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〔焦点〕深刻なドル不足と信用収縮にあえぐ米欧市場、日本の役割に注目集まる
2008年9月17日 / 04:50 / 9年後

〔焦点〕深刻なドル不足と信用収縮にあえぐ米欧市場、日本の役割に注目集まる

 森 佳子記者

[東京 17日 ロイター] 欧米金融機関が日本での資金調達を活発化させる中、銀行間でドルの短期資金を融通する市場では金利が急騰し、米連邦準備理事会(FRB)による金融機関向け窓口貸出が過去最高水準に達している。これらの全ての現象は、最も流動性に富むはずの「基軸通貨=ドル」が不足していることを示している。米金融不安が巻き起こした信用収縮は深刻な状況で、相対的に傷の浅い日本市場や邦銀が最後の貸し手として注目を浴び始めた。ただ、ドル危機がさらに進行すれば、グローバルにドル資金の融通が困難になるリスクをはらんでいる。 

 

 <機能不全に陥るドルの資金市場>

 

 米信用バブル崩壊は、リーマン・ブラザーズLEH.Nをはじめ、多くの金融機関やヘッジファンドを破たんや経営危機に追い込んだ。銀行間でドル資金を貸借する短期金融市場では、取引相手の信用リスク(カウンターバーティー・リスク)が強く意識され、信用収縮が一段と進んでいる。

 「危ないものは持たない、という空気が金融界に充満し、極端な信用収縮が起きている。将来、危ないドルは持たない、という話になれば、ドルの基軸通貨性が本格的に脅かされるだろう」とインベスター・セレクト・アドバイザーズ東京支店長の関村正悟氏は述べている。

 FRB(米連邦準備理事会)は16日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、FF金利の誘導目標を2%に据え置くことを決定した。大幅な金融緩和がドル安を誘発するリスクもある中で、市場では「Fedのこれまでの資金供給は中途半端。市場金利をゼロに戻すだけではなく、量的緩和も実施する覚悟がないと、この危機は乗り越えられないだろう」(資金担当マネージャー)との声も上がっている。

 前FRB議長アラン・グリーンスパン氏は15日「今回の金融危機は100年に1度あるかないかの深刻なもの」と語った。

 日米欧の中央銀行は、金融不安を和らげるために大量資金供給を実施しているが、市場では、ドル資金の出し(供給)が極端に細った状態が続いている。「ドルの短期市場は機能不全に陥っている。長期市場では社債発行もまともにできない状態だ」とバークレイズ銀行・チーフストラテジスト梅本徹氏は述べる。

 複数の市場筋によると、ドルの短期市場では、期間3カ月を超える長めの資金に関し、調達不可能またはごく限られた金額しか調達できず、優良行でも1カ月物の資金は1度に5億ドル程度しか調達できないのが実情だ。ドルの流動性枯渇は「ドルが既に基軸通貨としての体をなしていない証拠」(エコノミスト)との指摘もある。

 FRBは、ドル危機とも呼べる事態の収束に向け、様々な資金供給手段を導入しているが、深刻なドル・クランチは突然、繰り返し、到来する。ニューヨーク連銀によると、銀行間で短期資金を融通するフェデラルファンド(FF)市場では、リーマン破たんを受けた15日の取引で、FFレートが7%まで急騰し、FRBの誘導目標の3倍を超える水準に達した。

 FRBが9月9日に実施したターム物資金入札(資金供給オペ)では、最低落札利回りが2.530%となり、前回8月25日実施分の同2.380%から急上昇した。

 全米の地区連銀による金融機関向けの窓口貸出(公定歩合を基準とする貸付)は、9月10日時点で過去最高の236億ドルに達した。金融機関の間では、同貸し出しに頼ることが、財務のぜい弱さの表れとみなされることから、年初には窓口借入を控える傾向があったが、現在は背に腹は変えられない状況になってきたようだ。

   

 

 <金融版『駆け込み寺』のサムライ債>

 

 信用危機が現在ほど深刻化する以前から、一部の欧米投資銀行は、短期資金に頼る部分を減らし、安定的な長期資金調達を増やす動きを見せており、これは日本でのサムライ債(非居住者による円建て債券)発行増となって現れた。最近では、この動きにドル市場の目詰まり要因が加わり、サムライ債は発行ラッシュとなっている。

 今年これまでに発行された金額は2兆5427億円で、過去最高だった2000年の2兆8567億円に迫る。

 直近では、米シティグループ(C.N)による過去最大規模の3150億円のサムライ債をはじめ、豪ウェストパック銀(WBC.AX)、オーストラリア・ニュージーランド銀(ANZ.AX)、クレディ・スイス・グループなど大手金融機関の発行が相次いでいる。  

 日本の機関投資家や個人投資家の間では、国内の低金利に比べて高利回りが得られるサムライ債への需要が高いが、サムライ債発行の常連だったリーマンのサムライ債(発行総額1950億円)が16日にデフォルト(債務不履行)となる見通しとなったことで、銘柄選別が進みそうだ。

 実際、17日になってソシエテ・ジェネラル(SOGN.PA)とドイツ銀(DBKGn.DE)がサムライ債の起債延期を決めた。    

 

 <邦銀の海外業務拡大>

 

 活況を呈していたサムライ債の発行は、8月に一時的に下火になった。サムライ債の発行体である欧米金融機関は、ベーシス・スワップを使って円資金をドルに転換するが、7月半ばからドルの資金調達コスト(ドル/円ベーシス・スワップのマイナス・スプレッド)が急拡大したため、一時的にサムライ債の発行が抑制された。

 背景には、欧米金融機関のサムライ債を通じたドル資金調達の拡大に加えて、海外業務拡大に伴い、ドル資金調達ニーズが高まった邦銀のドル需要があるという。

 米証券化商品に関わる損失が欧米銀に比べて小さく財務基盤が相対的に安定している邦銀は、欧米銀が融資に慎重になるなか、外国企業向けの協調融資を大幅に伸ばしてきた。日銀によると、邦銀海外支店の貸出残高は7月末に35兆7227億円となり昨年7月末の26兆3642億円から急拡大している。

 サムライ債や、邦銀の海外業務拡大は、ドルの流動性供給に一定の役割を果たしているが、ドルの資金調達コストが一段と上昇すれば、ドル建て融資を縮小せざるを得なくなるだろう。これは、ジャパンプレミアムの拡大でファンディング・コストが上昇し、邦銀が海外アセットを縮小に追い込まれた90年代後半と同様だ。

 

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