November 3, 2008 / 10:57 PM / 10 years ago

再送:〔焦点〕日銀の0.2%利下げ、ゼロ金利回帰せず流動性供給対応の可能性

*この記事は31日午後9時09分に送信しました。

 

 中川 泉記者

 [東京 31日 ロイター] 世界的な金融混乱の波が日本にも押し寄せ、日銀も31日に利下げに追い込まれた。0.5%という低金利の下で下げ幅を0.2%にとどめる提案は、マーケットの意表を突いた内容だったが、市場の一部ではゼロ金利に再突入せずに大量の資金供給を可能にする対応との見方が出ている。白川方明総裁自身も同日の会見で、ゼロ金利の弊害を指摘。この先の金融情勢の悪化には流動性対策を主眼に対応していく方向性を強くにじませた。さらに一段の景気悪化に対し金融政策は景気調整を打ち消すには無力との認識を示し、何ができるか対応策を検討したいと述べ、かつてのゼロ金利政策とは別の新しい政策スタイルを模索していく可能性がある。

 <直前まで利下げに距離置いていた日銀>

 「0.5%という金利水準は、十分緩和的との直前までの説明と食い違いがある」 。今回の利下げの決定に対し、民間エコノミストや総裁会見に出席した記者からは、疑問の声が相次いだ。金融危機が深刻化して各国が協調利下げに踏み切った10月8日にも、日銀は利下げに加わらなかった理由として、国内金融市場の相対的な安定と0.5%という極めて低い金利水準を理由に挙げていた。

 27日には山口広秀副総裁が就任会見で「現在の政策金利は経済・物価情勢からみて極めて低く、緩和的な水準が維持されている」と発言したばかり。円高・株安の進行と利下げすることの効果について、複数の日銀幹部が積極的には評価しないという見方を示していた。

 なぜ、突然の方針転換となったのか。その理由について白川総裁は「株下落や円高、社債スプレッド拡大などの金融市場の変化や、設備、輸出、生産といった経済情勢の変化」を挙げ、金融緩和状態を確保していくためと説明。利下げの判断を下したのは、今回の金融政策決定会合の直前だったことを明らかにした。

 会見では金融市場の動向に結果として追随する形で追い込まれたと印象があるとの質問も出たが、白川総裁は「私は市場の価格発見機能を大事にしたい」との姿勢を示し、市場追随との見方をまったくは否定しなかった。ただ「時には市場も行き過ぎることがあり100%追随するわけではなく、両者の微妙なさじ加減が大事」と付け加えた。

 <下げ幅縮小で市場機能重視>

 白川総裁は、市場機能を重視すると同時に、低金利継続や景気上振れリスクへの警戒感が小さくなり、多くの市場参加者が安心しきっている時にこそ「バブルの発生が水面下で進行していることに注意を払うべきと認識している」(関係筋)との考え方を持っているという。白川総裁自身が、今回の利下げ決断に際して、その副作用について熟慮し、ぎりぎりの選択をしたのではないかとみられる。

 一方で、利下げ幅をめぐり、利下げ賛成の7人の意見が割れ、最終的に0.3%の政策金利案が賛成4対反対4となり議長裁量で決定されるという日銀にとって初めての経緯をたどった。

 反対4人のうち3人は利下げ幅を総裁提案より大きい0.25%にするよう主張した。たった0.05%の違いをめぐり、賛成と反対に分かれたほどの議論が行われたのは、極めて低い金利水準における0.05%という金利が、市場機能にとって重要であると白川総裁が判断したためだ。

 白川総裁はゼロ金利への回帰も否定的な見解を示した。「ゼロ金利になると市場取引のコストもカバーできなくなり、取引のインセンティブ自体がなくなる」と指摘し「本来はゼロ金利下では潤沢な資金供給がなされるはずだが、かえって市場で資金が取れなくなる事態が起こる」と危ぐを示した。

 今回、利下げと同時に超過準備預金への0.1%の付利を決定したことで、資金の出し手は事実上、市場で0.1%以下での資金運用を行わなくなる。市場の下限金利は0.1%となる仕組みを導入し、今後、大量資金供給オペが必要となった際に、それ以上の金利低下を防ぐことができる。言い換えると、これ以上の利下げをせずに流動性供給を潤沢に行えるようになる。

 実際、市場では「これほど細かい議論をしていることからしても、やはり利下げに残余感はなく、無担保コール翌日物の引き下げは0.3%までとみる。この先はプラス金利付き量的緩和が行われることになるだろう」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏)との思惑が出ている。

 <今後の対応、流動性供給を基本に>

 白川総裁は、今後の政策運営について「金融機関の体力が低い場合には、十分な緩和効果が発揮できない上、金融機関もリスクテークしにくくなる」とし、その場合には「中央銀行として流動性供給することで不安要因を除去し、金融機関の行動を支援していく」との方針を示した。

 また、「世界経済の調整には時間がかかるが、調整自体を金融政策でなくすことは難しく、中央銀行として何ができるか検討したい」とも述べ、これ以上の政策金利の引き下げよりも、流動性供給や他の手段を駆使して対応してく姿勢を明確に示した。

 この日発表された展望リポートでも、政策運営方針の中で「中央銀行としてなしうる重要な貢献は流動性供給を通じた金融市場の安定維持」との文言を入れ、基本的には流動性供給で対応することを明記した。

 ただ、マーケットには「アジア向け輸出の減少が継続して、国内景気がさらに悪化した場合、政策金利を0.15%に下げ、その後はゼロ金利政策に戻る可能性もある」(第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏)、「政策金利を0.1%まで引き下げる可能性がある。それでも不十分な場合は、ゼロ金利政策に回帰する可能性もある」(クレディ・スイス証券、チーフエコノミストの白川浩道氏)という見方が出ている。

    

 今日の利下げ決定後も、金融市場では円の買い戻し圧力が続き、日経平均株価も材料出尽くし感から確定売りが出た。展望リポートで5つもの項目をたてて景気下振れリスク要因を並べた日銀にとって、ゼロ金利を回避しながらの政策運営がどのようになるのか。かつての政策スタンスとは違った展開があるかもしれない。

 (ロイター日本語ニュース 編集 田巻 一彦)

(izumi.nakagawa@thomsonreuters.com; 03‐6441‐1834; ロイターメッセージング:izumi.nakagawa.thomsonreuters.com@reuters.net)

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