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再送:COLUMN-〔インサイト〕米金融危機、最悪ケースでは現金への逃避現象顕在化へ=エコノミスト 岡田氏
2008年9月17日 / 04:34 / 9年前

再送:COLUMN-〔インサイト〕米金融危機、最悪ケースでは現金への逃避現象顕在化へ=エコノミスト 岡田氏

*見出しの誤字を修正して再送します。

 <思い返される三洋証券の破たん>

 1997年に始まった日本の金融危機は、最初に業界中堅の証券会社であった三洋証券の倒産がきっかけとなった。この証券会社の規模自体は、決して巨大ではなく、それだけで日本の金融システムを破たんに追い込むようなものではなかった。

 だが、コール市場(金融機関相互の短期資金市場)の参加者であった三洋証券を、事業会社を前提とした当時の破産法制の下で処理したため、一時的とはいえ、債務不履行が生じてしまったのである。コール市場で取引される資金は、多くが無担保であり、翌日決済されるものだ。つまり、金融機関にとっては現金と同じものなのである。その資金に債務不履行が生じたインパクトは巨大であり、三洋証券の破たんの日を境にして、コール市場は事実上機能不全に陥ってしまったのである。

 こうなると、金融機関は、たとえ十二分な優良資産を保有していても、日々の決済資金の調達に不自由を感ずることになる。まして市場参加者からその財務状態について、多少でも疑念の目で見られている金融機関は、直ちに決済資金の調達に窮し、それが金融システム全体に連鎖し始めることとなる。事実、三洋証券の破たんは直ちに北海道拓殖銀行の破たんを引き起こし、いわばコール市場での取り付け騒ぎともいうべき状態が引き起こされ、日本の金融システムは正真正銘の危機へと突入することとなったのである。

 このような危機の連鎖を防ぐために中央銀行は最後の貸し手という機能を持っている。だが、その対象は伝統的な商業銀行に限定されており、証券会社は対象外であったのだ。もちろん1965年の山一証券の危機に際しては、当時の田中角栄蔵相の強権発動によって、例外的に日銀による山一証券への融資(いわゆる日銀特融)が行われたのであり、97年にも政策当局者にその決断があれば、同じような処理は不可能ではなかった。

 だが、65年の危機は高度経済成長の最中の出来事であり、良くも悪くも損失の先送りは、結果的に問題を解消できる可能性を十二分に持っていた。これに対し、三洋証券の破たんは、誰の目にも明らかに、それから始まる巨大な危機の序章に過ぎず、単なる損失先送りのための日銀特融では不十分であり、不良債権処理の全体的なデザインが不可欠であったのだ。それにまったくめどが立たなかったため、いわば見切り発車で三洋証券の破たん処理が行われてしまったのである。

 <FRBの制度変更で可能になった投資銀への融資>

 こうした過去を思い出しながら、現在米国で進行している金融危機を眺めてみよう。今回の危機が米国で顕在化したのは、昨年のベアー・スターンズBSC.Nの破たんであった。この際には、米連邦準備理事会(FRB)はJPモルガン(JPM.N)を用いた迂回(うかい)融資という手段を使い、いわば山一証券への特融と同じような形で危機の連鎖を防ぐことに成功した。

 そして、その直後には制度変更が行われ、FRBは投資銀行に対しても、決済資金の供給が可能となっているのである。詳細は今日(9月15日)の段階では不明であるが、このスキームが機能すれば、リーマン・ブラザースLEH.Nの破たんは、極端な危機の発生を招かずに処理できる可能性がある。もちろん、AIG(AIG.N)の資本調達の困難に見られるように、いわば危機のモグラたたき状態は当面終わることはないだろう。

 それを全て鎮圧し、広い意味での決済システムを防衛できるか否か、FRBの任務という以上に、連邦政府の責務ということになる。現在の段階で、それがどのように進行し、成功するのか失敗するのかを予言することは、筆者の能力を超えるが、今後の展開で何に注目すべきかという点では、いくつかのヒントを述べることは可能ではないかと思う。

 <金融危機時にテイラールールは機能せず>

 

 第1は、リーマン・ブラザースの破たんと同時に起こった原油先物価格の急落の含意である。現時点で、米消費者物価上昇率は、ヘッドラインでは5%前後という近年にない高い率であり、金融緩和どころか、金利引き締めを求める有力な意見すら存在する。ところが、食料とエネルギーを除く、いわゆるコア消費者物価指数を見ると依然としてインフレ率は2%台にとどまっているのだ。

 これは、原油に代表される資源価格の高騰こそが、ヘッドラインインフレ率の上昇の原因であることを示している。すなわち資源価格の上昇に歯止めが掛かれば、早晩ヘッドラインインフレ率も2%台まで低下するということを意味する。すでに失業率は6%台に上昇している。それでも過去の平時に適用できたテイラールールによれば、FFレートは現在の2%よりも1.5%高い水準が妥当ということになるのだが(そうしたことを理由に、最近まで利上げを主張する地区連銀総裁がいたわけだ)、金融危機によるリスク回避行動の高まりの可能性を考慮すれば、利下げは十分に考慮に値するものである。

 <考慮されるべき金融緩和>

 日本の経験に従えば、いったんリスク回避行動が激化すると、伝統的な意味での金融政策の有効性は急速に失われてしまう。すでに原油市場でバブルの崩壊が生じていることは、リスク回避行動の激化の予兆なのかもしれない。だとすれば、平時のテイラールールに従うことは、決して賢明なことではなくなるのである。もちろん原油価格の低下は、一方で企業収益や家計の実質所得にプラスの影響をあたえるわけであり、それを後押しするような金融緩和が考慮されるべきだろう。

 第2に、それでもリスク回避行動が激化する場合には、現在は低下方向にある長期債利回りや、低下している為替レート(ドルから見れば外貨は上昇)が、逆転することになる。92年から95年にかけてわれわれが東京で目撃したのは、株安/債券安/ドル安の同時生起という異常な状況であった。通常なら株価の低下は金利低下(債券高)や円安(ドル高)を招くはずなのに、逆の現象が起こったのである。

 これは、換金性の高い資産を一斉に売却する極度のリスク回避行動の結果である。言い換えると、質への逃避がさらにすすみ、現金への逃避が起こったのだ。もしも、米国が適切な政策によってこうした事態の進行を阻止できなければ、最悪のシナリオを用意しなければならなくなるのである。

 

 岡田靖 エコノミスト

 (17日 東京)

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