に提示させる。資金が給与口座からどこかネット証券の口座に飛んでいたら、会社はその資金移動を把握できる。一部監査法人の代表社員は、クライアント企業の株の購入につながらないように銀行の通帳を開示している。M&A部隊だけでなく、大きな資産運用を任されているファンドマネージャーなども、無菌室で仕事をしてもらうのと同じにすればいい」

 ──インサイダー取引問題を起した新日本監査法人の第三者委員会の委員長を勤めている。その立場からみて野村の対応をどうみるか。

 「新日本監査法人は、理事長の会見当日に調査委員会のメンバーをそろえて公表するなど事前に対策を取り、会見で今後の対策を打ち出すことができた。理事長は会見で、新日本の監査人個人の犯罪だとは一切言わなかった。野村は(4月22日の)会見で(渡部)社長が今回の事件を個人的な犯罪だと言った。皆そう思っているところで、当事者がそれを言ってはいけない。それを口に出さず、組織に問題ないか徹底的に調査すると発言すべきだった。クライシスマネジメントの基本ができていない」

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