August 6, 2008 / 4:33 AM / 10 years ago

COLUMN-〔インサイト〕五輪後に景気減速不可避の中国=野村資本市場研 関氏

 <鮮明になった調整色>

 8日に北京オリンピックが開幕する。東京オリンピック当時の日本のように、中国においても、大会まで投資と消費の盛り上がりで景気が堅調に推移するが、その後の反動で景気が悪化するだろうという見方が日本では一般的である。

 しかし、内外の経済情勢の悪化を受けて、中国経済は、オリンピックを待たずに、すでに緩やかな調整局面に入っている。今年の第2四半期の成長率は10.1%と、水準そのものは依然として高いものの、内需と外需がともに減速していることを反映して、ピークであった昨年の第2・四半期の12.6%と比べて2.5ポイント低下している。

 まず外需では、輸出の伸びが鈍化し、貿易黒字が縮小傾向に転じている。ドル・ベースで見て、今年の上半期の輸出の伸びは、前年比21.9%にとどまっており、昨年の上半期の27.6%を下回っている。その上にインフレと人民元の切り上げの加速を反映した輸出価格の大幅な上昇を割り引けば、実質ベースでの伸びは名目の数字よりはるかに小さくなる。

 一方、今年の上半期の輸入の伸びは30.6%と、輸出の伸びを大幅に上回っている。これは内需拡大による輸入の増加というよりも、石油をはじめとする1次産品の価格上昇分を反映した結果である。このためこれまで増え続けてきた貿易黒字は、2008年に入ってから、前年の水準を下回るようになった。

 また、内需に関しては、投資の伸びが鈍化している一方で、消費が伸び続けているものの、その持続性に疑問が生じている。

 2008年上半期の固定資産投資は、名目ベースでは、前年比26.3%と昨年の上半期をやや上回る伸びを示しているが、投資財価格の上昇分(前年比10%)を除けば、実質ベースでの伸びの鈍化は顕著になってきている。景気が減速し、金融引き締めが強化される中で、企業の収益が伸び悩んできており、資金調達のコストも高まっている。これを背景に、投資の一層の減速が避けられない。

 こうした中で、投資の代わりに消費が内需拡大のエンジンになると期待する声も一部では聞こえるが、その実現は困難であると言わざるを得ない。現にガソリン価格の高騰による影響もあって、これまで消費をけん引してきた自動車の販売台数は、今年の3月をピークに減少傾向に転じている。

 <注目されるインフレと資産価格の行方>

 これまでの好景気と人民元の上昇圧力をかわすための外為市場への(ドル買い/人民元売り)介入に伴う流動性の膨張を背景に、インフレが高騰している。消費者物価(CPI)で見たインフレ率は、今年の上半期に前年比7.9%と、昨年年間の4.8%を大幅に上回っている。

 インフレ抑制のため、当局は利上げをはじめとする金融引き締め政策を採ってきた。しかし、中国が金利を上げようとすると、より高い収益率を求める大量の資金が海外から中国に流れ込み、その結果、流動性が抑えられるどころか、一層膨張してしまう。こうした中で当局は、引き締めの手段として利上げに代わり、人民元の切り上げを重視するようになっている。しかし、人民元高は、外需主導型成長から、内需主導型成長への転換のきっかけになるが、短期的には景気の悪化に拍車をかけることになる。

 中国では、これまでインフレ率(CPI、前年比)が、約3四半期遅れて経済成長率(前年比)の動きに追随するという傾向が見られる。直近においても、GDPが昨年第2・四半期にピークを打ち低下傾向に転じたことを受けて、インフレ率も今年の第1・四半期をピークに第2・四半期にやや低下している。1998年以降のデータに基づいて推計すると、成長率が1%上昇(低下)すれば、3四半期後のインフレ率が1.18%上昇(低下)するという結果が得られた。このように景気の減速は、インフレの沈静化の前提条件である。

 物価の上昇とは対照的に、昨年10月以降、株価が急落しており、これまで好調だった不動産市況も変調を見せている。2005年後半以降、株価と不動産価格との上昇が互いに促進しあうという好循環が見られたが、株価の急落をきっかけに、これが下落の連鎖に変わらないかと懸念され始めている。

 <ソフトランディングに向けて>

 

 日本の経験が示すように、株とともに不動産バブルが崩壊すれば、銀行部門の一部の融資が回収不能となり、不良債権比率の上昇は、貸し渋りという現象をもたらす。

 また、資産価格の暴落により、投資家の資産が目減りし、消費が低迷する一方、企業の資金調達コストが高まるため、投資も鈍化せざるを得ない。世界経済の減速と原油価格の急騰も加わり、中国は来年まである程度の調整が避けられない。

 バブル崩壊に伴って、「失われた10年」に陥った1990年代の日本のように、中国も長期にわたって低迷するという懸念もあるが、このような可能性は小さいと見ている。中国はいまだ「新興国」であり、経済発展の段階が1990年代の日本よりも1960年代の日本に近く、潜在成長率も約10%と高くなっている。東京オリンピック後の日本のように、比較的短い調整期間を経て、力強い回復に向かうだろう。回復のきっかけは、景気の減速とともにインフレ沈静化の兆しが見えるようになり、金融政策のスタンスも引き締めから緩和へと転換されることであろう。

 ただ、このようなソフトランディング・シナリオを覆すリスク要因として、不動産価格がどの程度調整されるのか、また世界経済の低迷がどの程度長引くのかを見ておく必要がある。

 

 関志雄 野村資本市場研究所 シニアフェロー

 

 (6日 東京)

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