November 21, 2008 / 4:32 AM / 10 years ago

COLUMN-〔インサイト〕世界的金融危機の中国への影響は限定的、目立つデカップリング現象=野村資本市場研 関氏

 中国経済は2003年以来、5年連続の2けた成長を経て、緩やかな調整局面に入っている。それでも深刻な金融危機に見舞われている米国やその影響を強く受けている日本、欧州諸国と比べると、むしろ好調さが目立っており、景気のデカップリング(非連動性)という現象が鮮明になっている。

 <薄い中国と米国との経済成長率の連動性>

 サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン )問題を契機に、米国経済が急速に冷え込んできており、その中国経済への悪影響が懸念されるが、過度に悲観する必要はない。国際通貨基金(IMF)の推計によると、米国の成長率に対する中国の成長率の弾性値は、アジア各国・地域の中で最も低い0.1%にとどまり、日本の0.3%よりも小さくなっている。これは米国の成長率が1%下がれば、日本の成長率は0.3%押し下げられることになるが、中国の成長率は0.1%しか下がらないことを意味する。

 また、中国の対米輸出依存度(対米輸出の対GDP比)は日本のそれを大幅に上回っているにもかかわらず、次の理由から、国内総生産(GDP)成長率(実質)で見た米国経済との連動性が日本より低くなっている。

 まず、中国の対米輸出依存度は、見かけほど高くない。中国では、貿易財(輸出入)は国際価格で取引されているが、非貿易財(サービス)の価格が日本など先進国よりはるかに低くなっている。購買力平価(PPP)を考慮したGDPをベースに計算すれば、中国の対米依存度は、日本とほぼ同水準である。

 その上、中国の対外貿易の半分は加工貿易であり、輸出される製品の中には、国内で付けた付加価値よりも、海外から輸入される部品や中間財が多く含まれている。日本の場合は、輸出に含まれている「輸入コンテンツ」の比率が比較的低い。これを考慮すると、中国の対米依存度は、日本を大幅に下回るはずである。

 中国は資本取引に対して厳しい規制が敷かれており、貿易と比べて、資本移動の規模が小さくなっている。特に中国の証券市場は対外開放度が低く、株価は海外要因よりも主に国内要因に左右され、海外との連動性は必ずしも高くない。中国の金融機関は保有している外貨資産が少なく、今回のサブプライムローンの不良債権化による直接的影響も小さい。

 <動き出した景気対策>

 確かに内外環境の悪化を受けて、中国経済も減速を余儀なくされているが、当局は金融政策や財政政策などを発動する自由度を十分確保している。

 まず、今年2月に8.7%という12年ぶりの高水準に達したインフレ率(CPI、前年比)は、10月には4.0%まで低下している。これを背景に当局は9月以降、利下げや預金準備比率引き下げ、総量規制の緩和などを実施している。景気の減速と石油価格の低下を受けてインフレがいっそう沈静化すると予想され、金融緩和の余地がさらに広がるものとみられる。

 第2に人民元の切り上げ圧力が収まりつつある。人民元の切り上げは2007年から加速していたが、今年7月中旬以降は一段落している。海外で取引されている人民元の先物(NDF、1年物)に至っては急落しており、現物に対するプレミアムも2008年春に記録した10%を超えた水準から、若干のマイナスに転じている。これはホットマネーの流入、ひいてはインフレの上昇を招いた人民元の切り上げ期待が収まっていることを示している。その結果、金融政策だけでなく、人民元切り下げを含む為替政策の自由度も高まっている。

 第3に中国は財政面においても、減税や支出拡大を通じて景気を刺激する余裕を持っている。2007年の中国における中央政府の財政黒字の対GDP比が1.1%に達する一方で、国債残高の対GDP比は21.1%にとどまっている。

 これに対して、日本における中央政府の財政赤字と国債残高の対GDP比は、それぞれ2.5%と164.1%に上っている(いずれもIMF調べ)。1997年─1998年のアジア金融危機の時に中国は積極的財政政策を中心に景気対策に取り組んだが、今回も必要に応じた財政政策の発動が可能である。

 すでに中国政府は11月9日に、1)安価な住宅の建設、2)農村基盤の整備、3)鉄道などインフラ建設、4)医療、文化、教育事業の促進、5)環境対策の強化、6)技術革新の促進、7)震災被災地の復興加速、8)国民の収入引き上げ、9)増値税(付加価値税)の減税、10)銀行貸し出しの拡大──の10項目に及ぶ拡張的財政政策を打ち出している。その総投資額は、2010年末までに4兆元(約57兆円)に達する見込みである。

 第4に中国は、1.9兆ドルに上る外貨準備を保有しているため、拡張的金融・財政政策を採って内需の拡大を図った結果、経常収支が大幅に悪化しても、直ちに外貨不足に陥ることはない。また、アジア金融危機当時のタイや韓国、インドネシアのように通貨の投機に遭って、大幅な切り下げを余儀なくされる心配もない。

 <減速しながらも一人勝ちの様相示す中国>

 一方、米国発の金融危機の影響を受けて、世界経済は2008年に続いて2009年もさらなる景気の減速が避けられないとみられる。11月に発表されたIMFの世界経済見通し(改訂見通し)によると、2009年の日米欧は軒並みマイナス成長になり、世界経済成長率も2008年の3.7%から2.2%に低下するが、中国は減速基調が続くものの、2009年も8.5%という比較的高成長を維持できると予想される。

 中国のGDP規模(購買力平価ベース)が世界の12.0%に当たることを合わせて考えれば、中国による世界経済成長への寄与度は、全体(2.2%)の半分近くに相当する1.02%(8.5%X12.0%)に上ることになる。このように今回の米国発金融危機は、中国がグローバル大国として台頭することを象徴する出来事になりそうである。

 

 関志雄 野村資本市場研究所 シニアフェロー

 

 (21日 東京)

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